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東国の勇者の場合⑦

「疲れた~」

その言葉とともにベッドに倒れこむ。このベッドはこの世界で目覚めていた時に自分が寝ていたものと同じものだ。

 あの時は全くと言っていいほど気が付かなかったが、低反発のフカフカした心地よいベッドだった。

「勇者様、起きてください。」

今にも寝てしまいそうな幸せな雰囲気に水を差すようにリニアさんの声が響く。

「国王陛下からの条件お忘れではないですよね。」

確かに、憶えている。

 返事の保留にあたって出された条件は三つ。

一、見て回るのはこの国の国内に限定すること。

二、期間は半年ではなく2週間とすること。

三、2週間の国の見回りの成果を国王の目の前で発表すること。

この三つの条件を出されたはずだ。

一は理解できる。確かに、勇者という歴史的に重要な人物だとしても他国の人間に国内をウロチョロされるのは気分のいいものではない。軍隊を持ち魔族と戦争をしている国ならなおさらだろう。

 魔族との戦争が終わればいずれ銃口は残った別の国へ向けられるはずだ。おそらくどの国も上層部はそこまで予測し、計算して動いているはずだ。でなければ国の王なんて勤まるはずがない。特に戦争の多い時代では。

 二も納得はできる。本当はもっと長くしたかったが王もこの国の長としてその期間が限界ということなのだろう。

 問題は三だ。まさかこんな夏休みの宿題のようなものを出してくるとは思わなかった。確かに何を見てきたのかという成果は欲しいと思うのが人間心理だ。

 だがこれに関しては引き延ばすための方便で言ったものだ。はっきり言ってやりたくない。リニアさんの言葉の心理も三つ目の条件を何とかしろと言うものだろう。

 2週間で成果を出すなんて無理だ。リニアさんもわかっているはずである。だから帰るなりベッドに横たわった自分を叱咤したのだろう。それに、まだ何か言っていている。語気を見るに何やら説教しているようだ。全く耳に入らない。でも、ここを乗り切らねば、この説教がずっと続くかもしれない。

 だがやりたくないし、考えたくない。


〝よし、無視しよう。″


とりあえず言葉は脳には届いてないのだから無視していればただの生活音だ。このまま寝てしまおう。

「先ほどから、聞いておられるのですか‼」

怒りのこもった声とともにベッドから引き離されて、床へと投げつけられた。

「勇者様、聞いてください。あなたの我儘により設定された期限があるのです。この期間中に何かしらの成果を見せなければどういう結果になるかわかりませんよ。」

怒りの籠った声で淡々と怒られた。とりあえずリニアさんをなだめることに専念しよう。

「まぁまぁ、そんなに怒らないでください。」

「勇者様は国王陛下の事をよく知らないからそういったことをおっしゃることができるのです。国王陛下はこういったことには大変厳しいお方です。ですから、いくら異世界から来た勇者といえども約束を反故にした場合どういったことをされるか。」

「なるほど、そんなに厳しいんですね。リニアさんが起こるくらいには。」

「ええ、ですから勇者様にはしっかりとしていただきたいのです。」

「わかりました、じゃあ頑張ってみます。」

「そう言っていただけると何よりです。」

その会釈と同時に出されたリニアさんの言葉は先ほどと比べて穏やかであった。

 まずは、この王宮内とその周辺を見て回ることにしよう。

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