7話
「それでは、私の部屋に行きましょうか」
廊下をきょろきょろしつつ、姫輝についていく。庶民の一戸建てよりも廊下が長くて、幅が広いことに驚く。
途中では、家族の誰かの趣味なのか、絵画が飾ってある。お嬢様生活の興味本位で聞いてみる。
「ねえ、この絵画とかって、やっぱり値段が高かったりするの?」
そのあたしの言葉に、姫輝がきょとんとした表情を見せる。あたし、なんかおかしなことを言ったか?
そう思った次の瞬間、おかしなことを言ったのはあたしではなく、姫輝の方であった。
「いえ、高くなんてないですよ? だって、それは私が描いたものですから」
その言葉を聞いたあたしの頭の中では、「あ、また難易度上がったわ」という言葉がよぎった。
あたしの家のように、家族がいるというアクシデントがないかと心配したが、どうやら姫輝の家族は出払っているようだ。ほっと胸をなでおろした。
姫輝の部屋に入れて貰うと、真っ先に天蓋付きの白いお姫様ベッドが目についた。
(お嬢様だな……まあ、あたしも今日からお嬢様生活できるし、まあいっか)
お気楽なあたしに反して、姫輝はなんとなく恥ずかしそうにそわそわしている。
「なんか落ち着きないけどどうしたの? 自分の部屋だし、家族の人いなかったじゃん?」
疑問に思い聞いてみた。
「い、いえ、なんでもありませんわ」
なんか嫌なフラグが立ちそうな気がした。気のせいであってくれ……。
姫輝は誤魔化すかのように、室内の物の置き場を説明する。それはまあ丁寧に。流石カリスマ高いだけのことはある。下着までご丁寧に説明してくれる。
ぱっと見で、あたしよりもカップ数が上というのが気に入らないが……。
(所詮、胸なんて脂肪の塊だよ!)
そう思わなければやっていられなかった。
一通り説明をされて、姫輝はあたしを部屋に置いて、キッチンへ飲み物を取りに行こうとした。
「あたしも行くよ」
一人で行こうとする姫輝に声をかけた。
家の広さが倍以上あるので、他の部屋も確認しないと怖すぎる。
姫輝にキッチンに行く途中も説明されつつ、キッチンに辿り着いた。
そこは我が家と違い、広々としたLDKであった。
「すごっ!」
あたしは驚きの声をあげる。
今までの友達の家に行ったときでも、ここまで大きな家はなかった。
大抵はどんぐりの背比べである。
あたしはきょろきょろと辺りを見回す。
観葉植物や花が飾ってある。造花かと思い、手で触れてみると、生花であった。
(ほぼ使い捨ての花にお金をかけるってすごいな……)
感心していると、姫輝に声をかけられた。
「準備ができましたわよ」
そう言うと、姫輝はトレイにティーポットとティーカップ、それとコップに入った牛乳を持ってきた。
姫輝はミルクティーのようなものが好きなのか。この辺も気を付けよう。
ミルクティーを淹れて貰い、あたしの前にカップが出される。
「ども……」
あたしはお礼を言って、ミルクティーを口にした。
高貴な香りが漂う。茶葉がいいのだろうか? その辺の安物の紅茶とは、全然物が違うと、あたしでもわかる。
(なんか食生活も不安な点が多いな……)
そう感じつつ、あたしはもう一度ミルクティーを味わった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
姫輝の描いた絵が、高級に見えるとか、やりすぎたか?
いや、やりすぎた方が、面白いはずだ!
そんなことを悶々と感じている作者です。
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