東国の勇者の場合62
意外にもアルスレッドが口火を切った。
「そういえば、ケンマ様の魔力操作の才能は目を見張るものがあります。」
この一言で部屋に充満している恐ろしい空気が少しは浄化してくれるもと思っていたが
「そのようなこと私はお会いしたその瞬間に認識しましてよ」
リニアさんをただ煽っただけのようだ。
「そうですか、、、あのような光景を見ただけでそこまでの考えをお持ちですか。あなたはそのことに少し魅了されすぎなのでは?」
・・・ん?あのような光景ってなんだ?
「一緒に見ていたあなたはあの奇跡のような光景を見て何も思わなかったのですか?それこそ、神や信仰というものに対して少しばかり、失礼すぎやしませんか。そのような考えではひとのついてくることはありませんよ。」
というかいつの間にか煽り合いになっているのだが。。。それに、リニアさんの丁寧過ぎる敬語が恐怖心を増大させている。
「そのことに関しては、あなたの知ることでは無いでしょう。それに私も信じているものがないわけではありませんので。」
アルスレッドの語気が強くなってゆくのがわかる。こちらも相当に聞いているらしい。しかし、それとは反対に笑顔が強くなっているのがどうにも恐ろしい。
「信じているものですか、、、お里が知れるというものですね。あのような心動かされる美しいものを目にして何も感じないとはその信じているものとやらも、たいしたことはないのでしょうねぇ。」
「それはどういった意味のものでしょうか。」
「価値のわからないものが信じているものに価値はないということです。」
「価値はない、ですか、、、それなのに、魔力の才能というところまでは思いついていなかったのは何故なのでしょうか。私の方がケンマ様の価値を認識していると思うのですが。」
えっとぉ、、、、、、、だんだんと、煽りが互いにキツくなっている気がするのですが。。。。。。。。。
「それは、私への挑戦といったところでしょうか。」
「如何様にも。」
二人が少し、臨戦体制になった音が聞こえた。
「ちょっっっと、待っった〜〜〜!?」
とにかく、今の二人を止めるために、できる限りの大声を張り上げた。
二人のきょとんとした顔がこちらを見つめてくる。そのことで、静寂が生まれなんだか滑稽なことになっているが、笑ったら失礼だし、余計ややこしくなる。
「すいません、なんか大声出してしまって。」
我に返り謝罪をする。
すると2人が笑い始めた。なんだかこの3人になって初めての和やか雰囲気かもしれない。
「こちらこそ、申し訳ありません。」
と、アルスレッド。
「ええ、本当に申し訳ありません。私たちも少しヒートアップしてしまってしまったようです。」
リニアさんも落ち着いたようだった。
「ケンマ様、このあとはどうなさいますか?」
「食事をして、お風呂に入りたいんですが、、、」
「かしこまりました。それでは準備してまいります。」
リニアさんは一礼をして部屋を後にした。
ちょうどいい、アルスレッドには聞きたいことがある。