表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

8

 異世界。

 令和の日本とはまるきり異質の幻想世界。されど現実世界。

 死んだはずの佐藤は、そこに立っていた。女神が語りかける。



「あなたに強力なスキルを授けましょう」


「いりませんよ、女神さま」



 痺れた。

 痺れに痺れた。

 それでこそ佐藤。それでこそ勇者。それでこそ元好敵手。

 勇者はスキルなどなくても勇者なのだ。佐藤はスキルなどなくても佐藤なのだ。


 手を握った。高校生の手、されどいずれは勇者とならん手。

 いや、既に彼は勇者であった。女神にとって、確かに勇者であったのだ。



 スキルを持たぬ佐藤は突き進んだ。一直線、魔王城へ。

 無論、一筋縄ではいかぬ、だが構わない。一筋でいかぬなら二筋、三筋と縄を増やせばよいだけだ。

 時に傷つき、時に悩み、それでも着実に仲間を増やして、佐藤は進む。勇者への道を。


 敵は魔物だけではない。時には人すら立ちはだかった。

 政治的思惑にも巻き込まれた。権力者にも利用された。時には刃を向けられた。

 その度、彼は言うのだ。あの文言を。爽やかな顔で。



「問題ありませんよ、みなさん」



 佐藤の前に、問題なし。

 味方も敵も、彼の虜となっていく。

 女神は、少し寂しい気持ちになっていた。

 私だけが知っていた佐藤だったのに、と。

 彼女の些細な、可愛らしいわがままであった――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ