東国の勇者の場合48
アルスレッドの手から自分の身体へ何かが流れて来た。それは体温程の熱を帯びており、液体のようではあるが形容し難い肌触りであった。
「どうです、何か感じませんか。」
「は、はい!な、なんだか暖かいものをを、、これは、、、」
少しすると息苦しさを感じた。まるで身体が拒絶反応をおこしているかの様だ。
するといきなり、苦しみが和らぐ。どうやら、アルスレッドが手を離した様だった。緊張の糸が途切れた両脚は地面へと崩れ落ちた。
「あなたが今感じたもの、それが魔力です。」
これが、『魔力』
えもいわれぬような感触がまだ肌に感覚として残っている。途轍もなく不快な感触だ。
「おそらく相当不快に感じられたと思います。ですが、身体に何かが流れるのを感じませんか?」
相違場自分の中に何かが流れているのがまだボヤっとだがわかってくる。
「アルスレッドさんの言う通りです。確かに何かが流れています。でも、さっきのはかなり不快に感じました。こんなものを感じて戦わなくちゃいけないんですね、尊敬します。」
アルスレッドは少し笑みを浮かべた。
「ははっ、安心してください。不快に感じたのは他人の魔力だからです。」
「他人の?」
「ええ、他人のです。」
アルスレッドの顔が少しだけまじめなものに変わった。
「今私が行ったことは、私の魔力をケンマ殿の身体に流し込むというとことです。自分の魔力を相手に与えるということは特殊な魔法でも使わない限り攻撃となります。」
「なるほど、さっきの不快感の正体はそれだったんですね。」
「ええ、私が最初に少し危険といったのはこれが理由です。」
確かに、思い返してみると、そういうふうに警告していた気がする。
「自分の身体に他人の魔力が入ると拒絶反応を起こし、かなり低い確率ではありますが最悪の場合は死に至ります。」
今、なんかさらっととんでもないこと言わなかったか!?
「死に至るって、結構すごいリスクじゃないですか」
「安心してください。確率はよっぽど低いですし、力のないものがとんでもないミスをしない限り、起こることではありませんから。」
アルスレッドの顔だほころび、語気には自信が宿っていた。
しかし、すぐにまじめな顔し戻すと
「しかし、この方法は、本来はもっと魔力の属性が近い間柄で行うべきものなのですが、ケンマ殿にはそういった方がこの世界にはおられません。ですから、危険にさらしてしまったのは事実です。申し訳ありません。」
頭を深々と下げ敬礼な謝罪をした。
「大丈夫です、その陰で魔力の感覚を掴めるきっかけをもらったので。」
できる限り笑顔で返すことにした。