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東国の勇者の場合32

部屋に入るとそこは意外と広さのない空間だった。ドラマなんかでよく見るような社長室ぐらいの広さに、応接室で見るようなソファとテーブルが並べられている。そしてその奥には、少し豪華な机がフカフカの机とともに置かれていた。その光景は本当の社長室の様だった。

部屋の椅子に1人の赤髪の中年と思しき男性が深く腰掛けていた。口元に髭を蓄えている顔は数秒見ただけで無表情な人間であるとわかるくらいには動かない。そして、かなり高圧的で座っているだけで圧迫感が出てきている。そんな自分物が一点に自分の方をずっと見ている。

はっきり言って国王と話しているより、緊張する。

「やあ、勇者殿。これは、よくおいでくださった。」

突然椅子から立ち上がり、握手の意味だろうか、手を差し出してきた。

 自分もそれに合わせて領主の方へ進み、固く握手を交わした。

「初めまして。勇者としてこの国に召喚されましたケンマ・アズマネです。」

「こちらこそ、初めまして。私はここの領主、『モーリス・アリストロ』と申します。以後お見知りおきを。」

「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」

返事をしてモーリス卿の顔を見ると貼り付けられた笑顔がそこには再現されていた。

それだけで背筋に悪寒走らせるには十分すぎる。途端に彼への信用は消え失せ、相手への不信と恐怖を増幅させるには十分すぎるくらいの黒い笑顔がは体をこわばらせた。

「立ち話もなんだ、そこのソファに掛けたまえ。」

「はい。」

モーリス卿が自分の後ろへと来ていたソファを指した。

 冷静に考えれば何様なのだろうか。自分からわざわざ近くへと来させるような握手をしておいて、追い越してしまったソファに座らせる。ソファに座らせたいのであれば、最初にモーリス卿の方からこちらエ土地数いてくれば済む話ではないのだろうか。

 こういった部分が目には見えないこの公爵様のプライドからくるものだろうか。

 いやいや、もっと冷静になれ。公爵と言えば国王の次に身分の高い貴族はずだ。こんな風になってしまうのはある程度はしょうがない。もしかしたら悲しいことかもしれないが彼はこういった対応しかできないのかもしれない。早計に考えすぎた。もう少しちゃんと対応する、最初はその方がいいはずだ。

 そんな思いが駆け巡る中ゆっくりとソファへと腰かけた。かなりふかふかしたクッション性の高いソファである。これだけいいソファ座ったことがない。やはり金をかけているのだろう。そう感じるところが部屋の随所に感じられる。

 モーリス卿も自分の向かいのソファへと座った。深く腰掛けて背もたれへもたれかかり、脚を組んでいる。よほど横柄な態度は、それだけ自分に自信を持ち公爵という地位によほど誇りを持っているのか、はたまたかなりのナルシストで傲り高ぶってるのか。どっちにしろ見られ方として、印象はよくないのは確かである。

 モーリス卿が急に指を鳴らす。

「アーデン、勇者殿と少し二人になりたい。出て行ってはくれないか。」

その言葉の後にゆっくりとこちらを見つめて、

「勇者殿もそれでよろしいかな。」

つまりは、こちらもリニアさんをこの部屋から追い出せということか。多分断れば今回はここで終了となるだろう。それに自分はリニアさんに面倒な人間から会いに行くように計画してもらった。つまりはリニアさんにとって、一番面倒な相手だということだ。

 だったら、

「かしこまりました、モーリス卿。自分もそれで大丈夫です。」

「これは話が早い。ではリニア、君も出ていきたまえ。」

偽りの笑顔に、真の笑顔が混ざり始めたような気がした。

リニアさんが少し心配そうにこちらを見つめていた。

「大丈夫ですよ、リニアさん。一応勇者ですから。」

そう勇者なのだ。よっぽどのことがない限り丁重に扱われるだろう。それぐらいの頭は回る人間のはずだ。

「では、始めようか、勇者君。」

「ええ、さっさと始めてさっさと終わらせましょう。」

誇りか傲りか。さぁ、プライドを推し量る勝負をしようか。

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