修行は大事!
両親に明日はバフじいさんの手伝いをすると言ったらあっさり許可が下りた。カムイも同じみたいだった。
朝食を済ませてカムイと合流する。バフじいさんを驚かせようと少し早めに来たのに、じいさんはもう来ていて草むしりをしていた。
「小童共やっと来よったか。ワシが直々に教えてやるんだから感謝せぇ。」
そう言いながら、草をむしった後に入れるカゴを二個渡された。
「小童共に強化魔法をかけてやる。とりあえずこの畝を向こうまで草むしりして戻って来いやぁ。」
そう言ってそれぞれの畝の前に無理矢理立たされ、ほらよっと言いながら背中を軽く叩かれた。その瞬間世界が変わった。鳥のさえずりがやたら遅く、今まで見えていた物がより一層鮮明に見えた。バフじいさんのしたり顔がなんかムカつく。
「はよ行けや。」
そう言われて慌てて草むしりをしだす。手のひらサイズの雑草でも軽くつまむ程度で抜けた。かといって小さい雑草を握り潰すような事もなかった。そして何よりも腕が簡単に動く。手が何本もあるんじゃないだろうかと錯覚するくらい高速に作業ができた。思わず顔を上げてカムイの方を見る。向こうも同じ様にこちらを見ていた。お互いの声が重なった。
「「これやばい!」」
自然と笑い声が出た。バフじいさんはいっつもこんなのをかけながら農作業をしていたのか。
「ルー、どっちが早いか競争な。」
「負けないよ。」
そう言って、僕達は1畝100mくらいの雑草抜きをあっという間に終わらせた。
「どぅじゃ?本物の強化魔法はすごかろぅ。」
「うん!すごかった!俺のと全然違った。」
カムイが嬉しそうに答えた。僕も続けて言う。
「強化魔法って丈夫にするだけだと思ってました。」
バフじいさんが嬉しそうに二カーっと笑った。
「そうじゃろそうじゃろ。小童共の魔法は生活魔法でしかない。魔法とは妄想の塊よ。妄想をより具現化するために呪文を唱えるもんじゃ。ワシに勝ちたくばワシの妄想を超えてみぃ。」
それからバフじいさんにひたすら草むしりをさせられた。自分で同じくらいの強化魔法をかけてみるように言われたが、全然バフじいさんの様に強化できなかった。
草むしりを終える頃にはお昼になっていた。バフじいさんは荷物からホカホカのおにぎりと、空のコップを取り出し魔法で冷たい水を注いでくれた。それを僕達は口いっぱいに頬張り、水で流し込む。
「「生き返る〜。」」
カムイと声が重なった。強化魔法を使っているから、身体的にはそんなに疲れていないが、精神的な疲労がすごかった。魔力量はバフじいさんが強化魔法でなんやかんやしてくれたおかげで、あれほど使ったのにさほど変化が無かった。
「小童共の魔法はまるで正反対じゃのぉ。太陽バカは効果は大きいが複数の効能や多重がけが苦手。ルーディアは多重がけや効能追加はできるのに一つ一つが弱いのぉ。足せれば良いのにのぉ。」
「じいさんよくわかるな。」
カムイが軽口を叩いたら、思わぬ返答が来た。
「だってワシ、冒険者やってたからのぉ」
「「!?」」