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女神は思う。何が駄目だったのか。
2tトラックでは軽すぎただろうか。ならば安易ではあるが、確実な改善方法がある。
女神は10tトラックを突っ込ませた。通学中の佐藤に、である。
佐藤は跳ねられた。跳ねられた上にタイヤですり潰された。その後バックで念入りに地面へ擦り付けられた。
間違いがないよう、最大積載量を超過した荷も積んでいる。道路交通法違反――しかし世界の危機、大事の前に小事の違反など女神は意に介さぬ。
しかし佐藤は、生きていた。
満身創痍――体中の骨が砕け、穴という穴から血を吹き出している。しかし彼は立っている。
トラックの運転手が血相をかえて降りてくる。佐藤は言い放つ。
「問題ありませんよ、運転手さん」
かくして運転手の人生は守られた。しかし過積載で違反点数がつけられた。
そのうえ女神の世界は守られていない。魔王は暗躍し、邪悪ははびこり、政治は腐り切っていた。
女神は頭を抱える。佐藤は滅茶苦茶になったバッグを抱え通学する。体中の骨が砕け、穴という穴から血を吹き出しても止めぬ通学。
その姿はまさに「勇者」。彼にとっては通学という目標こそ全て、それ以外には目もくれぬ。一点の目標へ突き進む王者の歩み。
女神は驚愕とともに、決意を新たにした。必ずやこの学生を殺し、転生させんと。
女神と佐藤の闘争は始まったばかりである。