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もう一度やり直したいんです〜すれ違い契約夫婦は異国で再スタートする〜  作者: 四片霞彩
初デートinニューヨーク

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第53話

「いや……おかしくない」


 そうは言っても、楓さんの目は逸らされたままだったので、だんだん自信がなくなってくる。


(目を逸らしてそんな事を言われても、説得力が無い様な……)


 今のパート先もこれまで働いていた書店も、社内規定でスカートは禁止されていた。仕事に合わせて普段着もズボンばかり履いていたので、ワンピースどころかスカート自体、履いたのは学校を卒業して以来だった。学校を卒業してから数年が経ち、年齢を重ね、体型も変わってしまったと思うので、やはり似合っていなかったのだろう。

 気落ちしていると、店員さんが戻って来たようで「よくお似合いですよ」と優しく声を掛けてくれる。


「ご主人の要望通り、黒のワンピースを中心に選びました。そちらは如何でしょうか?」

「イメージ通りです。ありがとうございます。後、黒のタイツかストッキングがあれば、それもお願いします。その……スカート丈が短いので、中が見えてしまうのではないかと不安で……」


 足元を見ると、確かにスカート丈は膝くらいなので、強風が吹いたらスカートの中が見えてしまうかもしれない。

 黒と白のパンプスを持っていた店員さんは、パンプスのサイズを確認する様に言うと、すぐに店内に戻ったのだった。


「今の内に靴を選べ。ジェニファーからニューヨークでは黒が流行っていると聞いて、全て黒で統一するようにお願いした。この店を選んだのも、日本人の店員が居ると聞いたからなんだ」

「そうなんですか……?」


 私がパンプスを選んでいると、店員さんが黒のタイツを持って来たので、サイズを確認してまた試着室の中に戻る。タイツもスカートと同様に数年ぶりに履いたので、若干苦戦しながら身に付けると、パンプスのサイズや履き心地も確認してから外に出る。

 私の姿に気づいたのか、楓さんは寄り掛かっていた壁から離れると近づいて来たのだった。


「よく似合っている」


 柔和な笑みと共に優しく言われて、「ありがとうございます……」と小声になってしまう。


「ワンピースどころか、スカートを履いたのは数年ぶりなので自信が無かったんです。でもお世辞でも似合っていると言われて嬉しいです」


 当たり障りなく返したつもりだったが、楓さんは呆れ果てた様に溜め息を吐いたのだった。


「俺がお世辞を言えるような男に見えるか? 本当に思っている事しか言えないんだ」

「そうなんですか……?」


 恐る恐る見上げると、楓さんは「ああ」と頷いて、軽く頭を叩いてきたのだった。


「小春によく似合っている。普段もスカートを履いたらいいんじゃないか」

「これまでは仕事に合わせて服を購入していたんです。前に働いていた書店は社内規定でスカートが禁止されていたので……」

「そんな社内規定があるんだな。知らなかった……着心地はどうだ、悪くないか?」

「丁度いいくらいです」


 私が笑みを浮かべると、楓さんの頬がほんのり赤く染まっている事に気づく。


(もしかして、照れているのかな……)


 自惚れかもしれないが、さっき目を逸らしたのも、もしかしたら照れていただけだったのかもしれない。


「じゃあ、それで決まりだな」


 楓さんは先程の店員さんを呼ぶと、「これを全て買います」と話す。店員さんは慣れた手付きでワンピースやパンプスの値札を外していくと、最初に会った白人の店員さんに会計を任せたのだった。


「ま、待って下さい!」


 店員さんの後に続こうとした楓さんの腕を掴むと、何度も首を振る。


「どうした?」

「手帳を届けただけなのに、こんなに受け取れません! だって、どれも高いんじゃ……!」


 値札を外してもらう時に見たが、ワンピースもパンプスもそこそこの値段だった。日本に居た頃に自分で服を買うとしても、もっと安い店で買っていた。

 楓さんは「なんだそんな事か」と腕を払う。


「それくらい、大して高くない。ニューヨークじゃ普通の値段だ」

「でもっ……!」

「ここに来ても家の事をやってくれているだろう。……俺の気持ちだ。受け取って欲しい」


 そして、楓さんは店員さんに呼ばれると、レジに向かってしまう。

 残された私は日本人の店員さんに言われて、お店のロゴが入った紙袋の中に、ここまで着てきた服と靴を詰め込む。カバンと紙袋を持ってレジに向かうと、既に会計は終わっており、楓さんが待っていたのだった。


「行くか」


 楓さんは私の手から紙袋を取ると、店員さん達に礼を述べて店を出て行く。私も楓さんに習って、礼を述べると、後に続いたのだった。



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