東国の勇者の場合47
魔法とは体内の魔力と外界の魔素を混ぜ込む事で起こす事が出来るらしい。アルスレッドからひと通り教わってみたが、いまいち理解に苦しむところが多い。
魔力は身体の中を血液のように流れているらしく、それを感じるところから始まるらしい。正直に言って自分にはその身体を流れている魔力を感じることはできなかった。アルスレッドにどんなふうに感じているのか聞いてみたがどうも、要領を得ない。
そもそもこの国のひと達は魔力の存在なんてものをどんな風に認識しているのだろうか。気になるところである。こういったことは頭で何かを考えて行う人間には向いてないのかもしれない。
頭を使い過ぎて疲れてきた。休憩ついでにベッドに倒れ込む。なんだか、睡魔が少しだけ襲ってきた。ここで寝てしまったら、学んだものがパぁになる気がする。
もっと言語化してみたり、論理的に説明出来たりするものでないと、どうも習得ができない。
ふと、昔のことを思い出す。体育の授業の器械体操では、運動ができている人間の事をよく観察してどんな風に身体を動かしているか理解してできるようになっていた記憶がある。全ての事にしてもそうだ。なんでも器用にこなしていた記憶があるが、それも全てこの手順を踏んでいたということなのだろう。
しかし今回はどうだろう。アルスレッドの行動を見てどんな風に感じ取っているのか観察してみたが、ただその場に立っているだけだった。特別な動きも何もあったもんじゃない。これでは、自分の特性を生かすことが全くできない。
感覚だけでいろいろなものを感じ取ることの出来る人間がとてもうらやましく思う。どうしたらよいのか頭を抱えるしかない。
「やはり、魔力の概念がないと難しいですかね。」
アルスレッドの顔が目の前に現れた。
本当に綺麗な顔をしている。男であるということを疑ってしまうほどに美しさだ。
「そう、ですね。いろいろなものを頭で考えてしまう時運には向いていないみたいです。」
「やはり、そうですか、、、」
そう言いながらアルスレッドは体勢をもどした。それに合わせて自分も身体を起こした。
『やはり』ということはある程度この光景は予想されていたということか。魔法の使えない勇者は捨てられるのか、はたまた何か別の試案があるのか。
どっちにしろ魔法の研究をして生活するという夢は終わりを迎えたということである。さてと、この後どうしようか。
「では、少し危険ですが、一つ試してみましょう。」
そういうとアルスレッドは自分の両手を手に取った。
「試すって何をするんですか。」
「まぁ、少しじっとしていてください。」
その言葉とともにアルスレッドの両手が暖かくなる。
何が起こったのか、そのことを考えていると急に身体に体感したことのない感覚が走り始めた。