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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第4章 聖戦開始(ᚷᚢᛖᚱᚱᚨ ᛊᚨᚲᚱᚨ
42/126

第37話 レアットという漢(ᚱᛖᚨᛏᛏᛟ)

 護ってやる為とはいえ、実質()()()()で戦争した暗黒神ヴァイロ・カノン・アルベェリア。

 白い女神の正体は150年前、最先端技術の(すい)を集めForteza(フォルテザ)を造った黒い踊り子。レヴァーラ・ガン・イルッゾと云う謎を残すも、終わってみれば快勝。


 それでも浮かぬ顔でカノンの守り神はバンデの館と国境線の守備を頼り甲斐(がい)ある戦の天秤(てんびん)──シアン・ノイン・ロッソに任せ、一度自分の(やしろ)へ帰り行く。


 不機嫌な態度を隠さずヴァイロを見送るシアンと、彼女に任された亜人達の群れ。

 シアンに取って昔の友人は暗黒に染まり往く為、陽の当たらぬ()()()だらけなカノンに戻るのを彼女は知り尽くしていた。


 金さえ惜しまず払えば戦争を対岸の火事に出来ると思っている気楽なフォルデノ王国の大人達。

 その懐頼(ふところだの)み──カノンに()む金がない若者達を兵として(やと)うヴァイロ。

 第一の徒、アギドに頼んでいた義勇兵(ぎゆうへい)達の様子(うかが)いに出向いたのだ。


 ──自分の子供達(弟子達)が殺される悪夢を再現したくないのは判る。然し夢に出た黒い竜(ノヴァン)を自ら錬成(れんせい)。それ処か()()()()()以外も巻き込んでどうする?


 シアンは(かしこ)い女性だ。

 我が友(ヴァイロ)は自ら千尋(せんじん)の谷底を、突き進んでいる様に紫の瞳(シアンの目)に映るのだ。彷徨(さまよ)える暗黒神(ヴァイロ)──『(さい)は投げられた。もう後は引けない』聞いた訳ではないが、()()()()


 さて──地元カノンである。

 黒い神様(ヴァイロ)の神殿は大樹の上の小さな家(ツリーハウス)


 金で雇った兵隊の宿(宿舎)()()()()より潤沢(ぜいたく)に思えた。『人が命を張らせるには見合う路銀(ろぎん)が不可欠』亜人達(デミヒューマン)()すバンデの声が聴こえる気がした()()()ヴァイロ。


 対価(サラリー)なくして人は動かぬ、明日には命を堕とすやも知れない傭兵ならば猶更(なおさら)


 自分の影から成した黒い竜(ノヴァン)同棲者(どうせいしゃ)リンネを共連れにカノンへ降りるヴァイロを地上から見上げるのは、一足先に帰っていたアギドとミリアの二人。


 ──がっ、何やら知らぬ人影が此方(ヴァイロ)(にら)んでいるのが見えた。

 腕組み胸張る大柄(おおがら)な男。だが男の身体より巨大な剣と云うより、まるで鋭く(とが)った岩の様なものがより際立つ。


 ノヴァンが翼はためかせ地上へ降り立つ。背中から飛び降りるヴァイロ、小さなリンネの(からだ)をを受け留めた。


「──何だ彼奴(あいつ)は?」


 未だ此方を(にら)む視線で追い(すが)る大男を背にアギドとミリアへ耳打つヴァイロ。


「義勇兵候補だ、だが俺の云う事を全く聞かない。『暗黒神(ヴァイロ)を出せ』の一点張りなんだ」


 アギドは未だ16歳の少年──。

 然も背丈(せたけ)が小さい分、より損をしていた。『子供相手じゃ話にならん』と小馬鹿にされ続け、その(たび)魔法剣士としての腕前見せつけ黙らせる日々。いい加減飽き飽きしていた。


 ズッシャンッ!


 (とが)った岩の様に思えた物を地面から()()した大男。『待っていた』云わんばかりの悠々(ゆうゆう)しさでヴァイロに(せま)り征く。(からだ)より巨大な物は剣、然し刃こぼれ激しく斬る役割を捨てていた。


 そして何より両手剣(グレートソード)児戯(じぎ)に思える笑えない得物(武器)を片手で楽々、肩に乗せ地面を蹴り暗黒神(ヴァイロ)の背後を狙う大胆不敵(だいたんふてき)


 だが大振りな剣だ。どれだけ破壊力極まるとも、避けるヴァイロ──()()()()()()。地面に叩き付けられた巨大剣。局地的な地震を起こす。


「待ってたぜ! アンタが()()()()だな! 俺様はレアット! このガキ(アギド)相手に入隊試験を受けろ!? くっだらねぇ、くだらねぇよ……俺はアンタと喧嘩(けんか)がしてぇ!」


 物理法則をガン無視した剣で、神でなく人であるヴァイロを指し(あお)るレアットと名乗り上げた漢。(気合)だけで空気を揺らした。


御覧(ごらん)の有り様だ。俺やミリアの話は一切聞かない。お前が帰って来るのを宿舎にも入らず仁王の様に待ち続けた」


 アギド──。

 腹立たしさ(あふ)れた告げ口。大層苛立(いらだ)(まゆ)(ひそ)めた顔を師ヴァイロへ寄せた。


 ──ほぅ……面白い奴。


 ヴァイロは弟子の言葉を額面(がくめん)通りに受け取らない。

 入隊試験を(かたく)なに断り続け、勝手に宿舎へ入れぬ約束は守り抜いた次第。薄汚れた黒頭を振るレアットに言い知れぬ好意を抱いた。


 ヴァイロ、何しろ此処最近、()()として振舞うしかなき面倒事にかなりウンザリしていた。こういう理屈無用な(やから)相手は実に久しい。心地良い風が吹き抜けるのを感じた。


紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)!」


 天へ右手を(かざ)すヴァイロが叫ぶ。赤い霧が瞬時に集まり、(いびつ)な赤い両手剣(グレートソード)の形を瞬時に成した。


「ムゥッ!?」

「ヴぁ、ヴァイ?」


 この喧嘩に見栄張る(みえはる)レアット、何処からともなく出現した赤一色(赤霧の剣)に走り抜けた戦慄(せんりつ)


 一番弟子のアギドでさえ師ヴァイロが愛刀、紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)を召喚する姿を久しぶりに見た。本気でこの男を相手取る気なのか。


 ブンッ!


「レアットとやら、見上げた根性だな。だが今()()()? この紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)、霧に変わり敵の殺意を斬り裂く魔剣! お前のデカブツで此奴とやれるか。ふふっ……」


 次はヴァイロ自ら紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)をレアットの喉元(のどもと)へ向ける挑発。楽し気な(わら)いを手向(たむ)けた。然も態々(わざわざ)魔剣の本性を(さら)した。


「ア"ア"ッ!? やってやんよッ!」


 レアット、ヴァイロの冷笑に一瞬(ひる)んだ己を振り払うの如く、さっきよりも高く舞い跳ぶ。巨大剣を棒切れの様に天へ(かか)げた。(すき)だらけの剣──なれど気を吐く()()


 ヴァイロはリンネとミリアへ鋭い目線で合図を送り届ける。

 頼もしく(うなず)くミリア、驚いたものの覚悟決めたリンネ。


「ラァァァッ!!」


 声で大気震わす御業(みわざ)なら誰にも(おと)らぬリンネが敵味方双方構わず、鼓膜(こまく)(つらぬ)かんばかりの大声を放つ。神竜ノヴァンでさえ嫌な顔を(そむ)けた。


「うぐッ!? な、なんだァ?」


 まるで音の嵐を受けた格好のレアット、これには(たま)らず振り上げた剣を(ろく)に下せぬ醜態(しゅうたい)を晒した。


「ドラゴ・スケーラ、暗黒神(ヴァイロ)の名に於いて来たれ新月の影。陽の光すら通さぬ衣を我に与えよ── 『新月の守り手(ベスタクガナ)』!」


 そんな間隙(かんげき)()い、暗黒神(ヴァイロ)最強の防御呪文(スペル)──新月の守り手(ベスタクガナ)を唱えたミリア。オレンジ色の瞳を光らせ、無礼千万(ぶれいせんばん)なる男の元へ駆け込み拳を振るう。


「グハッ!? こ、これが女の拳ッ!」


 迂闊(うかつ)に高く跳ね過ぎたレアット、格好の的。リンネの大声に揺さぶられ巨大剣を振るい損ね、落ちた所で待ち受けたミリアの拳がレアットの鳩尾(みぞおち)を直接(なぐ)る。血反吐(ちへど)を吐かせた。


 新月の守り手(ベスタクガナ)の硬さを拳に集めたミリアの鉄拳が、レアットをくの字に曲げ、驚愕(きょうがく)を呼び込む。


「レアット──俺とサシで()りたきゃ先ずこの実に可愛い()()を倒してからだ。出なければ話にならんぞ」


 ヴァイロ・カノン・アルベェリア会心の笑み。至高の愉悦(うかつ)を浮かべた。

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