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東国の勇者の場合 11

 死の宣告とともに始まった訓練はまず軽めの準備運動から始まった。しかしその軽めの準備運動がかなりきつかった。

 行っていることはとても簡単で、普通の空間なら問題なくこなすことができる。訓練場の周りをまわる軽いランニングとストレッチ、あとはリニアさんに倣ってこの世界独特の武術の方の練習そんな感じだった。

 どれもハードではない内容だし、リニアさんも初心者向けに手心を加えてくれているのがわかる。しかし、この蒸し風呂のような環境が体力を奪っていった。あまりの暑さに少し動いただけで肩で息をしているのがわかる。現代人は体力が衰えているというのを身にしみて感じることができた。

「では、組手をしますか。」

は?いったこの人は何を言ってるんだ。今のを見ていてわかったはずだ。自分に体力がなく、戦闘の経験などないことが。ある程度底に対して心得があれば、体力がこんなにも低いわけがないことくらい想像できるだろうに。そのことに回りも気が付いていないように見える。

もしかしたら勇者という立場がリニアさんやその他のひと達を勘違いさせているのかもしれない。伝承や勇者という称号から、突如現れた特別な力を持つ最強の兵士のようなそういった人物を頭の中に勝手に想像しているのだろう。

まったくはた迷惑な話である。そうやって応えられもしない期待をかけられて失望されても自分には何の責任も取れやしない。そのことを解って発言してほしい。

さて、実際問題どうしたものか。リニアさんは強者かもしれない人物を前にして目を輝かせている。断ってもいい気もするが、そっちはなんだか骨が折れそうになる。それにこの人たちの信頼を損ねかねない気がする。おそらく戦闘やその訓練の中に何か意味を見出す人たちなのだろう。そうでなければたかが訓練ごときでこんなに目をかがやせる理由がわからない。

ここは乗っておくのが吉か。しかしそれもリスクがある。負けた時の勇者としての期待の裏切りをどう見るか。勇者としてこの世界に召喚されて、戦闘訓練が好きなだけな侍従の女性に負けるなどあっていいものか。生物学的には男の方が強いことは言うまでもない。しかも立場的には勇者だ。それに男尊女卑の文化があったらどうする。それこそ目も当てられないだろう。

どれだけ考えても答えは決まらない。押しても地獄、引いても地獄なら

「じゃあ、手合わせ願います。」

俺は、押してまいる。最高の親友からの受け売りだ。

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