偵察その1 ポイズン
会議の次の日、ラング・ナーズの偵察部隊に任命されたガイアとカウルは村長に呼び出された。
「偵察において重要なのは、相手の弱点をつかむことじゃ。だから、これらを持っていきなさい。」
村長は木で作られた弓と火打石、そして黒曜石で作られた短剣を差し出した。
「アタシは短剣はいらないよ。もう持っているからね」
「いいや、実はな、この短剣にはトリカブトの毒を塗っている。毒がどれくらい効くか調べたいからの」
ニヒヒ、と村長は笑みを浮かべる。
「ひぇー、刃には触らないようにしなきゃってヤツだぜ」
ガイアは村長の思い通りの恐怖顔を浮かべる。
「なるほどねー、毒か。確かにあのマンモスに効くかもしれないねぇ。でも、もし効かなかったらどうするんだい」
「まさか、効かないなんてことはないじゃろ。トリカブトの毒は強力じゃ。」
村長はニヒッと笑う。次にカウルは、火打石を指さす。
「この火打石は何に使うんだい?」
「矢に火をつけて、ラングを炙るんじゃ。火がどれだけ効くか調べたいからの」
村長は前と同じような言葉を繰り返す。
「でも、それじゃ周りの木も燃えてしまわないかい?」
「そりゃ、やむを得ないってヤツだぜ」
ガイアが急に割り込む。
「そう......じゃな」
村長がボソッと言う。
「それじゃ、これ持って偵察行ってくるってヤツだぜ!」
「おっと!忘れとったわ。これを持っていきなさい」
村長は袋に入った食糧を2人に渡した。
「いや、結構大事なモン忘れてんな!ボケたか!?」
カウルはツッコミが幾分も増してキレッキレである。
「うむ、ここは村長の寛容さで許してやろう。それでは行ってらっしゃい、踏み潰されないようにな」
カウルに意味深な笑顔を向けながら見送る。
「行ってくるってヤツだぜ!」
「行ってくるわ!」
そう言って2人は巨獣が住む山の方へ向かっていった。
ガイアとカウルで走り方が違うせいか、どんどん距離が開いていく。もちろん、カウルの方が速い。
「アンタ!遅せぇんだよ!もっと速く走りなさい!」
「ちょっと!アンタが速すぎるんだぜ!もっとゆっくり走れってヤツだぜ!ハア、ハア......」
ガイアは息切れしながら必死にカウルを追いかける。
走っている内に、2人は目的の山へ着いた。カウルとガイアで状態に差がありすぎる。
「アンタ、こんなんで息切れしてんのかい?情けないねぇ」
「───────ハア、ハア、ハア、ハア......」
ガイアはあまりの息切れで何も言うことが出来なかった。
「仕方ないから、ちょっとここらで休憩してやるとするか。」
「ハア......ああ......」
ガイアから息切れと共に安堵の声が漏れる。
2人はその場に座り、食料の入った袋を開ける。
「エホッ!エホッ!」
ガイアは息切れ故に何回か咳をした後、袋の中を漁り始めた。その中には、何粒ものブルーベリー、大きな鹿の肉が入っていた。
ガイアは水分をとって咳を収めるために、ブルーベリーを食べた。......何回か深呼吸したあと、咳は収まった。
「大丈夫かい?」
「ああ、大丈夫ってヤツだぜ」
その後、2人は黙って食事をしていた。カウルがゆっくり口を開く。
「予備の食いモンは......残して...おけよ...」
「分かってるってヤツだぜ...」
なぜか空気は気まずかった。そのような空気を振り払うように
「それじゃあ、出発ってヤツだぜ!」
とガイアは明るく振る舞う。
カウルは軽く伸びをした。
「山道は危険だからな。ゆっくり歩いてやるよ」
ハハ、とガイアは苦笑いする。
歩いてしばらくすると、山の鞍部に出た。そこには数体のマンモスがいた。
「そういえば、あのマンモスって小さくもなれるんだよな?もしかしたらこの中に『ラング・ナーズ』がいるかもな。」
「な!怖いこと言うなってヤツだぜ!」
「ほら、アイツとかちょっとデカいだろ?」
カウルがそう言った瞬間、少し大きめのマンモスの牙が急に大きくなったように見えた。
「なあ、アイツ、牙がデカくならなかったか?」
「ああ、オレもそう見えたってヤツだぜ 」
2人で「まさか......」とハモる。
その瞬間、『ラング・ナーズ』は咆哮を上げた。どうやら人類たちは、巨獣にとっては捕食対象のようだった。
ラングは通常のマンモスの2倍くらいの大きさになった。あの時と比べたらだいぶ小さいものの、やはり圧倒される。
ラングは足で地ならしをする。地面が揺れ、立ってもいられなくなる。
「そうだ!毒ってヤツを!」
ガイアは咄嗟に短剣を投げる。ラングの前足に見事に突き刺さる。ラングは痛そうに、再び咆哮を上げる。
「ナイスだ!ガイア!毒が効くまで逃げて時間を稼ぐよ!」
カウルは一本の木に瞬時に登り、他の木々を伝ってラングから離れていく。
ガイアはただ山道を走る。何回か石に躓いて転びそうになりながらも、ラングとの距離は少しずつ開いていく。
そうして少し経つと、ラングの様子が変わった。何かに苦しんでいる。毒が回ったのだ。耳をパタパタさせながら悶え、体がどんどん小さくなっていく。
「やったか!?」
カウルが叫ぶ。
「それはフラグってヤツだぜ!」
ガイアの予想は的中。短剣でできた傷は徐々に塞がり、また体が大きくなり始める。どうやら、まだまだ戦いは続きそうなのであった。
果たして原始人はフラグなんて言葉を知っているのでしょうか?私には分かりません。




