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AI教師  作者: AKi
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磯部教頭と広瀬凛

教頭は胸元にかけていた電子カードキーをセンサーにかざすと、重厚なドアが静かに開く。二人は足を踏み入れ校長室の空間に迎えられる。


「どうだね、豪華な部屋だろう?」


天井にはきらめくシャンデリアが吊るされ、壁には高価な絵画が並んでいる。光沢のある机は頑丈で重厚な雰囲気を漂わせていた。整理整頓されたその上には、無駄な物ひとつ見当たらない。


「すごく素敵な部屋ですね」広瀬は静かな声で感嘆を漏らす。そして、部屋を見回した後、ふと気づいたように尋ねた。「ところで校長は来られていないのですか?勝手に入っても大丈夫なのでしょうか」


「心配するな。いずれは私がこの部屋の主になるかもしれんからな。ハハハ!」


広瀬は軽く眉を上げたが、教頭が「冗談だよ」とすぐに付け加えたことでそれ以上の反応は控えた。


「例の写真はどこに直しましょうか?」


広瀬がそう尋ねると、教頭は写真が入った紙袋を渡しながら指示を出す。


「ああ、それなら机の引き出し、上から二番目のところに戻してくれ」


広瀬は受け取った紙袋を丁寧に持ち、校長の机の前に移動する。そして教頭の言葉通り、上から二番目の引き出しに手を伸ばした。


「え?・・・これは・・・」


広瀬は引き出しを開けると、目の前に現れたものに思わず小さく息を呑んだ。


「どうかしたかい?開かないのかい?」


教頭が後ろから声を掛ける。


教頭は机から少し離れた場所で壁に飾られた絵画を眺めており、その声には特に急かすような調子はなかったが、広瀬は慌てて表情を整え手を動かす。


「いえ、何でもありません。写真を元に戻しました」


「よし。それじゃ出るよ。こっちへおいで」教頭は満足げに頷きながらドアの方へ向かった。「後は教室へ戻って授業を受けてきなさい」


「…はい。分かりました」


広瀬は少し間を置いて応じると、教頭の後について校長室を後にした。


職員室を出て、教室へ戻る廊下を歩いていると、前方に肩を落としてゆっくり歩く京本の後ろ姿が見えたが、広瀬は無言のまま彼を追い抜こうとすると、京本は低い声で呼び止めた。


「お前がやったんだろ。持田の体操服を俺の机の中に入れやがって」


その声には怒りが滲んでおり、広瀬を睨む目は鋭かった。


「…証拠でもあるの?」


広瀬は振り返ることなく静かに言い返す。


「あるわけないだろ。でもお前しか考えられないからな、どう考えても」


「言いがかりはやめてよね。みっともない。日頃の行いが悪いからこんな目に遭うのよ」


「うるせえよ」


京本は吐き捨てるように言ったが、その声には力がなく、どこか萎れていた。普段の荒々しさは影を潜めており、広瀬もそれを察したのか、さらに追い打ちをかける。


「普段からふざけてばかりいるから、肝心な時に味方してくれる人がいないんでしょ。今回は残念だったね」


広瀬はそれ以上言葉を発することなく、そのまま教室へと向かった。


京本はその場に立ち尽くした後、静かに踵を返しエントランスへ向かい、下駄箱で靴を履き替えると、彼は教室には戻らず一人で寮へ帰って行った。


「おかえりなさい、広瀬さん。ご苦労様でした。授業を受ける準備を整えてください」


AI教師の冷静な声が教室内に響く。


「はい。分かりました」


広瀬は簡潔に答えると、自分の席に戻り椅子に腰掛けた。教科書を開きながらパソコンの電源を入れると、画面には彼女が席を外している間に進められていた授業内容が簡潔にまとめられて表示された。


「おい、広瀬。京本はまだ職員室にいるのか?」


織田が小声で尋ねる。


「寮へ戻ったんじゃない?停学処分を受けたらしいから」


「停学…?マジかよ」


「織田悠馬君。授業中に私語は控えなさい」


すかさずAI教師が反応する。


「あ、はい。すみません」


織田は慌てて謝りそれ以上は何も言わなかった。


その日の授業は、いつにも増して静かでスムーズに進行していた。生徒達が問題行動を起こさないようにいつも以上に真面目に授業を受けていたからである。


しかし、その中で広瀬の心は波立っていた。どんなに冷静な顔を装っても内心のざわめきは収まらない。原因は先ほど校長室で見たあの一枚の写真だった。


引き出しを開けた瞬間、目に飛び込んできたのは京本の机に体操服を押し込む人物が映った写真。それを見たとき広瀬の胸に走ったのは驚きと疑念だった。


(…あれは、一体どういうこと?)


目の前の授業に集中しようと努めても、その残像が頭から離れない。京本への疑念が晴れた代わりに、別の重い疑問が心を覆い始める。


広瀬は感情を一切表に出さず淡々と授業を受け続けた。しかし、頭の中は困惑し、心の中は乱れていた。

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