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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第4章 聖戦開始(ᚷᚢᛖᚱᚱᚨ ᛊᚨᚲᚱᚨ
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第35話 ”未だ”溶け合う黒の思惑(ᛞᚨᚱᚲ ᛁᚾᛏᛖᚾᛏᛁᛟᚾᛊ)

 怠惰(たいだ)なフォルデノ王国と、とんだとばっちりを受けた森の都ラファン。

 そして暗黒神ヴァイロ・カノン・アルベェリアが護りしカノン領の境界線付近にて繰り広げられた()()()()()闘争の序幕(じょまく)


 真冬の寒空(シアン)色の下、黒側の手際(てぎわ)良過ぎる圧勝に思えた。

 されど戦之女神(エディウス神)軍勢の内、丘を征く連中は名もなき雑兵(ぞうひょう)ばかり。

 あくまで本陣は白い神竜(シグノ)自体を生きる御旗(みはた)(かか)げた様相思わす空の軍隊。


「──戦之女神(エディウス神)、掛かって来ませんね?」


 コボルト隊の長、カネランが流暢(りゅうちょう)な人語で敬意(にじ)ませる声。自分達の元に翼の風、巻き起こしながら降りゆく飛竜(ワイバーン)を駆るシアン・ノイン・ロッソへ(たず)ねた素朴(そぼく)なる疑問。


「警戒は必要だが、あれだけ派手に敗れた。私が彼女の立場(エディウス)なら顔向けすら出来ないな」


 未だ快晴の空に雲を(よそお)戦之女神(エディウス神)()()(まぶ)し気にシアンが見上げた。


「それにしても皆、初の指揮下で良くやってくれた」


 笑顔こそ見せないが、(ようや)く言葉じりが(ゆる)んだシアンから謝礼(しゃれい)の言葉。

 (くつわ)を並べるには時間が足りな過ぎた亜人達(デミヒューマン)がその様子に、一息つくのだ。


 シアンも亜人達とて別種族と共に初の出陣。何れも複雑な想いを抱えていた。


 事始めが巧く運んだ結実の安堵(あんど)が皆を包む。


「とんでもございません。シアン殿の(あざ)やかな手腕(しゅわん)あったればこそ」


 巨躯をシアンの足元へ滑り込ませ、深々と頭を下げるカネラン真実の感謝。大きな肩を揺らし喜ぶ。


「それに……」

「──?」


 次は同じ空の上でも全身()()()()()()が腕組み堂々胸張る側へシアン、紫色の瞳を流し目で送りゆく。少し(さみ)し気感じる視線。


 言い(よど)指揮官(シアン)の言葉に疑問の表情を浮かべたカネラン(犬の顔色)


()()だ──()み切った青空だと云うのに、まるで頭痛を酷くする暗雲立ち込めた様な人の圧(プレッシャー)だ」


 シアン・ノイン・ロッソは、自分の指揮などまるでアテにしてない態度の()()()()()の裏側を(のぞ)いた気分──心の片隅(かたすみ)で頭を抱えた。


 この戦場一歩たりとも動ぜず、目印のテンガロンハットさえ揺らさぬヴァイロが支配し切っていた。

 まるで彼の下へ居る()べての者共へ重力の(かせ)を与えているかに思えたシアン。


 ──然も彼奴(あいつ)、無意識でこの状況を成している。あれではさしもの戦之女神(エディウス神)とて手も足も出せまい。


 シアン、言い知れぬ不安に独り駆られる。心優しき暗黒神(男友達)偶像(ぐうぞう)が揺らぐのを感じた。


 ヴァサッ……。

 話の渦中(かちゅう)に居た黒い神(ヴァイロ)の隣、少し距離を置いた位置へ白銀の女神(エディウス)を乗せた白い神竜(シグノ)対峙(たいじ)するのが地上からも見えた。再び張り詰める緊張の糸。


「──参った、今回は我の完敗。素直(すなお)に認めようぞ」


 口角上げた戦之女神(エディウス神)から意外なる会話の切り出し。

 一瞬愛刀である紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)を赤霧の中から握り取ろうとしたヴァイロ、落ち着きを取り戻す。


「見事な()の出で立ち、今日ばかりは敬意(けいい)を表する。──処であの少女の様なハイエルフ、雷神(カドル)を使えるとは恐れ入った」


 ヴァイロ、赤い目を見張り戦之女神(エディウス神)が此方へ寄せた真意に気づいた。

 シアンの懐刀(ふところがたな)、ハイエルフのニイナが唱えた呪文(スペル)雷神(カドル)』をこの少女じみた女神は気に掛けていたと知り抜く。


 ヴァイロとて雷神(カドル)呪文(名前)は知っている。されど暗黒神ヴァイロ直筆(じきひつ)の魔導書には記述がないのだ。

 

 雷神(カドル)呪文(スペル)は、ヴァイロ自身が従属する神愛(しんあい)(あふ)れた女神。ファウナ・デル・フォレスタが発祥(はっしょう)

 ヴァイロの書いた術式とて似通った稲妻系の術式は在るのだ。


 ──戦之女神(エディウス神)雷神(カドル)出自(しゅつじ)を知っている!


 一番弟子アギドと共に想像していた戦之女神(エディウス神)の秘密。向こうから転がり込んだ。

 ヴァイロ──心が一挙(いっきょ)ざわつき始めた。


「嗚呼……俺もあれは正直驚いたさ。術を矢尻(やじり)被雷(ひらい)させてから打ち出す辺り、完璧とは言い難いけどな」


 ()()の駆引きを始めるヴァイロ。『好機(チャンス)』だと胸(たかぶ)る。

 だが取り合えずニイナが行使した術の在り方を解説するだけに敢えて留めた。


 白銀の少女(エディウス)の魂を焦らす(焦がす)(たくら)み。

 あの術は本来、そんな(から)め手など要らぬのだ。知り尽くした相手を口説(くど)き落とすかの如き()()()


 ──フッ……。


 目前の若者が煽動(せんどう)したのを知り、蒼い目だけ緩ませた。女神が浮かべた人間らしき一面。


「そうだ、あの耳長族(エルフ)の少女。()()()()と契約を結んでいるな。確かに驚かされた」


 ()りの女神呼びではなかった違和感。

 気軽な(えにし)でもあるかの如く『ファウナ』──アドノス最初の女神を呼び捨てにした戦之女神(エディウス神)()かれた心を浮き彫りにする。


 (いくさ)の一文字を捨てた女神の蒼い瞳と、己の赤き煽動(視線)(から)ませたヴァイロ。流石に動転、気持ちが風の様に揺らいだ。言葉を(そこ)ねそうになる想い。


 戦之女神(エディウス神)が騎乗する白い竜(シグノ)はおろか、彼女の総て(思い)が透けて見えた錯覚(さっかく)


 ヴァイロが魔導書で知る緑の瞳を(たた)えるファウナと、目前の少女(エディウス)が何故か折り重なった気分に(ひた)る。パルメラ・ジオ・スケイルの()()()を思い出す。


「ふぁ、ファウナ? 随分(ずいぶん)気安(きやす)いな。まるで()()()()()()()でも呼んでるみたいだ」


 つい押された気分でヴァイロが、このやり取りにて初めて見せる(よど)みを吐き出す。

 これは正直な心の声を言葉へ乗せたに過ぎなかった。


 ──だが……言い逃れに近しいヴァイロが発したこの台詞が、完璧にエディウスの()()()鷲掴(わしづか)みにした──


 ──ふっ……やはり運命(さだめ)には(あらが)えぬか、()()()()よ。


 魂の奥底に眠る憧憬(ファウナ)へ、思わず語り掛けた(うつ)ろな少女の()に乗せた意識。


 未だ人間の枠組みを出ない黒い影を背負う男から、戦之女神(エディウス神)はおろか、人ですらない本性を言い渡された。


「流石と(たた)えるべきかヴァイロ・カノン・アルベェリア。命在る黒い竜(ノヴァン)を成しただけのことはある。──だが、2()0()0()()()()()()()()この()()()()()に取っては所詮(しょせん)若造にすぎぬ」


 白い竜(シグノ)の背をまるで舞台に仕立て上げた()()の女神が、心の闇を引き連れ立ち上がり、暗闇に沈んだ暗黒神(ヴァイロ)を、さらに影の奥底から静かに(あざけ)け揺らした。


「……!」


 完全に気圧(けお)され声を(いっ)したヴァイロ。白い幼気(いたいけ)なただの少女(人間)から『若造』と揶揄(やゆ)され震えた。


「ヴァイロ・カノン・アルベェリア、我の次なる器にすべきは貴様だ。今の姿は白が過ぎる」


 戦之女神(エディウス神)情緒(じょうちょ)がシーソーの様に(かたむ)き、少女(ヒト)を見せた直後、次は身勝手極まる神様の顔色へ逆戻り──指差す()()


「──『音の波風(オンダ・ナザレ)』」


 これ以上、()()()()()()()だけが語り合うのを危険視したヴァイロの竜と恋抱くリンネが不意に割って入る。


 リンネ、再びノヴァンの咆哮(炎の息)(かさ)ますべく、音の波を戦之女神(エディウス)等に向け拡散(かくさん)間髪(かんぱつ)入れずノヴァンの頬袋(ほおふくろ)が膨らむ狂気(きょうき)


 戦之女神(エディウス神)、全く意に介せず竜之牙(ザナデルドラ)を抜刀せず、目前のノヴァンを涼し気な風でも浴びる感じで(たたず)む。


 ブォゥッ!

 バァァンッ!


 ノヴァンの炎の息(ブレス)が噴き出す効果音と、巨大なものがぶつかり合う音が派手に重なり響いた。


「エディッ! ()()()()()に意識を(とら)われないでぇッ!」


 賢士(けんし)ルオラ・ロッギオネ・ルマンドが駆る白い竜(シグノ)を、エディーの駆るシグノへ全開で叩き付けた爆音が戦場と化したラファンの山岳に木霊(こだま)した。


 冷静なルオラらしからぬ絶叫──。

 然も『レヴァーラに囚われるな』何とも不可思議な発言を残響(ざんきょう)させ、戦之女神(エディウス神)軍は完全に撤退した。

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