ゴルドの誇り その1
朝が訪れた。軽いような重いような朝が。ダルグは枕元に置いてあった棍棒を手にとる。
以前、『棍棒から手を離せない。離そうとしたら手元に戻ってくる』と言ったが、『捨てよう』という意思さえなければ別に置くことはできるらしい。融通が利くようで少し安心したが、自分の心を読まれているような感じで少し不気味だ。
ダルグは伸びをし、外へと歩き出す。
───────空はとてもよく晴れている。真夏の太陽がが地面を鋭く突き刺し、陽炎が揺らめく。それと連動するように、ダルグの不安も揺らめく。
この棍棒は強い。その代わり、力の制御が難しい。マトモに歩ける所まで入ったが、相手をなるべく傷つけないように戦えるかは分からない。つまり、今日はぶっつけ本番だ。ダルグはゆっくり深呼吸をする。
そこにガイアが来る。
「おはよう!村長とゴルドが待ってるってヤツだぜ!」
ダルグは、昨日とは違う愉快な声に少し安心した。
その雰囲気に乗せられるように
「よっしゃ!じゃあ、訓練場に行くか!」
と答える。そして2人は訓練場へと向かっていった。
訓練場に着いた。そこでは村長とゴルド、の他にも野次馬が数十人いた。ダルグは緊張からか、地面の砂が、夏日であるにも関わらず冷たく感じる。
ゴルドは余裕な表情で
「ダルグ、ようやく来たか。」
と、愛用の槍と共に迎える。
「ダルグー!遅ェぞ!」
「ゴルド様にボコボコにされちまえ!」
という野次馬の声も聞こえる。
「ゴルド、少しは手加減するんじゃぞい。」
と、村長バヌトゥが警告する。
「それじゃ、位置につくんじゃ!」
その言葉で、ダルグとゴルドの目つきは鋭くなる。
「───────よーい、始めェ!」
先に動いたのはゴルド。槍を持ってダルグに向かって突進する。ダルグはそれをひらりと躱す。ゴルドの一瞬の隙を、ダルグが棍棒で反撃。ゴルドは直撃は避けるが、棍棒を振った時にでた衝撃波で体が吹き飛ばされる。野次馬たちは驚いて目を見開く。
「なッッッッ!」
ゴルドにとって初めての体験だった。武器を振った時の衝撃波で飛ばされる。しかも、素人に。
ダルグ、お前、実はスゲェヤツだったのか?それならアイツがリーダーに......いいや、そういう訳には......アイツがリーダーになるのならなぜ私は......ッ!
一方ダルグは『ヤベッ!』と思っていた。やはり力の制御がまだ上手くいかない。ゴルドに手加減しなければ、オレはゴルドの顔を汚してしまう。だから、せめてギリギリの戦いに。
ゴルドはさすが狩りのプロだ。しっかり受け身をとって体制を立て直した。そして、次は遠くから様子を見始めた。野次馬たちも緊迫感が高まる。
ダルグは少しづつ、少しづつ近付いていった。そして棍棒を大きく振りかぶり、ゆっくりと振り下ろす。
ゴルドはそのゆっくりさに少し困惑しながらも、攻撃を避けた。待てよ、私はもしかして手加減されているのか?そんなはずはッ!手加減されるのはダルグの方では!?
ゴルドはダルグの攻撃を注意深く観察する。やはり、動きが明らかに遅い。そんなのではそこら辺の鹿すら狩ることは出来ない。
次はゴルドが攻撃する。槍でダルグの体を優しく吹き飛ばしてやる。
「うおーーーっ!イッテーーー!」
とダルグは大袈裟な反応をする。全く外傷はない。
なんだ、これは。なんという気分なのだ。やはり手加減されている。いや、演技下手すぎるだろ。野次馬たちはポカーンとしている。
ゴルドは心の中でツッコミを入れつつも、今の自分の状況を受け入れられていなかった。分かった。そんなに私を侮辱したいのなら、私は本気でやってやろうじゃないか。
「はあーーーー!」
と雄叫びを上げながらダルグに突進する。やはり躱され、ダルグからの強烈な一撃をもらう。ゴルドの体がまた吹き飛ばされる。分かった。ダルグには力では敵わない。ちょっと頭を使う必要があるようだな。
ゴルドは深呼吸しながら、頭を働かさせる。そうだ。あの棍棒を奪ってしまえばいい。あの棍棒を、この槍で弾き飛ばす。さすがにダルグとはいえ、素手で戦うのはキツイだろう。
そうしてまた、ゴルドは突進する。槍を体に突き刺す、と見せかけて武器を弾く。この頭を使ったフェイントが見事に刺さり、ダルグの棍棒は弾き飛ばされ、宙を舞った。そして地面に落ちる。野次馬たちはおおっと声をあげる。
よっしゃ!あとはダルグに畳み掛ければ......
───────その時だった。ゴルド、村長、そして野次馬たちは奇妙な光景を目にした。ダルグの手元に棍棒が戻っていくのだ。───────
ゴルドの中に「負け」という字が浮かんだ。私は......ダルグに勝てないのか......?絶望の日差しが、ダルグを神々しく照りつける。
たまにこのキャラにはどんな声優が良いのかな?とか考えたりします。ゴルドは小山力也さんが良いかなーと思っています。まあ、この小説がアニメ化されるなんて、遠い夢ですが......
現実は厳しいね by 蒼




