18話
しばらく勉強に打ち込んでいると、悠橙先輩が声をかけてきた。
「そろそろ休憩がてら、夕食の食材でも買いに行こうか」
にっこりと笑顔をあたしに向ける。爽やかイケメンすぎる!
「うん!」
あたしは急いで勉強道具を片付けた。
悠橙先輩はきちっとしていそうだからである。この前の玄関で靴を揃えていた件といい、綺麗好きなところがあるのかもしれない。
あたしも嫌われないように、部屋を綺麗にしておかなくては……。
そこまで考えて、ふと気づく。
(あれ? あたしは今は姫輝だから、むしろ嫌われた方が、この二人のブラコン、シスコンを治せるのでは?)
そう思ったのだが、悠橙先輩にがっかりされたりするのも嫌だし、姫輝が今まで努力してきた評価を意図的に下げるのも人としてどうかと思う。
(やれやれ、この兄妹は手がかかるね……)
肩をすくめてから、買い物に出かける準備をした。
スーパーへと歩いていく途中で、夕食を何にするかと話し合う。
「ゆう……に~に、夕ご飯何にする?」
に~に呼びプレイがめっちゃ恥ずかしいんだが。これ、学校以外ではそうなのか?
「そうだな……スパゲティーミートソースでも作るか?」
「うん!」
スルーした時点で、人前以外では、に~に呼びがデフォらしい。なにやってんだ! 姫輝!
姫輝への尊敬やら憧れが、ガラガラと音を立てて崩れていくような気がした。
二人でスーパーの中に入り、カートにカゴを載せて食材を見て回る。
それは野菜コーナーで起きた。
(ミートソースといえば、セロリだよね)
私が手に取り、カゴに入れると、に~にこと、悠橙先輩がショックを受けて固まった。
(あれ? 私、何かやらかした?)
不安になりつつ、ぶりっ子気味に聞いてみる。
「に、に~に、どうしたの?」
「姫輝……セロリを食べれるようになったのか?」
しまった! 食生活の問題もあったか! 私は表情は焦らず、内心だけ猛烈に慌てて、返事を返す。
「と、友達がセロリを入れると美味しいよって、進めてきたから気になっちゃって……」
上手く誤魔化せたか? 悠橙先輩の顔を確認すると、納得したような表情になった。
「そうか。姫輝もセロリの入ったミートソースに興味を持ってくれたか。セロリってそのまま食べると美味くないんだが、ミートソースに入れると、なぜか味を引き立ててくれる」
やや興奮気味に解説をする悠橙先輩。なんか違う一面を見たようで可愛らしい。
その後も買い物の続きを再開して、会計を済ませてスーパーを出た。
私が持とうとしたレジ袋を、悠橙先輩が持ってくれた。に~に、マジ優しい!
(いかん……心の声まで、に~に呼びになってきた)
ともあれ、この新婚さんのような状況に気を良くした私は、足取り軽やかに帰路についた。
いつも読んで頂きありがとうございます。
う~ん?
この作品は練習として書いていますが、物語に波が無く、淡々とした日常になってしまっている気がしますね。
まだまだ未熟な藤谷葵です。
これはこれで、少しずつですが執筆は続けていこうと考えています。
色々と問題点が見つかりそうですから。
何名かの人が読んで下さっているので、「はい、打ち切り!」というのも後味が悪い。
せっかく楽しんで?下さっているので、完結まで書けたらいいなと思います。
感想だけでなく、ご意見も受け付けております。