表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6

 先の失敗で、女神は考えを改めた。

 佐藤の圧倒的フィジカルを前に逃げ出した自身を、恥じていたのだ。

 彼を葬るには、その強靭な肉体を砕いてこそでなければならぬ、そうでなければやりがいがない。

 かくしてある方法を考えた。


 現代日本から異世界への転生が可能であれば、その逆もまた然り。

 そう、異世界から凶悪な魔物を転生させるのだ。

 凶悪な魔物とは――黒龍。


 通学中の佐藤の前に、黒き巨体が現れる。あまりに邪悪なその表情。

 流石の佐藤も、突然の出来事に震えた。あの佐藤が、震えたのだ。

 しかし女神は見抜いていた。この震えは、武者震い――。

 

 獰猛な爪で切り裂かれる佐藤。肉が裂け、血塗れになる。

 凶悪な歯で噛み砕かれる佐藤。骨が軋み、うめき声をあげる。

 灼熱の炎で炙り焼かれる佐藤。臓腑が爛れ、白目をむく。

 なんのスキルもない高校生が、勝てる訳がなかった。


 しかし佐藤は、生きている。

 確かに勝てぬ、しかし負けもせぬ。

 黒龍が動揺した。こいつは何者なのだ、と。



「問題ありませんよ、コドモオオトカゲさん」



 佐藤は二重に間違っていた。

 眼前にいるはコドモオオトカゲではなく、黒龍である。

 そして正式にはコドモオオトカゲではなく、コモドオオトカゲである。

 真の勇者は、天然のユーモアすら発揮するのだ。


 その優しい声音に、黒龍の目が、少しだけ優しくなった。

 他者を屠るだけが魔物ではない。全ての生き物に善性があるのだ、そう思い知らせてくれる目であった。


 かくして黒龍は飛び去る。度重なる女神の敗北。

 負ける度に、女神の胸は高揚する。次こそは、次こそは。


 しかし、時間がなくなっていた。

 世界の滅亡が、近かった。

 女神は、選択を迫られる――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ