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【完結】偽りのトリアーダ〜この愛から逃れられない、義兄弟の歪な愛情〜  作者: 草加奈呼


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#21  思い出の場所


 

「う……うああああああああっ!!」


 脂汗をかいて飛び起きる。

 嫌な夢を見た。()()()()()()


『テオドールさん、どうしました?』


 スピーカーから職員の声が聞こえる。

 本当に、二十四時間監視されているのが腹立たしい。

 夢くらいまともに見させてくれ。

 でなきゃ、何のために──。


 あの時、母さんはなんて言ってたんだっけ……。


「…………」


 行かなければ。

 母さんが望んだ、あの場所へ──。




 

(まさか、リアさんとアルフさんのところに……!?)


 ポポロムは焦ったが、すぐに落ち着きを取り戻した。

 テオにはこういう時のためにGPSをつけてあるので、居場所はすぐにわかる。


「GPSの画像と、該当する住所を送ってください。僕と、テオさんのご家族で追いかけます」


『は、ハイ……!』


 スタッフにそう伝えると、着替えている間にスマホにデータが送られてきた。

 開くのが怖い気もするが、ためらっている場合ではない。

 画像は、ポポロムも知っている土地の一点を赤く示していた。


「ここは……まさか……」


 慌てて隣のカルステンの部屋に飛び込み、揺り起こした。


「う、ん? なんだ……?」

「叔父さん、テオさんが逃げ出したそうです。今からアルフさん達と追いかけます!」

「えっ!?」


 さすがのカルステンも、一気に目が覚めたようだ。


「俺も連れて行ってくれ。場所は……!?」


「自殺の名所……ヘイロ岬です……!」


 

 二人は慌てて車に乗り込む。ヘイロ岬までは、数十分の距離だ。

 道中で、カルステンからアルフレッドへ連絡を入れてもらった。その後、もう一件どこかへ連絡をしているようだった。



 ポポロムとカルステンが現場に到着する。丁度夜が明けて空の色が幻想的だった。海風がひんやりとして、ブルっと身を震わせる。

 少し遅れてリアとアルフレッド、そして警察官のディルクがやって来た。カルステンが連絡をしていたのはディルクだったようだ。


「ったく、なんで俺まで……」

「一市民の命かかってんだ。文句言うな」


 ディルクとカルステンが言い合っているが、それどころではなかった。


 リアは助手席から飛び出して、真っ先に岬の方へ駆け出した。

 その方向にはテオの姿。テオは、海の向こうを見つめていた。

 こんな時でなければ、朝日が美しい場所だ。


「テオッ!」


 リアが叫ぶと、テオはゆっくりとこちらを向いた。

 そして、いつものような笑顔を浮かべる。


「良かった。みんな、来てくれたんだ」


 リアもアルフレッドも、心配そうにテオを見る。

 ここがどういう場所か、全員わかっているからだ。

 テオは微妙な位置に立っている。

 最悪の事態だけは避けたいところだった。

 

「テオさん、病院に戻りましょう」

「ふふっ。言われて、素直に戻ると思う?」

「思いませんね」


 ポポロムは極力穏やかに接したが、さらりと躱された。

 監視の目を掻い潜って病院を抜け出したくらいである。

 何かよほど強い思いがあってここに来たに違いない。


 今まで大人しくしていたのに、急にこのような行動に出るなんて。

 ……いや、もしかしたら、彼の中では急な事ではなかったのかもしれない。

 ポポロムは医者として、テオを導く義務がある。

 そう言うと、テオはいつもの笑顔を崩した。


「ねぇ、じゃあさ。なんで俺は、こんなところにいるの?」

「え……?」


 “なんで”?

 自分の意思でここへ来たのではないのか? と(いぶか)しんだ。


「俺は、良くなっているはずだよ。先生の言う通り、投薬もして……。なのにさ、なんでかな……」


 苦しそうに表情を歪め、


「良くなってると実感するたびに、母さんが出てくるんだよ……」


 初めて母親の話を吐露した。


「ねえ、先生。俺、まともになってるんだよね……?」


 胸の辺りで病衣を握り締め、今にも(くずお)れそうになりながら、

  

「先生の言う、“まとも”になってるんだよねぇっ!?」


 テオはついに悲痛な叫びを上げた。

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