東国の勇者の場合24
入浴が終わり、今朝起きた部屋とは違う部屋に案内された。
「どうぞお入りください。」
リニアさんが扉を開けてくれて中に入るように促した。
「ありがとうございます。」
そういって中に入ると、そこには食事が用意されていた。
「す、すごいですね。」
「国王陛下お抱えのシェフが作った料理でございます。」
用意された食事に感嘆する。見た目はまさに高級フレンチの様だった。調理された食材が整列したかのように綺麗に盛られていて、とても良い香りのするソースがかかっている。色合い的に元の世界でいうところのグレイビーソースのようなものだろうか。とても食欲をそそる香りである。
肝心の食材は何かの動物の肉だろうか。見た目的には牛のステーキ肉に近いものである。その周りを取り囲むかのように付け合わせの野菜が並べられていた。茹でてあるのだろうか。その暗い色が鮮やかである。しかし、どれも見たことがなく、緑黄色野菜に誓者ということまではわかるが、それ以上はわからなかった。
そしてその料理の隣に申し訳なさげに切って焼かれたバケットが置いてあった。
「ありがとうございます。」
少し興奮気味の感情を抑えて、料理の前に用意された椅子に座った。
「いただいてしまっていいんですか?」
興奮で声のトーンが高くなっているのが自分でもわかる。
「ええ、お召し上がりください。」
「じゃあ、いただきますっ‼」
その声と同時に手はもう置かれていたナイフとフォークに手を伸ばしていた。そして、待ちきれないとばかりに肉を切り、かかっているソースを少しだけ落として頬張った。
その瞬間何とも言えないがっかり感を味わった。
別に不味いわけではない。だが、かと言って美味しいわけでは決してないのだ。何だろうかこの感じは。ソースにパンチというものが一切ない。味付けも決して間違っているわけではないが何かがとてつもなく物足りない。さっきまでの感動を返してほしい。
というか、これが国王陛下お抱えのシェフってやつですか。がっかりしたことこの上なしである。
バケットにも手を伸ばしてみる。何だろう、バケットの方が美味しく感じてしまう。なんだか、ちゃんと想像した通りのバケットで安心してさえいる自分が悲しくなってきた。思い返してみれば肉自体が不味いわけではない。つまり食材はちゃんとしているということだろうか。
試しに、付け合わせの野菜を食べた。想像した通り茹で野菜であった。これもおいしい。ソースをつけてみたが当然のごとくつけない方が美味しい。つまりはこの味の元凶はソースであるという言事が判明した。
あまりにも割る方向に裏切られ過ぎて涙が出てきそうだ。こんなことになるなら、激マズで口に合わないくらいの方がよっぽど良かった。
リニアさんがこちらを見て微笑んでいる。料理の感想でも聞かれるのだろうか。とりあえず、
「美味しいです。ありがとうございます。」
「お口に合って何よりです。」
微笑みが少し強くなった。機嫌がよくなったのだろう。てか、これから食事どうしよう。