11話
翌朝。
シャッとカーテンが開かれる音がした。それと同時に朝陽が室内を明るくした。
人の気配と眩しさで目を覚ます。室内には、悠橙先輩がいた。
「おはよう、姫輝」
爽やかな笑顔で微笑まれるが、あたしはベッドの上で上体を起こし、ぽかんとしている。
止まっていた思考が動き出すと、羞恥心で掛布団を胸元まで引き上げた。
夜、寝るとき、寝間着を探したのだが、ネグリジェしか見つからなかった。そんな恥ずかしい姿を、悠橙先輩に見られるなんて……。刺激的な朝を迎えた。
悠橙先輩が部屋から出て行ったあと、あたしは念のために、部屋に鍵をかける。ドアノブを引っ張ってみて、開かないことを確認してから、制服に着替えた。
階段を下りて、キッチンへと向かう。
そこでは既に、悠橙先輩が朝食を作ってくれていたようだ。
一人でやらせていたことに申し訳なさを感じつつ、せめてもはとテーブルに食事を運ぶ。
そこで、新たな試練に気づく。
朝食が四人分ある。つまり、悠橙先輩だけでなく、ご両親と四人で食べるということである。
昨夜は、あたしが寝る時間になっても、ご両親は帰ってきてはいなかった。寝た後に帰ってきたのであろう。会社経営って大変なんだな。そこまで考えて気づく。
(あたしの今の事態の方が大変だよ!)
そんなことを考えつつ、朝食の準備をしていると、ご両親二人が仕事に行く服装で、ダイニングの席につく。
そこで、また問題点に気づく。
『お兄様』と思っていた呼び方が『に~に』。では、『お父様』『お母様』と思っていた呼び方は?
あたしはピンチに立たされていた。そんなあたしの心境を知らずに、ご両親は朝の挨拶をしてきた。
「悠橙、姫輝。おはよう」
「おはよう」
「おはようございます」
この時点で、「しまった!」と思った。
悠橙先輩は「おはよう」と気軽に言ったのに、あたしは他人行儀で「おはようございます」と言ってしまった。
ご両親の反応にびくびくしていると、やはり不正解だったようだ。
「姫輝……なんで他人行儀なんだ?」
「そうよ。どうしたの?」
問い詰められた所に、悠橙先輩のフォローが入る。
「なんか姫輝は、最近具合が悪いらしいよ? 昨日もなんかおかしかったし、病院に連れて行った方がいいのかな?」
「……そうだな……」
「姫輝……もしかして、学校でいじめられているとかない? もし、何かあったらちゃんと言いなさいよ。私たち家族は姫輝の味方なんだから」
そんな暖かい言葉を聞き、目がウルッとする。だが、病院は断る!
「だ、大丈夫。ちょっと気圧の変化で具合悪いだけかな」
もうね、この家はフランクに話すのが標準と判断した。
後で、姫輝を尋問すれば、家族との話し方は解決するであろう。
あたしは朝食を食べ終わると、「ご馳走様」と言いつつ食器をキッチンに運び、逃げるように学校へと向かった。
いつも読んで頂きありがとうございます。
この後書きを書きながら、「もうちょっと朝食の描写があった方が良かったかな?」と今更ながらに思った作者。
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