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不本意ですが、サイコ野郎(公爵)の嫁になります〜いっそのこと飼い慣らしてみようかと〜  作者: パル@悪役令嬢彼に別れを告げる【アンソロ発売中】
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プロローグ

久しぶりの投稿、久しぶりのラブコメご都合主義作品の長編にチャレンジさせていただきます。

この作品を選んでいただきありがとうございます。本日は3話投稿を予定しています。


⚠お知らせしたいこと⚠

この作品は、殺傷行為の描写があります。その為、R15(15歳以上推奨)とさせていただきました。

苦手な方は自衛をお願いします。



 ――『成り上がり令嬢の奮闘』?



 私がこの小説に出会ったのは、学校から家へ帰る途中で書店に立ち寄ったときだった。


 店内に入ると、設置された簡易ブースから女性の店員さんが笑顔で声をかけてきたのだ。


 私は捕まったら面倒だと思い、目を背けてその場をスルーしようとした。

 しかし、店員さんはお構い無しに私の前に立ちはだかり、本をサッと差し出してきた。


「人気の異世界恋愛系ライトノベル小説をご紹介しております!」

「……あっ、結構で――」

「こちらの小説はですね、主人公の女の子が――」


 その店員さんは私の断りの返事を遮り、表紙の女の子を指差しながら勝手にペラペラとあらすじを語り出す。

 店員さんの圧に狼狽え、その場から移動しづらい雰囲気になる。

 そして、店員さんが手に持つ本が最後の一冊なのだとか。

 なんとなく断る言葉が見つからなくて、流されるまま購入することになってしまったのだ。



 読み始めは、どこにでもある異世界恋愛の小説だった。店員さんは普通の小説とちょっと違うと言っていたのに。

 しかし、話が先に進むに連れて私は首を傾げた。


(なんじゃこれ?)


 主人公は、題名の通りで『成り上がり令嬢』なのだろうが……異世界恋愛? と聞き直したくなるような内容で。分かりやすく言えば、色々なジャンルが混ざったような小説の内容だった。


 ……ふーん。この中の登場人物になれるとしたら、主人公には絶対になりたくないわ。成り上がっていく方法が良くない。

 だからといって、この人にもなりたくない。第二王子に捨てられ無理矢理サイコパス野郎に嫁がされたと思ったら、2年後に殺されるなんて――。不幸の連続で気の毒な人生だし。


 そんな風に思いながら読んでいたのだが。続きを読んでいくと、段々腹が立ってきた。


 えっ? あの人が殺された真相って……。

 不幸の連続で気の毒な人生を送った令嬢は、成り上がり令嬢が更に成り上がるために殺されたのだ。

 そして、王子に捨てられたのもサイコパス野郎に嫁ぐことになったのも、成り上がり令嬢の策略によるものだった。


 そんな成り上がり令嬢が、見事に成り上がり……皇后になり幸せにって?


(……いやいやいや。それはないでしょう?)


 これが成り上がり? これが奮闘? ふざけんな! 皇后になるまでに何人殺してきたのよ。


 最後まで読みたくなくなった。


 中盤を振り返ると、どうしても不幸続きの令嬢が頭の中にチラつくのだ。


 いくら小説の話だとしても、恋愛小説の話なのにこんな殺されかたはない。

 ……書かれていたその話の内容だけの描写を読めば、誰もがホラー小説だと口を揃えるはずだ。そう、言いたいくらい……彼女は惨い死を迎えた。


(何だか胸くそ悪いわ)


 私が作者だったなら――。


 死ぬ運命を免れることが出来ないストーリーにするしかないのなら――。

 婚約破棄され殺されるまでの間くらいは幸せな内容にしてあげたのに――。


 不憫でならないと思いながら小説の最終章を前にして、私はパタリと閉じた本を棚に仕舞った。




 ――数日後。

 参考書を選びに書店に向かう。

 書店の手前にある交差点で信号待ちをしていると、あの小説を買ったときの事が思い出された。


 ……あの店員さんがいたら苦情を言ってやろう。

 普通の異世界恋愛とはちょっと違うと言っていたが、胸くそ悪くて最後まで読むことが出来なかったと――。


 交差点の向かいにある書店を見ながらそんな事を考えていると『キィー!』という車のブレーキ音に振り返る。



 そして……私の意識は途絶えた――。






 次に目を開いた先に見えたのは、大きな翼を広げ美しい姿をした二人の天使だった。


(……天使……ここは、天国?)


 良く見れば、絵が描かれた天井だ。


(……う、動けない)


 体を動かそうとしても、動かせるのは手足だけ。頭を動かしたくても動かせるのは目だけで。

 ここが何処なのか確認出来ずにいると、視線を遮るように美しい女性の顔が現れた。


(うわっ! だ、だれ? 金髪に緑色の瞳だなんて……どこの国の人なのかしら?)


「まぁ。目を開いたわ! 私の可愛い赤ちゃん」


(……私の……あ、赤ちゃん?)


「はじめまして。貴女の名前は―――よ」


(……はいぃ? 今なんて言われました?)


「ウィステリア。ママよ」


(……私の名前は『まひろ』なんだけど?)


 ママよって言われても、私の母親は平凡な日本人ですが……。誰かと勘違いしているようね。


 しかし、どうしてだろう。

 そう告げたくても言葉が……声にならない。

 話したくても……声が……出せないー。


 ふわりと抱き上げられると、そこで自分の体が小さいことに気づいた。


「あらあら、ウィステリアはご機嫌が良くないのかしら?」


(……さっきから、何度も私をウィステリアって呼んでいるけど……もしかして?)

 



 瞬時に思い出されたのは、あの小説『成り上がり令嬢の奮闘』の中の不幸続きの令嬢の名前だ。


 ……もしかして

 小説の中に転生したってこと?

 多分、そうだわ。

 転生したんだ――。

 それなら、私は死んだってこと?

 あー思い出せない。

 だからといって、どうしてウィステリアなの?


 成り上がり令嬢の為に殺されるだけの不幸続きの令嬢じゃーん!




 ムギュッと口の中に哺乳瓶の先を入れられると、だんだんお腹が満たされ眠気が襲ってくる。


 まだ考えたい事や確認したい事があるのに。


 ……駄目だ。……もう抗えないわ。


 そして、私の瞼が閉じられた――。




 次に、私の『まひろ』としての記憶が呼び戻されたのは、それから3年後。

 3歳の誕生日に邸の庭園にある池に落ちたときだった――。





お読み下さりありがとうございます。

プロローグ本文出だしの――『成り上がり令嬢の奮闘』というお話を書いていたら、胸くそ悪い小説の流れになりまして……途中で没にしたのですが……。その没作品(内容を変えて)に転生した令嬢を書いてみようかと……ちょこちょこ書いております。


★感謝申し上げます★

【悪役令嬢だったらしいので、彼に別れを告げることにしました】この作品がコミカライズされました。ブシロードワークス様より2025年4月8日発売された『麗しき令嬢には秘密がある〜魔性の女と言わないで〜アンソロジーコミック』に収録されました。皆様に読んでいただけたおかげです。ありがとうございます。


よろしくお願いします。(◍•ᴗ•◍人)✩*

誤字脱字がございましたらごめんなさい。

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