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【完結】偽りのトリアーダ〜この愛から逃れられない、義兄弟の歪な愛情〜  作者: 草加奈呼


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#20.5 天罰     sideアルフレッド


 12年前、家族で出掛けていた帰り道。

 少し後ろを歩いていたリアの姿がない事に気が付ついて振り返る。

 リアは、教会の前で歩みを止めていた。

 ちょうど結婚式が執り行われており、新郎新婦が来賓のフラワーシャワーを浴びて教会から出て来ていた。

 リアはそれに見惚れいていたのだ。


「どうした、リア? ああ、結婚式か……」

「花嫁さん、素敵ですね」

「そうだな」

「私も、いつか素敵な花嫁さんになれるかな……?」


 リアは、少し寂しそうな表情をした。

 俺もゴンドル族の事情は父さんから聞いていたから、リアの気持ちはわかっているつもりでいた。


「リアなら、素敵な花嫁さんになれるよ」


『無理だよ』なんて、絶対に言えなかった。

 だって父さんは、そのために今頑張っているから。


「でも私はゴンドル族だから、きっと結婚できません」

「そ、そんな事はないよ」


 気休めかもしれない。

 でも俺は、リアの花嫁姿を見てみたかった。


「もし……もし、誰もお嫁にもらってくれなかったら……お兄様が、もらってくれますか?」

「えっ……!?」


 頬を赤く染めて、俺の顔を覗き込むようにして言われた。

 リアはとりわけ美人というほどでもなかったが、素直で愛嬌があった。

 優しく気立てのいいリアは、規制がなければ本当にいい花嫁になっただろう。

 血の繋がりはないのだから、結婚しても問題はない。

 リアが大人になり、純白のウェディングドレスを身に纏う。その隣に、俺がいたら……。

 柄にもなく、ドキドキしてしまった。


 しかし、その時俺は気づいてしまったのだ。

 少し離れた場所で、テオがこちらを窺うようにじっと見ていたのを。

 

「……ハッ、ダメだ!」

「え……?」

「リア、兄弟では結婚できないんだ」

「そうなんですか……」


 すかさず嘘をついた。

 テオに、俺の気持ちを悟られるわけにはいかない……。


 「なになに? なんの話ーー?」


 テオが無邪気な笑顔でやって来ると、リアが説明をする。

 背中に嫌な汗をかいた。


「僕も姉さんと結婚するーー」

「テオ、兄弟では結婚できないんだって……」

「そうなんだ……ざんねん」


 テオが納得してくれて、ホッとした。

 ハタから見れば、仲睦まじい兄弟に見えるのだろう。

 リアはテオの、この狂気にも似た内面に気づいていない。

 両親でさえ気づいているかどうかわからない。

 俺はこの時からリアを意識し始めていたが、テオの存在ですぐに蓋をしてしまった。


 俺が我慢すれば家族の平穏は保たれる。

 そう、思っていたのに。


 我慢など、ずっとできるはずがなかったんだ。

 俺も、テオも。

 だからあんな事になってしまった。




 たくさん傷つけたのに。

 傷つけられたのに。

 目の前にいるリアは尚も俺に歩み寄ろうとする。

 

「私を憎む事でしか愛せないなら、それでもいいです。

 私は、すべてを受け止める覚悟で戻ってきました」


 愛せない。

 愛する事が怖い。

 また奪われることが、また傷つけてしまうのが、怖い。


 だから俺は、リアを突き放す事しかできなかった。

 

「ダメだ! ポポロム先生の家にお世話になる方が、おまえのためだ!」

「ポポロム先生とは、もう終わったんです!」


 本心であったはずなのに。

 リアの言葉を聞いて一瞬固まってしまった。


「…………ん?」

「……えっ?」


「ポポロム先生とは……  終 わ っ た ? 」


 リアが「しまった」という顔をしている。

 気づけば俺は、リアの肩を強く掴んでいた。

 リアが少し怯えていることも気に留めず、以前の調子で接してしまっていたのだ。 


「どこに触れられた!?」

「えええええええっ!? そ、そんな恥ずかしい事、言えません!!」

「恥ずかしくて言えないような所なのか!?」

「お兄様ー!?」


 まさか、すでにそんな関係になっていたとは。

 いや、密かにそれが狙いだったのではないのか、俺は。

 同族同士で結ばれれば世間に後ろ指さされる事もない。

 リアがそれで幸せになるのであれば、と思っていたのに……。


「わかった、言えないのなら全部愛してやる」

「えっ?」


 無意識にリアを抱き上げて寝室へ向かっていた。

 ベッドへ降ろし、以前のようにリアに跨るような形で見下ろす。

 なんてことだ。ここへ来て欲が出てしまうなんて。

 帰ってこなければ諦めもついた。

 俺の前に再び現れただけでも驚きだった。

 それどころか、覚悟を決めて来たなどと言われたら……。

 俺はもう、自分に嘘がつけなくなる。


「どうやら俺はとても……嫉妬深いようだ……」


 今の俺は、どんな顔をしているだろうか?

 きっと情けない顔をしているだろう。

 そんな俺を見て、リアは「ふふっ」と笑った。

 しかしその笑顔は、すぐ涙に変わる。


「なっ……。俺はまた、おまえを傷つけてしまったのか……?」


 ちゃんと言わなければ想いは通じない。

 今度こそリアの気持ちを聞かなければ。

 リアは、涙を浮かべながら首を横に振った。


「嬉しいんです……。初めて、お兄様に言われました……。『愛してやる』だなんて……」

「い、言ったか……?」

「言いましたよ! もう、録音しておけば良かった……!」

「それは、やめてくれ……」


 二人で苦笑しながら、横になってベッドの上で抱きしめ合う。

 しかし、しばらくして手が震え出した。

 せっかく気持ちが通じ合ったのに、触れる事もできないとは……。

 

 なんとか震えだけでも止めようと拳を強く噛む。

 血が滲み出てきたが、こんな痛みはどうと言うことはない。

 すると、リアがその手をそっと取り、傷口に触れないようにキスをしてきた。


「お兄様、無理はしないでください。私は、このままでも充分幸せです。それに……」


 まるで今までの仕返しをするように、口付けの音だけが部屋に響く。

 リアから触れられる分には大丈夫だなんて、思ってもみなかった。

 口付けしながら、寝間着のボタンを外される。

 こんなに積極的になるとは、以前のリアからは考えられない。


「だって、お兄様が私に触れられないなら、私が触れるしかないでしょう……?」


 愛らしい顔をして、なかなかに妖艶な笑みを見せる。


「それは、そうだが……」

「お兄様に拒否権はありません」


 言いながら、リアは俺の上に跨ってきた。


「な、何を……?」

「形勢逆転、です。覚悟してくださいね♪」


 するすると寝間着を脱がされていく。

 きっとこれは、天罰が下ったのだ。

 その罰は、甘んじて受けよう。


 観念して、全てをリアに委ねた。

 リアはひんやりした手を俺の胸の辺りに添えて、そのまま下までスーッと撫でるように移動させた。

 ゾクゾクと体が反応する。リアの手が触れるたびに熱が伝わる。

 これは、すべて俺がリアにしてきたことだ。

 しばらくして気持ちが高揚してきたのか、リアはネグリジェの裾を持ち上げて腰を落としてきた。

 

 俺たちは今までの時間を取り戻すかのように、長い間繋がり合った。

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