京本、退学の可能性
京本が職員室の扉を開けると、体育教師の武田が腕を組み、仁王立ちで待ち構えていた。その視線の鋭さに、京本は自然と足がすくむ。
「おう、こっちへ来い。お前には大事な話がある」
「……はい」
力のない返事を絞り出すと、京本は武田のデスク前にある椅子に腰掛けた。武田は立ったままデスクの縁に腰を下ろし、京本を見下ろす形で話し始める。
「お前、夜学校に入って女子の下着を物色したんだってな?何か言いたいことはあるか?」
「俺は本当に何もしていません。信じてください」
懇願するような声だったが、武田の表情は微動だにしない。
「持田由美の体操服を……なぜこんなことをしたんだ?」
「俺じゃないんです。でも、確かに俺の机の中に入ってた……けど、俺のせいじゃないんです!」
武田は静かに首を振り、冷静に告げる。
「匂いを嗅いでいるところがバッチリ映ってたそうだな。これ以上の言い訳は見苦しいだけだぞ」
京本の中で、写真という確固たる証拠の存在が重くのしかかる。何を言っても信じてもらえないと悟った彼は、小さくうなだれるしかなかった。
「その写真は外部には流出させない。内密に処分する」
「俺はどうなるんですか?罰則とか……退学とか……」
「処分は校長が決める。それまでは停学だ。寮で大人しくしていろ。ただし、退学の可能性も覚悟しておけ」
その一言で京本は目に見えて肩を落とした。返事をすることもできない彼のもとに、広瀬凛が写真を抱えて職員室に入ってきた。
「失礼します。AI教師に頼まれて写真を届けに来ました」
その言葉に、隣のデスクで黙って様子を伺っていた教頭・磯部が立ち上がり、広瀬を呼び寄せる。
「おー君か。ご苦労様。こっちに渡してくれ」
広瀬が持参した写真の束を受け取ると、教頭は一枚ずつ丁寧に数え、慎重に紙袋へ収めた。その様子を興味深そうに見つめる広瀬は口を開く。
「この写真は捨てるのですか?」
「いやいや、私が勝手なことはできないよ。この写真は校長室へ持っていく。その後の処分は校長が決めることだ」
「そうですか、畏まりました」
「君の評判はAI教師からも聞いているよ。生徒たちの間でも、凄く信頼されているそうじゃないか」
「ありがとうございます。学園の秩序を守るために規律に従い、一生懸命学業に励んでいます」
「君の将来が楽しみだね。ところで、一度校長室を見学してみるかね?この写真を戻すついでだ」
教頭は微かに目を細め、感心したように頷いた。
「いいのですか?ぜひ見学させてください」
「よし。じゃあ、ついてきたまえ」
教頭は満足げに頷き、扉の方向を指し示した。




