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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第3章 憂愁の傭兵と森に微睡む二重の永劫(ᛖᛁᚷᛟ)
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第22話 冷徹な魔導士の冴え(ᛉᛖᚱᛟ ᛒᛟᚱᚾ ᚲᛚᚨᚱᛁᛏᛃ)

 Forteza(フォルテザ)市を約150年もの間、護り続けたファウナを模した石像。

 己が神様に(すが)る気分で見つめ続けたアギドを突如(とつじょ)襲った理不尽。


 16に成ったばかりの少年を情け容赦なく棍棒(こんぼう)の様な物で殴りつけた下衆(げす)(やから)

 どれだけ鍛え上げた処でアギドは背丈も低く軽量の部類。

 大人の身体を用いて無遠慮に殴られては吹き飛ぶしかない。


 地面を転がりファウナ像を支える台座にぶつかり(ようや)く止まれたアギド。


「ぐぅ……」


 蒼い頭に触れてみた。

 血の色が掌にへばり付く。どうやら頭が割れたらしい、蒼い髪の毛が続々赤に染まり往く。

 ふと紅色の弟分アズールのドヤ顔を思い浮かべた。


「ゲヘヘッ、やはりファウナ像の前に(ツラ)出したかカノンの(いや)しい餓鬼(ガキ)め」


 棍棒で空いた片手を(はた)きながらさも()らしい笑いを(つば)吐く男。然も独りではなかった。髭面(ひげづら)で頭もボサボサ、アギド的には『下品な顔立ち』


 ペッ!


「貴様等! さては戦之女神(エディウス神)の手先だな!」


 アギドが口に入った血を吐き付けた相手の正体。

 つい今しがたみつけたForteza(フォルテザ)市のAI警察官──の偽物。警察に扮装(ふんそう)した戦之女神(エディウス神)に仕える底辺の僧兵達。


「へへっ! Forteza(フォルテザ)で一応見張っておけと命を受け、やって来てみればとんだ上玉が転がり込んだな!」


 これは頭を丸めた別の僧兵。警察官の帽子をアギドへ投げつけ笑い飛ばす。


 ──クッ! 少しばかり出血が多い。こんな雑魚共に背中を取られるとは不覚。アズから馬鹿にされるな。兄弟子として不甲斐(ふがい)ない。


 アギドは全身が赤に染まる敗北に堕ちる様と、自分を(した)ってくれる弟達が悔しがり、無念に至る様を想像した。自分が負けるより腹立たしい。


「──がっ! 決して承服(しょうふく)出来るかっ!」


 魔法剣士のアギド、詠唱術の時間稼ぎが出来なければ力比べは分が悪い。血塗(ちまみ)れの手で砂地を握り締め、無礼な(やから)の独りに投げつけた。


「うぐッ!? こ、このクソ餓鬼(ガキャ)!」


 血の混じる砂が目に入った『下品な顔立ち』が懸命に目を(ぬぐ)おうとする徒労(とろう)。だが未だ独りに対する目(つぶ)しが成功しただけ。


 ガツンッ!

 

 アギド、大層罰当たり行動と知り抜いた上で、ファウナ像の台座を渾身(真心)込めて蹴り飛ばす。


 そして砂地を蹴散らしスライディングでもう独りの敵の足元へ雪崩(なだ)れ込む。この滑り込む時間(隙間)、相手が(ひる)む僅かな間を最大限に活用する気だ。


 身体が小さく軽いのを逆転の発想で活かす。まるで喧嘩(けんか)の殴り合い、こんな荒々しい彼の戦いぶりを知る者は少ない。


 アギド少年はもっと幼少期から正義感(あふ)れた人間であった。例え負けようとも理不尽を吹っ掛けられた喧嘩(けんか)は必ず買っていた(背負っていた)


 その(とき)、見知らぬ間に今の大切な友を救っていた結果を未だ知らぬ無鉄砲こそ彼の神髄(しんずい)


暗黒神(ヴァイロ)の使いの竜ノヴァンよ、全てを()がすその息を我に与えよ! ──『爆炎(フィアンマ)』!」


 此処で暗黒神ヴァイロの詠唱でも1・2位を争う短さを誇る爆炎(フィアンマ)(とな)えたアギド。但し火球を手に握り投げ込む体勢ではないのだ。


 飛び込む自分を焔玉(ほむらだま)に変え、地面を爆破しながら敵にさらなる戦慄(せんりつ)を与え()()。やがて黄泉(よみ)に堕ちる最期の絵を植え付けるのだ。


爆炎(フィアンマ)? アズの専売特許(せんばいとっきょ)ではない!』


 アギドからそんな心の雄叫(おたけ)びが(とどろ)きそうな見事でド派手な戦いぶり。


 アズールの爆炎(フィアンマ)と身体を張った戦いぶりで、相手を()じ伏せるミリアのやり口を独りでやり抜く一番弟子の花道を()く。


「こ、此奴! く、狂ってやがるッ!?」


「暗黒神ヴァイロの一番弟子──このアギドが貴様等みたいな愚民(ぐみん)共を葬送(おく)ってやろうぞ! ファウナ様の面前(めんぜん)! せめて綺麗な死に華を咲かせよ!」


 アギドの雄々(おお)しい声が早口に()()()()()()ゆく。

 悪党が狼狽(うろた)える様、何処の世界軸を旅しようとも哀れな醜態(しゅうたい)(さら)すものだ。

 怪我を負わせた少年相手に啖呵(たんか)を切った連中──命が散り()危惧(きぐ)だけ感じ取る。


暗黒神(ヴァイロ)始まりの()──アギドの名に於いて首級(しゅきゅう)にも値せぬこの(あわ)れな者共の命を()する蒼い凍()の花を与えよ……」


 アギド自身の名を(かん)した彼独自の呪文(オリジナルスペル)の詠唱。

 やはり冷静(クール)な少年の静けさ(ただ)う。だがその魂と蒼い瞳だけは熱く熱く燃え盛る。冷徹(れいてつ)な少年が()()()()()()に転じた。


 ──よ、よせ、や、やめろぉぉ! な、何故声すら出せん!?


 既に始まっている葬送(そうそう)の儀式──被術者である自分達だけが白濁(はくだく)の息そのものに成り果てる様子が自覚出来ない──未来が失せる。


「さあ散り()け ──『葬送の獲兜(アコニタム)』」


 完遂(かんすい)したアギドの呪文(スペル)

 断末魔さえ許容しない蒼の()()真の臓器(心臓)から一挙に白へ凍結し切る。彼の宣言通り遺体そのものを女神、ファウナに(ささ)げる花と成した。


 ピンッ!


「ふんっ やはり醜い(やから)はどうあっても(むご)たらしく(けが)れたものだな」


 瞬時で凍りついた憐れな者共の鼻っ面を指で(はじ)いたアギドの高飛車(たかびしゃ)


暗黒神(ヴァイロ)の使いの竜ノヴァンよ、全てを焦がすその息を我に与えよ! ──『爆炎(フィアンマ)』!」


 バーンッ!


 敬愛(けいあい)なるファウナの御前(ごぜん)に死体を残して去る()を犯したくないアギド。

 偶々(たまたま)見物人が居なかったとはいえ、随分派手な争いを演じた己を恥じその場を後にした。


 アギドは結局の処、()したる証拠を掴まず世界の首都Forteza(フォルテザ)を去る。だが確信を与えた我が血統ファウナ神に敬意(けいい)を払った。


◇◇


 森人達が住む(みやこ)、ラファンのディオルへ探索に来たシアン一行。


 間者(かんじゃ)と見抜いた戦之女神(エディウス神)の白い騎士、レイシャ・グエディエルの尋問(じんもん)を返り討ちに仕掛けたシアン。涼しい顔で逆に迎えうった。


「成程、そちらが本命って訳ね。──貴女の名は?」


 フードだけ上げたシアンが握る手槍(てやり)(なが)め、敵の力量を見定(みさだ)める仕草のレイシャ。戦う姿でありながら薄紅色の唇(ピンクのルージュ)を妖しく揺らす。


 シアンは一切応じず、挨拶代わりの突きに良く似た攻撃を繰り出す。だが所詮(しょせん)小手調べ。(さぐ)りを入れてると云った(てい)だ。


「お前、さては馬鹿だな? 探りに入った者が名乗ると本気で思っているのか?」


 シアンがレイシャに対し、同性も()れさせる地声で挑発を続ける。


 ガシャンッ!


「フフッ……そうだろうなぁ。確かに強い……だが騎士としての品格にやや欠ける」


 対するレイシャの声音──未だ若い乙女、少し甲高く響かせた。

 両者の声色の高低差が生む戦場(ゆつさば)での()()を呼び込む。


 次はレイシャが黒い二刀の突きを繰り出す。二本同時に思わせ、右は偽物(フェイク)

 左の剣で突く辺り、二刀使いの何方が本命か不明に落とす(まど)わし。


「失礼、私は傭兵故、騎士殿の(うた)う礼儀は知らないんだ」


 シアン──。

 我関せずと云った顔立ち譲らず、後方に跳ねつつ(もも)に差したナイフを投げ牽制(けんせい)を図る。


「このレイシャ様の黒い刃を闇に(まぎ)れるだけの物だと判定したのなら、()()()とやら。口だけの()れ者だよ」


 間合いを取ったシアンの身体は建物の景色に沈んだ。

 それは単なる偶発的(ぐうはつてき)な動きに過ぎない。


 なれどシアンが影で美麗(びれい)な顔を灰色に染めた途端(とたん)、レイシャの口角が冷たく上がる呼び水に転じた。


 まるで既に(うるわ)しの傭兵(シアン)から血を吸った己の黒い刃を()める感じで眺め倒したのだ。


 白い全身鎧のレイシャ──。

 なれど腰回りから少し(のぞ)かすガーターベルトとスカートが何とも悩ましい。相手が愚かな男であれば一挙()()へ化けるやも知れぬ。


 牽制(けんせい)を互いに繰り出し続ける美女二人、先に(みだ)らな赤い()を吸われるのは果たしてどちらか?

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