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東国の勇者の場合33

 扉が閉まり、一瞬の沈黙が流れた。さきに口を開いたのはモーリス卿だった。

「では、単刀直入に聞こう。君は、私に付くつもり私に付く気はないか。」

「確かに、単刀直入ですね。あなたの方に付くってだけじゃあ、あまりにも漠然としすぎてます。誰なんです、あなたと争うもしくは、争う予定のある人物というのは。」

モーリス卿の眉が少し動く。

「申し訳ない、確かに君のいう通りだ。私は別に誰かと争ったり戦争を起こしたいという訳でもないんだよ。ただ、、、」

「ただ、何です。」

「ただ、単に戦力は多い方がいい。それだけだよ。」

「戦力?それは、何の戦力ですか。よければ教えていただきたいのですが。」

「いや、大した意味はないよ。恐らく君の居た世界では戦力という言葉が大きな意味を持つのかもしれないが、こちらでは『仲間や味方、利害の一致したもの』そんな程度に捉えてもらえると助かる。」

「なーんだ、そうなんですね。申し訳ないです。話の口振を見るにこの国で国王陛下へクーデターを仕掛けるもだと思ってましたよ。」

初めて、顔が少し歪んだ。しかし、一瞬で元に戻る。

「いやはや、そんな大それたこと出来はしないよ。君も考えすぎだ。」

「そうですよね、本当にすいません。」

「ハハハハハッ、気にしなくていいよ。私の聞き方も悪かったしね。」

「そう言っていただけるとありがたいです。」

嘘のような笑い方に、自分も社交辞令を言った。

「ただ、その態度はやめた方がいい。」

「その、態度ですか、、、」

「ああ、人を疑って試すような態度だ。貴族の中にはプライドの高い者が多くいる。そんな相手にそのような態度では、何をされるか分かったものではないからな。」

なるほど、それは一理ある。

「お気遣い、ありがとうございます。以後気をつけます。」

だがその注意事項はモーリス卿にも言えることだ。まず先手で自分を試すような発言をしている。一体何を狙っているのか。正直国内のゴタゴタなんてものどうでもいいが、自分が渦中に置かれたり巻き込まれたりするようにことにだけはならないでほしい。

 それにしてもよくまあ、いけしゃあしゃあと講説を垂れることができ出るものだ。よほどの無知で自分のプライドの高さに気づいていないか、よほどの傲慢さで、自分にも当てはまる指摘をしていてもなんとも思わないサイコパスか。

まあ、今すぐに、答えを出したところでどうにかなる案件でもないし、少し放置ということで問題ないだろう。

「ところで、勇者殿から見てこの世界はどう見える。」

何だこの質問は。

「どう、、、とは、どういった意味でしょうか。」

「そのままの意味だよ。異世界から来た君にはどうやってこの世界を見ているのかが知りたいのだよ。」

どう見ているか。考えたこともない。正直この世界にきてまだ日が浅いし、見ている世界はかなり狭い。自分の常識に当てはめるなら異常な光景しか見えないそんな世界である。

「とても、いい世界だと思います。」

「ほう、どういった点がそう思うのか詳しく聞かせてもらっていいだろうか。」

「正直、まだすべてを見たわけではないので全部を知っているかと言われればそうではないし、良いところしか見えていないという前提でお話ししたいのですが、この領地に住んでいる方々はみな笑顔で活気にあふれています。それを見た時に自由に暮らすことができているのだと思いました。さらに、自分が元居た世界では自然の木々がなくなりつつあります。そういったものと比べると自然の多く暮らしやすい世界と思います。」

嘘は言っていない、そのはずだ。だが、本気でそう思っているかというとそういうわけではない。

「ほう、木々がないと。」

「はい」

「いったいどんな風景なのか教えてもらっていいかね。」

なんとまぁ、難しいことをコンクリートだとかビルだとか言っても伝わりそうにないし、一応言い換えることもできる出来るがめんどい。

「ちょっと説明難しいんですけどね、科学っていうものが発展しているのでそれが影響してる世界ですですね。」

「ほう、カガクか。その話興味深いなぁ。」

モーリス卿の顔がほころび少し体が前のめりになった。

「今度時間をとってその話について聞かせてくれないか。本当は今すぐ聞きたいのだが、これからの予定もあろう。」

確かに、今日周る領地はここだけじゃなかったはずだ。これからの事を考えるとここで話し込むのは得策ではないか。

「そうですね、それではまたの機会に。」

そう言って手を差し出した。握手をしろというサインである。さっき先手を取られたからちょっとした仕返しである。

「ああ、ではまた。」

そう言ってモーリス卿は握り返していた。

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