蜜の樹窟
魔蜂に案内され、移動すること数分後……
「ここが…『蜜の樹窟』」
『蜜の樹窟』の入り口と思われる、大きな穴が空いた大樹へと到着するのだった。
『デカくね?』
『森の奥にこんな大樹があったのか…』
『き、気がつかなかった……』
どうやら、この大樹の存在は知られていないようだ。
〈ささ、どうぞ中へ〉
魔蜂にそう言われ、穴の中に入ると……
「っ!?」
そこには、ハニカム型の壁と蜜だらけの床に加え、たくさんの魔蜂が飛び回っていた。
……何か、養蜂箱の中身みたいだな。
「甘い匂いがする…」
〈僕達の仕事は花粉集めだからね〜〉
「そうなの!?」
『初心者殺しなのに、役割が超可愛い!!』
『なるほど、仕事を邪魔されたから攻撃してたのか』
『肉食じゃないのか』
『そういう設定なのね』
「設定言うな!!」
夢が壊れるだろうが!!
〈アレ?白兎だ〜〉
〈珍しい〜〉
〈何した来たのかな〜?〉
「ぐっ……可愛すぎる!!」
前々から思ったたけど、こいつらの戦闘力と可愛さが釣り合ってないんだよな。
何でだろ?
〈シロさ〜ん、こっちですよ〜〉
「あぁ、分かった」
そう言った後、魔蜂について行く俺。
そして、辿り着いたのは……王座の間らしき場所で
「よく来たなぁ、客人さん」
その王座には、チャイナ服を着た褐色肌の金髪のお姉さんがいた。
おかしいな、お姉さんの見た目が性癖を詰め込みまくった感じに見えるんだが。
と、そんなことを思っていたら
『これ、間違いなく運営側の性癖入ってるだろ』
『褐色肌+金髪+チャイナ服はアカン!!』
『二代目GMになってから、何か運営側の性癖が顕著に出るようになったなぁ』
視聴者達も同じことを思っていたのか、運営側の性癖入ってるじゃね?的なコメントが続出していた。
良かった……俺と同じことを思っている奴がいた。
「何や?アタシの顔に何か付いてるんか?」
「……はぇ?」
オィィィィ!?見た目だけじゃなくて、口調も性癖出てんぞ!!
何で性癖に性癖を重ねているんだよ!!
性癖を盛ればいいってレベルじゃねぇぞコレ!!
『やりやがったな運営』
『褐色金髪チャイナ娘に関西弁はアカン!!』
『どんな組み合わせだよ』
『一部の界隈が盛り上がりそうな予感』
『だな』
「まぁ、そんなちっぽけなことはいいとして……」
あ、細かいことは気にしないタイプなのか。
「まずは、ウチの子を助けてくれたお礼をしないとな」
そう言った後、近くにいた魔蜂に何かを指示したかと思えば、その魔蜂は俺の方に近づくと、琥珀色のジュースを手渡すのだった。
「これは…?」
「ウチの子達お手製の蜂蜜ジュースや。疲れも取れるし、味も美味しいし……ま、ウェルカムドリンク感覚で飲んだらええで」
あ、これ拒否権が無いやつだ。
そう思いながら、俺はそのジュースを飲むと
「美味っ!?」
口の中で、蜂蜜の優しい甘さが広がるのと同時に、体力が回復するのだった。
『疲れが取れるって、体力が回復ってことだったのか!?』
『一度でもいいから飲んでみたい!!』
「あ、そや。自己紹介がまだやったな、アタシは女王魔蜂。ここにいる魔蜂の頂点に立つ存在や。よろしくな」
ニカッと笑いながら、そう言うお姉さん……もとい、女王魔蜂。
「んで、魔蜂がここに案内したってことは……この場所に危機が迫っているってことか?」
俺がそう尋ねると、女王魔蜂は、ニヤニヤと笑っていた顔から一変し、真面目な顔になった後、こう言った。
「さっき、アンタが食べた蜂蜜はアタシ達の努力の結晶。地道な労働によって得た宝物や。せやけど……」
「その蜂蜜を狙う輩がいる、ということか?」
俺がそう言うと、コクリと頷く女王魔蜂。
「と言っても、敵はアタシ達と同じモンスターやけどな」
『敵は密猟者じゃないのね…』
『蜂蜜……クマかな?』
『確かに、蜂蜜は美味しいからなぁ』
『ここってそんなに四面楚歌の状況なの?』
敵がモンスター………ということは、耐久系のクエストなのか?
「幸いなことに、まだ内部に入られてはいないんやけど……モンスター達が数を増やしつつあるのも、また事実」
「だから、俺みたいに戦える奴を探していたのか…」
その道中で、あの魔蜂は捕まったってことなのか。
「それで、アンタらの事情はわかったんだけど………俺は何をすればいいんだ?」
俺がそう尋ねると、女王魔蜂はニヤッと笑った後、こう言った。
「すぐにでも、ここを守る兵士となって欲しいが………まずは、その実力を見せてもらうで」
………まぁ、そう簡単にはいかないよな。