4話
あたしと姫輝は、お母さんが見ていない隙に、あたしを先頭に、二階にあるあたしの部屋へと向かう。
中に入り鞄を下ろして、ほっと一息つく。
「姫輝! お邪魔しますじゃなくて、ただいまでしょ!」
「梨琴さんだって、お邪魔しますじゃなくて、ただいまって言っていたじゃありませんか!」
揉めているところに、ガチャリと部屋のドアが開く。二人で借りてきた猫のように、静々とカーペットの上に座る。
「梨琴、このお友達は今までうちに来たことない子だけど、紹介してよ」
フレンドリーなお母さんが、オレンジジュースとクッキーを置いて、おぼんを胸に抱きつつ、期待の眼差しで見つめる。あたしではなく姫輝をだが……。
その視線に気づいた姫輝は、おたおたとしながら、あたしを紹介する。なんだこのカオスは……。
「こ、こちらの方は、雉子島姫輝さんですわ。お母様」
「お母様? あんた今日、なんかおかしいわよ? 頭でも打ったの?」
そうなんだよ、お母さん! 比喩とかではなく、物理的に打ったんだよ!
そう心の中で思いつつも、口には出さない。
その状況を説明しても信じて貰えない可能性がある。信じて貰えても病院に連れて行かれる。あたしは思わずおでこを押さえる。
(また頭突きするのは、まっぴらごめんだ!)
同じ心境なのか、姫輝もおでこを押さえていた。
「それじゃあ、姫輝ちゃん、ゆっくりして行ってね」
そう言うと、お母さんは部屋から出ていった。
「「ふぅ~」」
二人で詰まった息を吐く。
あたしはローテーブルに顔をうつ伏せて、嘆く。
「まだ初日でこれか~! 今後、乗り切れるのか?」
そんなあたしをよそに、ストローでオレンジジュースを啜る音が聞こえてくる。
「ま、まあまあ、梨琴さんのお母様の感じだと、大丈夫そうですわよ」
「うちのお母さんは、のほほんとしているからね! 姫輝の家の方が心配で、胃がキリキリしてくるよ!」
あたしは顔を上げると、クッキーを摘み、ぽりぽりとかじった。そして、姫輝にダメ出しをしておく。
「『お母様』じゃなくて、『お母さん』ね。お父さんも『お父さん』で頼むよ?」
「は、はい! 善処しますわ!」
そして、聞くまでもなく、姫輝の家の方は気づいた。『お父様』と『お母様』、そして『お兄様』だな。
私はこの時点で、自分の思考の浅はかさに気づかなかった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
本当に入れ替わり初日でこの調子、大丈夫なんでしょうか?
ちなみに作者はこの物語を、行き当たりばったりで書いているので、今後、二人がどのようなハプニングに巻き込まれるのか、作者自身も分かりません(笑)。
今後もこの作品を楽しみにしている読者様。
応援や感想を書いて下さると、作者のモチベーションがアップします。