巨獣の誕生
「……アレはッ………………!!」
そう、山の方角に見えたものは、見慣れたマンモスのはずだった。いつも狩っているあの……
だが、明らかにおかしい。はっきり言ってデカすぎる。木をも凌駕するあの長い鼻。鋭さがここからでもはっきりと分かる牙。何よりも山のように錯覚させられる巨体。マンモスはずっと遠くにいるはずなのに、まるで目の前に居るみたいだ。
ダルグは悟った。俺はアイツを倒さなければならない。この棍棒はアイツを倒すためにあるんだ。あの凄い力さえあれば……………………突然、巨大マンモスがだんだん小さくなっていき、やがて見えなくなった。
「一体、あれは何だったんだぜ…………?」
ガイアが問いかける。ダルグは黙ったままだった。ダルグにも分からない。だが、今から恐ろしいことが起こり始めているのは分かった。
夜になると、村全体で会議が行われた。もちろん、あのマンモスについて。
「見たじゃろ?あれを」
ガル村の村長、バヌトゥが口を開いた。バヌトゥは知略戦に長けた、まさに村長に相応しい人だ。今年で162歳を迎える。
「あの巨大マンモス、はっきり言って異常じゃ。他のマンモスと同じにしちゃいかん。あのマンモスに名をつけるとしたら......『木の如く巨大な鼻』じゃな。」
ラング・ナーズ。なぜ村長が鼻に注目したのかは分からない。だが、そんなことはどうでもいい。俺はラング・ナーズを倒さなければならない。この謎の棍棒で。改めて感じる。胸の中に、使命感を。
ラング・ナーズはこの棍棒でしか倒せない。あのマンモスには狩係リーダーのゴルドでも無理だ。感覚的に分かる。
バヌトゥが話を続ける。
「もちろん、アレはどうにかせねばならん。分かるじゃろう。あの恐ろしさを体感しとるなら。さあ!作戦を立てるぞ!」
バヌトゥは手を叩いた。
「今回の作戦のリーダーは狩係リーダーのゴルドを任命する。良いな?」
村人たちは一斉に拍手をした。
「もちろん、このゴルド。任されました。」
そう言ってゴルドは跪く。
ゴルドは地位が地位なのでかなりプライドが高い。ここで『お前には無理だ』なんて言ったらどうなるか分かっている。それでも───────
───────それじゃダメだ。俺がやらなければならない。悪いがゴルドには無理だ。狩人全員行っても。
「────俺に、リーダーをやらせてください」
弱々しい声で言った。
やはり村人たちの反応は
「はあ!?黙れ!引っ込んでろ!」
「何言ってんだ、ダルグ」
「お前に務まる訳ないだろ」
という冷たい反応ばかり。
そこでゴルドは村人たちに
「黙らっしゃい!」
と喝を入れる。一瞬の静寂の後、
「ダルグ、面白い。お前のその勇気、しかと受けとった。では明日、私と対戦をしろ。お前がリーダーの素質を持っているのか、確かめさせてもらう」
と言って、ゴルドはフン、と鼻息を出す。
これには村長も
「なんと!お前正気か!?ダルグはまだ未熟じゃぞ!?」
と、驚かずにはいられなかった。
「───────やる」
ダルグは静かに答えた。
「明日、やってやろうじゃないか」
村長は再び驚く。
「お前も正気か!?ふむ、2人してそういうのなら仕方がない。では明日、訓練場にて決闘を行う!」
「おー!」
「ゴルド、やったれー!」
村人から歓声が響く。
ともかく、俺はこの村を救うための、始めの1歩を歩み始めた。
ダルグは焚き火で、今日採ったマンモスの肉を焼いていた。そこにガイアが向かってくる。
「本当にあんなこと言っちゃって良かったっヤツか?相手はあのゴルドってヤツだぜ?」
ダルグは揺らめく火をぼんやり見つめながら答える。
「良いんだ、俺は村を救いたいんだ、俺の手で。そのためにならなんだってやる」
本当はそうではない。ゴルドには無理だと思ったからだ。オレ、こんなんで良いのかな?こんなんじゃラング・ナーズを倒したからといってまた仲良くなれるとは限らない。
ダルグは、大好きなマンモスの黄色い部分が焦げたことに気がついていない。
「───────肉、焦げてるってヤツだぜ」
ガイアも炎を見ながら、静かに言う。
「なあ、オレ、ゴルドに嫌われたかな?」
ダルグの声が少し上擦る。恐らく、俺は棍棒を使うことで余裕の勝利だ。だが、それはゴルドのプライドを傷つけることになる。
「んな訳ないってヤツだぜ」
ガイアは低い声で答える。
ヤダ、泣きそう。嘘だとしても、『自分の手で村を救いたい』とか大口叩いたのに。
「───────そっか......そうだよな、ゴルドにとっちゃオレたちは愛する部下だもんな。」
辛うじて出た言葉。ヤバい、もっと泣きそう。
ダルグは必死に涙をこらえる。こらえて、こらえて、こらえて。そうして少し涙は引いてきた。ダルグはため息をつく。
「なんかあったら相談しろってヤツだぜ」
トドメを刺された。もう涙はおさまらない。
ガイアはそれ以上何も言わない。ダルグに、友にこんな情けない気分を味あわせてしまった。何を言えばいいのかが分からないのだ。
ガイアは静かにそこを立ち去る。ダルグは焦げた肉をじっと見つめている。焦げた肉を食べてやるべきか捨ててやるべきか、ダルグには分からなかった。
───────ダルグは家に帰り、寝床で、ダルグは再び涙した。それはすぐにおさまり、眠りにつこうとする。
.........眠れない。また焚き火での出来事を思い出し、涙する。そしてまたおさまる。これを繰り返しているうちに、ダルグは眠りにつくのだった。───────
受験終わったのでまた連載を再開します!ちなみに第1志望には無事合格しました。今はとにかく花粉症に悩んでいます。助けてください。




