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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第4章 聖戦開始(ᚷᚢᛖᚱᚱᚨ ᛊᚨᚲᚱᚨ
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第36話 青空に浮き沈む白と黒(ᛊᚢᛊᛈᛖᚾᛞ)

 戦とは時の運──。

 誰が云ったか知らぬが、罪深き争いを()狭間(はざま)へ置き換え出来る人ならではの(おご)りが(にじ)む言葉だ。


 兎も角(ともかく)戦之女神(エディウス神)は初戦敗退。森の都ラファンへ建造した砦へ帰還(きかん)をし始めた。


 全く以て負けた気がせず、振り上げた戦意を何処へ降ろすか戸惑(とまど)い隠せぬ修道騎士レイシャ・グエディエル。誇り高き白い鎧(フルメイル)白い神竜(シグノ)が翼で起こす風受け泣いた(響いた)


 他の賢士(けんし)や司祭達とて同様。己が信じる女神が敵の黒い神(ヴァイロ)(なご)やかに会話した挙句(あげく)『逃げろ』と理不尽を言い渡された。


 心中穏やかでいられる訳がなかった。地上を征く連中は黒い竜(ノヴァン)吐く炎(ブレス)荼毘(火炙り)に付された(の刑を受けた)(かたき)を討てぬ(いきどお)り。


 ヴァサ……。

 戦之女神(エディウス神)の一番弟子、賢士(けんし)ルオラを乗せた白い竜(シグノ)白き師匠(エディウス)の駆るシグノへ風(とどろ)かせ近寄る。


 ルオラが戦之女神(エディウス神)のシグノへ飛び移った。他の兵士達、普段はルオラの()は女神の代行と信じ抜き、全てに於いて優先してきた。


 されど『また下々(しもじも)には内緒の話かよ』例え声に発せずとも猜疑(さいぎ)の念が(あふ)れ返えった気分が視線と成ってルオラに降り注ぐ。

 

「……」


 ルオラの(なま)めかしい遊女の如き姿。(さら)した肌身に、自身より下の連中の気分が刺さり自ずと知れた。構わずエディーの背中に(すが)り付き抱いた。


「──何用か?」


 ルオラへ禁断の愛を毎夜の如く注ぎ(ささ)げ合う白銀の少女(エディウス)微動(びどう)だにせず氷の質疑(しつぎ)

 歳上であるルオラの方が肩震わす。普段自分の掌の上で好きに転がせる可愛い娘とは別人の空気を感じ取る。寒いのは冬の冷たさではなかった。


「エディ……エディウス・ディオ・ビアンコ。さっきのやり取りは完全に貴女じゃなく()()()そのものだった。一体どういうつもり?」


 ルオラ──(おび)えながらも声を(はげ)まし応えを求む。語る迄もなく敵の暗黒神と交した会話の全容を問いている。正体を自ら『レヴァーラ』と明かした()だ。


「……」


護りの女神(ファウナ)の魔法を堂々使った次は、まるで今の自分を捨てた様な言いぶり。今の貴女は戦の女神──白銀の少女エディウスよ」


 本来仕えるべき神の背に浴びせる罵声(ばせい)──実の処ルオラ当人がこの敗走の最中、最も憤慨(ふんがい)し切っていた。


 彼女(ルオラ)に取って戦之女神(エディウス神)は世界で唯一無二、愛慕(あいぼ)手向(たむ)けた白の少女でなければ赦し難い。

 自分に伺いなく身勝手に()()()かせやしない想いを告げる。気がつけば(にじ)んだ涙を風が散らした。


「貴様とて堂々叫んだ(重ねた)ではないか……『レヴァーラに(とら)われるな』とな。──知っておろう? 我はエディウスでもレヴァーラでもない。ましてや金色(こんじき)の髪たなびくファウナでもないただの(虚ろ)だ」


 この場にルオラ以外の立会人が居れば意味を(かい)せぬ白銀の少女から出た台詞()

 ()()()()()が語る闇。白い長髪が風を運んで(掴んで)散らす。その姿──白はおろか闇でもない虚無(きょむ)を抱かす。


 だが存在が(うつ)ろな者とは到底思えぬ(きら)めく白銀も、同時に振り撒く神格の(にじ)みがルオラの魂を揺さぶるのだ。生まれ(輝き)が死と同義である新星に似ていた。


「ルオラよ……」

「え……」


 此処で不意に戦之女神(エディウス神)の声に魂の温かみを感じたルオラ。涙(にじ)ませたまま紫の瞳広げた顔を上げる。


「信じてくれ──今はそれしか言えぬ。我はエディウス、お前の支えなくては、何も成せぬただの少女だと」


 ──嗚呼……エディ。心の底からお(した)い致します。


 ルオラ──ただの一言で救済(きゅうさい)された想い。

 見た目や名前、記号で(はか)らず心で己の存在を信じ抜いて欲しい女神の気心が染み入るのを覚え安らぎへ堕ち、後は小さな背中抱き締め(からだ)を預けきった。


◇◇


 白の編隊飛行(エディウス軍)が地平線の彼方(かなた)へ消え失せるまで目撃果たした暗黒神ヴァイロ・カノン・アルベェリア。 

 独りぼっちの空で憂鬱(ゆううつ)に堕ち込むのだ。


「──戦の女神の正体がレヴァーラ・ガン・イルッゾ?」


 (まゆ)(しか)めた悩めるヴァイロ。戦闘中揺るがなかったテンガロンハットを震わし首を(ひね)る。白銀の少女が残留(ざんりゅう)させた新たなる謎掛け。


 戦之女神(エディウス神)が扱う森の女神(ファウナ)の魔導──魔術(Magic)の種が消えない。謎の答えを問い(ただ)せば、意味不明瞭(ふめいりょう)な言葉で返される理不尽の様相。


 ──レヴァーラ・ガン・イルッゾはファウナの力を借り、Forteza(フォルテザ)を造った女性。


 アドノス島に住まう人々であれば誰もが知る歴史の教科書。

 踊り子の体幹(たいかん)を活かす剣術を得意としただけの女性の名前を出された。


 (いく)らファウナが恋()がれたとはいえ、ファウナの魔導をレヴァーラが引き継ぐ理由に成り得る筈がない。子供でも判る理屈。


 やがて引力の(くさり)を切っていた重力解放(ヴァレディステラ)の効力が徐々に薄れ始め、ゆるゆると始まる自由落下に身を(ゆだ)ねるしか能のない黒い神(ヴァイロ)。先程迄の圧力も(なり)を潜めた。

 

 悩める暗黒神(ヴァイロ)がゆっくり空から降って来たちょっと間抜(まぬ)けな絵柄。地上で待ち受けるシアン達の目にも止まった。


「どうした()()()、圧倒的勝利なのに何とも()の抜けた顔だな」


 シアン・ノイン・ロッソ、苦笑いのご挨拶(あいさつ)を手軽な(あお)り共々送って様子を(うかが)う。

 相も変わらず灰色の頭を(ひね)るだけで何も応じぬヴァイロの無愛想(ぶあいそう)


「ヴァイ──まるで戦之女神(エディウス神)の正体を(たず)ねたら『レヴァーラ』だと云われたほど酷い顔だな」


 これは何とも白々(しらじら)しいアギドからの煽動(せんどう)

 (はる)か空の上での会話を地上から()()()したかの如き直球(台詞)


 これには師匠ヴァイロが酷く嫌気(いやけ)の差した態度を送る。

 アギドが何故『言わずもがな』なのか、ヴァイロもそれとなく察しているのだ。思わず溜息。


「はぁ……アギド。お前の言う通りだ。あの綺麗な()()()『我はレヴァーラ』と抜かしやがった」


 首を(すく)め一番弟子に話を合わせるヴァイロ。この弟子はファウナ・デル・フォレスタの聖地Forteza(フォルテザ)で何かを(つか)んだ。

 今しがた自分が聞いた言葉を繋ぎ合わせれば、限りなく正答に近いものが導き出せるのかも知れない。


「そうか……戦之女神(エディウス神)の中身はファウナ様でなくレヴァーラ」


 眉間(みけん)を掴み物思いに(ふけ)るアギドの仕草。


 この蒼い少年はForteza(フォルテザ)の港でファウナ神の石像を(おが)んだ。

 その(とき)、降りて来た()()()の鳥達の微笑ましいやり取りに、ほぼ確信に近しい答えを見つけた。


 ニヤリッ……。


「レヴァーラ・ガン・イルッゾが護りの女神(ファウナ様)を取り込んでいたとするなら?」


 口角上げ皆を見渡したアギド少年──あくまで想定。だが総ての点が線成す模範(もはん)を告げる。

 アギド少年が見た鳥達の裏側──ファウナ像を止まり木にした白銀の少女と、ファウナを最後まで愛し抜いたレヴァーラが肩並べる姿を想像した。


 そして師ヴァイロが想像を依り具現化(ぐげんか)し得る対価(たいか)を手に入れて来た。冷笑せずに要られぬアギドを呼び込んだ。

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