東国の勇者の場合59
色々起こり過ぎて忘れていたが今どのくらいの時間なのだろう。
「そう言えばどのくらい眠っていたんですか?」
「そうですねぇ、3時間と言ったところでしょうか。」
3時間か、案外早く起きたものだ。
「前回のときと比べるとかなり早く目覚められているので、魔力でのガードがしっかり出来ているということなのでしょう。」
なるほど、魔力にはそんな効果もあるのか。しかし、リニアさんの言っているように感じることはできなかった。ガードが出来ているようには自分は感じれなかった。痛みやダメージは、前回のときと対して変わってはいないように感じた。
しかしながら、体験でしか得られないような知見もある。言葉の差異のような物でそのように表現するしかないこともたくさんある。おそらくその中の一つなのだろう。どういった差異があるかこれから調べてゆくとしよう。
とりあえずの今後の指針が決まった。
「じゃあ、これだけ早く目覚められたのって、」
「はい、ダメージ量がそこまで大きくなかったのが要因かと思います。」
なるほど。体力的な面でもこの魔力操作の技術を一番に学んだほうがいいだろう。
そうとなっては善は急げと言いたいところなのだが、肝心のアルスレッドがどこにも見当たらないし、訓練自体も止められてしまっている。さてどうしたものか難題が山積みになっている。
出来うる限り早い段階で習得しなければこれからの自分の考えを通してゆくのが難しくなってゆくだろう。そうなればやりたいことができなってゆく。まだ自分の価値が高いうちにやりたいことを押し通して逃げ切ってしまうのが自分の利益につながるだろう。
そのためにも武術や魔法なんかの出来うる限り早い習得が必須である。しかし。こんな時に動けずにいるとは、かなり厄介なことになってしまった。
「まだ、お身体は痛みますか?」
その声にハッとなり、意識が自分の体に向く。
まだ脇腹に弱くて鈍い痛みが残っている。だがそこまで気にするほどのことじゃない。さっきまで忘れていたくらいなのだから。
「まだ少し、痛みますがもう大丈夫です。」
「そう、、、ですか。少し真剣な顔をされていたようだったので何かあったのかと思いまして。」
どうやら真剣に考え過ぎて心配をかけてしまったらしい。よくよく考えれば、人間の急所に攻撃を得ているのだ、心配して当然というものだろう。
「わかりました、ありがとうございます。本当にもう大丈夫なので、気にしないでください。」
「かしこまりました。」
リニアさんはそう言って頭を下げた。
次の瞬間扉の開く音が聞こえる。