夜の教室に侵入
時刻は夜の8時を過ぎていた。AI学校の校舎は夜9時に施錠され、それ以降は生徒の持つ電子カードキーでは入ることができなくなる。京本は急ぎ足で校舎へと向かう。幸運にもまだ施錠されておらず、無事に中に入ることができた。
廊下の明かりは点いているものの、外はすっかり暗く、窓から差し込む光がない校舎はどこか不気味に感じる。薄暗い中、京本は自分の教室を目指す。
教室のドアを開けると室内は真っ暗だった。彼は迷うことなく照明スイッチを押し、明かりを点ける。恐る恐るAI教師の液晶モニターへ視線を向けたが、幸いにもAI教師は起動しておらず、黒い画面のままだった。
「よし、大丈夫だな……」
小さく息を吐き、京本は自分の机へと向かう。引き出しを開けると、そこには体操着らしき衣服がむき出しで入っていた。
「あれ、これ誰のだ?」
彼は小さく呟きながら衣服を手に取り、触って確認する。汗で濡れている感触はない。少し首を傾げながら、無意識に衣服の匂いを嗅くと鼻先に甘い香水の香りが漂い、自分の体臭とは明らかに異なる匂いに気付く。
慌てて衣服を広げ、胸のあたりに書かれている名前を確認すると、そこには『持田』と書かれている。
「持田の体操服……どうして俺の机の中に入ってるんだ?」
持ち主は持田由美、クラスで数少ない女子生徒の一人だった。彼女の席は京本の席からかなり離れており、普段接点があるわけでもない。なぜ彼女の体操服が自分の机の引き出しに入っているのか、京本には全く見当がつかない。
しばらく体操服を手に持ったまま考え込んだ末、彼は決断する。そっと持田の机の前へ行き、丁寧にそれを畳んで引き出しの中へ戻した。
その後、自分の体操服を探すと、それは机の側面に引っ掛けられている袋の中に収められていた。中身を確認し、間違いないことを確認してから急いでそれを手に取る。そして教室の照明スイッチをオフにし、明かりが消えたことを確認すると足早に教室を後にした。
校舎から寮までの道のりは真っ暗だったが、夜風に吹かれながら歩き、誰ともすれ違うことはなく無事に寮へと戻ることができた。




