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東国の勇者の場合51

おそらく、自分の声を聞いたアルスレッドが駆け寄ってきてくれた。

「大丈夫ですか?」

アルスレッドが手を差し伸べて自分を起こそうとしていた。

「申し訳ありません、ついやってみたいことが思い浮かんでしまって。」

ドジをしたかのように頭を搔いて見せた。

「もしかして、空を飛んだことがですか。」

「は、、はい、、、、」

かなり指導とは違うことをしたのだ、ある程度の文句や嫌味、小言といったものは覚悟していた。

「す、凄い成長速度です、ケンマ殿。」

しかし帰ってきたのは意外にも何の脈絡のない賞賛と驚きだった。

「えっ?」

あまりに突然の事にこちらも驚きで声が出る。

「正直、魔法に関していえばこの国で一番の天才になっていることでしょう。」

そういえば、訓練の最中アルスレッドの顔が驚きの表情に変わってゆくのを面白がっていた記憶がある。表情から察するに呑み込みが早い程度にしか考えてなかったが、想像よりも驚いていたのかもしれない。

 それで、さっきのがダメ押しだったのだろうか。

「そんなに凄いんですか?」

「ええ、凄いなんてものじゃありません。常人なら少なくとも数か月はかかるようなことを、たったの数時間で全て成し遂げてしまったのですから。」

前のめりになって説明をしてきた。アルスレッドの顔がどんどん近づいてくる。

「す、すいません、、、ちょっと、、近いです、、、、、」

アルスレッドの顔が少し赤くなった。同性とはいえここまで顔を近づけると恥ずかしくなるものなのだろう。自分も少し緊張している。それはアルスレッドの顔が中性的で、見方によっては女性に見えなくもないからだろう。

「申し訳ありません。少し、興奮しすぎてしまいました。」

「いえ、こちらも少し気にし過ぎました。」

赤かった顔が元に戻ってゆく。そして、真面目な顔に戻った。

 そして、そのことをごまかすかのように一つ咳払いをする。

「とにかく、ケンマ殿の才能ははっきり言って異常と言わざるを得ません。あとひと月もすれば、世界の形勢をいとも簡単に変えてしまえるほどに。」

つまりそれは、自分を駒としてそろえることができればこの国の転覆でさえも容易にできるということである。よもや自分一人の存在がそこまで大きく危ういものだったとは考えてもみなかった。

 思い返せば、数日前に合ったモーリス卿の態度はそのことまで考えての態度だったのかもしれない。

自分の考えに背筋が凍てくるのを感じる。だが考え方を変えれば、自分一人で国家転覆も容易であると言っているようなものだ。

 周りからはそう考えられていると思った方がいいだろう。勇者というものがどういった人物なのか、過去の文献を調べてみれば勇者にどの程度の魔法の才能があるかは簡単に把握できる。

この世界の人間に対して畏怖も恐怖も簡単に与えられるということか。もう少しやりやすい世界が良かった。。。。

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