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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第4章 聖戦開始(ᚷᚢᛖᚱᚱᚨ ᛊᚨᚲᚱᚨ
38/126

第33話 ”白夜”の開戦ーᚲᚨᛁᛊᛖᚾー

 カノンの暗黒神──。

 ヴァイロ・カノン・アルベェリアがフォルデノ王国の異端なる貴族、亜人達(デミヒューマン)をこよなく愛するバンデと手を結んだアドノス島内へ(またた)く間に波紋(はもん)を呼んだ。


 互いに手を取り合った異端児。情報を大々的に宣伝した訳では決してない。

 白銀の女神(エディウス)が制圧したラファンの山々と目と鼻の先に存在するバンデが治める屋敷の裏山。

 亜人達を労力と成し、石塁(せきるい)等を建築し始めれば、自ずと世間に知れ渡った。


 だがそれだけに在らず──。

 フォルデノ王国内では『我が王国を理不尽な女神から護る救世主』と暗黒神(ヴァイロ)称賛(しょうさん)され、(うわさ)は山火事が如くラファンへ火種を飛ばした。


 一方──アドノス島を離れた海外。

 地中海を挟んだ欧州各地へ拡散したニュース。海路便りに貿易(外的要因)花咲く中身皆無な(碌な産業を抱かぬ)フォルデノ王国が大いに拡散。


『The goddess and the dark god mounted their respective dragons and started a war.』(女神と暗黒神が互いの竜に(またが)り戦争を起こした)


 胡散(うさん)臭さが真実の臭気を帯びる様な話が飛び交い、現人神(あらひとがみ)ファウナを生んだAdon-North(アドノス)がさらなる脅威(きょうい)の対象へ()()()


 まるで東洋に浮かぶ黄金の国(ジパング)(かつ)て世界に()いた鎖国(さこく)の形。


 ──まさしく()()()を現世に呼び込んだ──


 暗黒神(ヴァイロ)の裏方──一番弟子のアギドと、(やと)われ()()のシアン・ノイン・ロッソは多忙(たぼう)に気分を削られた。


 主人(ヴァイロ)に対する苛立(いらだ)ちを抑えつつ義勇兵集めに奔走(ほんそう)する16歳。どれだけ『暗黒神(ヴァイロ)一番手の使い手』と()えた処で所詮(しょせん)は子供。


 だからアギドの呼び掛けへまともに応じるのは、同じ位の少年少女達と云う皮肉を()()()()


 シアンは美麗(びれい)な顔で苦虫を(つぶ)す。

 与えられた()()の兵士達──バンデが手間暇(てまひま)かけ用意した亜人達を手足として扱い戦之女神(エディウス神)の軍勢を迎え討つ準備に精出す。


『こんな仕事を寄越(よこ)すなど聞いてないぞ()()()


 雇い主(ヴァイロ)へ喰い下がりたい気分に(すさ)むシアン。だが例え嫌な依頼とて引き受けるのが傭兵であり、仕事とはそうしたものだ。


 美しさ際立(きわだ)つシアンの肢体(したい)が亜人達へ指示する仕草──。

 余りにも風刺(ふうし)が過ぎる妖艶(ようえん)

 (いん)王朝で妖孤(ようこ)九尾が(ヒト)と成した器、妲己(だっき)彷彿(ほうふつ)させた。


 そして遂に戦端(せんたん)は白き雲が如く流れ(あふ)れる。想定通りフォルデノの国境を飛び交い大胆(だいたん)にも正面から戦陣(せんじん)(さら)す。


 森の都(ラファン)を無血で落とした勝ちに(おご)る連中の面前を(いかづち)の如く飛竜(ワイバーン)(またが)斜線(しゃせん)上に駆け抜けた紫色の影。


「戦の天秤(てんびん)シアン・ノイン・ロッソであるッ! 此処を通りたくば私の首を獲れッ! (もっと)も安くはないぞッ!」


 普段軽々しく物事を決して運ばぬシアンが戦姿(ゆつさすがた)戦之女神(エディウス)軍の目前にて孤独な先陣を()大胆不敵(だいたんふてき)


 敵の視線を完璧に集中させる一凛(いちりん)の紫。手槍に似た愛刀を敵陣のど真ん中へ突き付け名乗りを挙げる。


 よもやな総大将(Queen)兵士(Pawn)独りとして連れず、まるで自在な黒僧正(Bishop)が如き機敏(きびん)なる変動を見せつけた。


 白銀の女神(エディウス)が駆る白き神竜シグノの周囲に陣取る他の(兵達)


 総じてまばらに(くず)れ、飛竜(ワイバーン)に騎乗しているシアン目掛け我先とばかりに襲い掛かる()の骨頂。


「そんな安い挑発(ちょうはつ)に乗るんじゃないッ!」


 総大将エディウス御自ら気の振れた兵士達を止めに掛かるも、その勢い留まることを知らず。自分達とて白い神竜に乗っているのだ。


 暗黒神(ヴァイロ)に雇われたシアンが駆る飛竜(ワイバーン)白い神竜(シグノ)()()に過ぎぬのだ。


 (いく)ら名の知れた傭兵シアンといえど単騎で堂々突貫(とっかん)


 加えて煽動(せんどう)御旗(みはた)(かか)げられては黙っておれない壊乱(かいらん)を呼び込むが必然。


 ボウゥッ!

 シアンの駆る飛竜(ワイバーン)狂乱(きょうらん)(ちまた)が最中、火の息を飛竜(ワイバーン)に吐かせる。


 無論、これだけで致命(ちめい)を取れるなどとシアンは(はな)から思ってなどいない。即時ジグザグに飛竜(ワイバーン)を舞わせ離脱(りだつ)を図るのだ。


 それでも敵の総大将シアンの首を狩るべく追い(すが)(おご)(たかぶ)る兵達の群れ。

 紫色のマントをたなびかせ空を駆けるシアンの()()()れば一攫千金(いっかくせんきん)──紫水晶(アメジスト)に映える幻覚。


「ウグッ!?」

「う、動けんッ!?」


 己が女神の制止を振り切り紫色の夢(シアンの命)を追い求めた愚弄(ぐろう)犯した白の兵士達。2騎の白い神竜(シグノ)毎、見えぬ何かに捕まり動きを止めた。


「ハァハァ……」

 

 重力解放(ヴァレディステラ)で宙を飛び、右掌を開き切ったミリアが待ち構えていた。


 以前戦之女神(エディウス神)と争った(おり)、自分達を護る守備の魔術『白き月の守り手(フェルメザ)』で張った結界を槍の様に突いた転化。


 次は敵を捕縛(ほばく)する為、網の目状に張り(めぐ)らしたのだ。女郎蜘蛛(じょろうぐも)が手ぐすね引き待ち構えていた。


暗黒神(ヴァイロ)始まりの()──アギドの名に於いて首級(しゅきゅう)にも値せぬこの(あわ)れな者共の命を()する蒼い凍()の花を与えよ──『葬送の獲兜(アコニタム)』」


 蜘蛛(クモ)捕縛(ほばく)した(あわ)れなる獲物を捕食(ほしょく)する迄の猶予(ゆうよ)


 そんな生易(なまやさ)しい死期への慙愧(ざんき)など与えなかったアギド。シグノを駆る敵兵達を心臓からミリアの張った結界毎凍結し切った。 


「俺は白い竜(シグノ)も加減せず殺す気だった! まさか効かぬとは……」


 白い竜(シグノ)2頭は藻掻(もが)き続け、葬送の獲兜(アコニタム)の氷と白き月の守り手(フェルメザ)で張った結界を千切ると空へ逃げ(おお)せた。

 アギド、己が脳裏に描いた予定調和(よていちょうわ)崩壊(ほうかい)し、独り蒼き目を見張った。


 ポロンッ……。


 目の前で派手にやらかした紫色のシアンに気を(うば)われた戦之女神(エディウス神)、空の部隊。背後からハープの音色と黒い竜の翼が羽ばたく(いななく)空気の音響(ハーモニー)


「──『音の波風(オンダ・ナザレ)』」


 ザァァァァッ!


「こ、これは激しい波の音!?」


 戦之女神(エディウス神)軍、後方に陣を成してた戦之女神(エディウス神)に走る音の旋律(戦慄)

 ただの音使いと未発達の黒い竜ノヴァンを軽視していた自分達へ響く警鐘(けいしょう)。リンネを背に乗せたノヴァンが鋭い牙を(のぞ)かせ口を開く。


「ガァァァァッ!」


 黒い神竜が口に含んだ炎の息(ブレス)を有りっ丈を吐き散らす。

 それはリンネが為した空気の波風に乗り、広範囲を炎の波で包み込む()()()()

 勝ちに(おご)り力押しだけで()けると馬鹿を通した者共を焼き払う。


 ニタァ……。

 己が与え(さず)けた炎の威力(いりょく)満喫(まんきつ)した紅潮(こうちょう)し切る真っ赤な少年の(わら)い。


 前ばかりに注力し過ぎた戦之女神(エディウス神)軍。()の次は焦熱(赤い)地獄が待ち構えていた。


「ヘルズ・フィアー、暗黒神(ヴァイロ)が竜()()()()焔叉(えんさ)よ、神すら恐れる地獄の大焦熱(だいしょうねつ)を──喰らいやがれ! 『紅の爆炎(ロッソ・フィアンマ)』!」


 爆炎の魔導士アズールがリンネとノヴァンが押し広げた炎の波にとびきりの味付けを(ほどこ)す。

 

 ズガガーンッ!!


 空中で炸裂(さくれつ)した大焦熱地獄、アズールから心尽くしの()()()

 白い神竜が炎の息(ブレス)で応戦する(いとま)さえ与えない黒側の真骨頂(しんこっちょう)


 これはさしもの白い神竜の軍団さえ、炎に白い翼を焼かれ墜落する竜が続出した。


「ムッ!」


 白を燃やし尽くす赤い蹂躙(じゅうりん)に満足していたアズール。炎の波間を斬る白銀の少女をみつけた。


 そして白い神竜(シグノ)に騎乗するのを赦されなかった戦之女神(エディウス神)の地上部隊。


 亜人達が山の方──石塁を成していたのは知り尽くしたが故、裏山の端。2頭の白い竜(シグノ)を盾に敢えて登山せず山と山の境目(さかいめ)を進軍していた。


 戦之女神(エディウス神)は、個人的には護りの女神(ファウナ神)の力を扱える程の無双。

 だが──味方の()()はおろか、()にすら(うと)かったと思い知るのだ。

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