10
一年前の、あの時の通学路。
同じ時間、同じ場所に、佐藤は戻ってきた。
そうだ、これが自身の望んだ世界だ、早く学校へ行かなければ。
確か今日の一限目は数学だったな。そんなことを思い出しながら。
――突如佐藤は、轢かれた。
10tトラックであった。
運転手が降りてくる。
血相を変えて? 否、その顔は不敵に笑っている。
運転手は――女神であった。
最早傷ひとつ付かぬ佐藤も、流石に動揺する。何故女神さまが、ここに?
そんな無敵の佐藤を前に、彼女は思いの丈をぶつけた。
ただただシンプルな、思いの丈を。
「あなたを……転生させたい」
佐藤は、全てを察した。
女神の想いが、その瞳から、声音から、溢れている。
かくして、全てを受け止めてきた佐藤は、言うのだ。
あの文言を、いつもの調子で、あの温かさで。
「問題ありませんよ、女神さま」
そこには確かな「関係」があった。
名状しがたき関係――友情とも、恋愛とも違う。しかしそれらより遥かに尊い関係。
かくして女神は今日も佐藤を殺さんべく策を練り、佐藤は勉学に励まんべく通学をする。
彼らの美しき闘争は、何人にも止められるものではなかった――。
~Fin~