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<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第2章 黒い畏怖と麗しき唱の交響(ᛊᛇᛗᛈᚺᛟᚾᛇ)
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第16話 ファウナ・デル・フォレスタの痕跡(ᚠᚨᚢᚾᚨ ᛞᛖᛚ ᚠᛟᚱᛖᛊᛏᚨ)

 カノンの守護神、ヴァイロ・カノン・アルベェリア。

 見事召喚(しょうかん)せしめた御使(みつか)いの黒い竜ノヴァン。


 待ち望んでいたしか思えぬ戦之女神(エディウス神)と一番弟子賢士(けんし)ルオラの襲撃を受けた。

 一見荒々しく蹂躙(じゅうりん)するかにみえた白銀(エディウス)の太刀筋。


『貴様の力、黒い竜毎この我が貰い受ける』


 悪夢の迷宮(LABYRINTH)彷徨(さまよ)う羽目に陥り、気持ちの整理がつかなかったヴァイロ。

 エディウスの嘲笑(ちょうしょう)と宣言だけは実の処、心の片隅に届いていた。


 争いを如何(どう)にか凌ぎ切り現実に向き合うものの、心の迷いが自身の髪色が如く灰色の気分(にじ)んだ。座り込み思わず爪を()む仕草。


 (ふさ)ぎ込む暗黒神──。

 予知夢にしたくない例の悪夢では『カノンは要らぬ』と白銀の女神に断罪されていた。


 現実は僅差(きんさ)であるが違えていた。少なくとも暗黒神自身は()()()(くつが)されたと感じた。


「ヴァイ、大丈夫? 今止血するから……」


「リンネ? 嗚呼……済まない」


 リンネが黒い竜ノヴァン共々舞い降りた。

 早速ヴァイロの(たもと)に駆け寄り、血塗(みまみ)れの顔を心配そうに(のぞ)き込む。


 ヴァイロ、リンネに云われ未だ止まらぬ頭の傷に(ようや)く気持ちが傾倒した。抱えた頭を支えた両手も血に染まっていたのに気にも留めなかった。


 結果だけで語れば今回も酷い手傷を負わされたのはエディウス、加えてその竜シグノさえ口が動かせぬ大怪我を負った。


 白銀の鎧を血染めにした姿、帰り際にエディウスが口走った台詞──。


『ヴァイロ・カノン・アルベェリア、貴様の力を我は欲した。……が、私闘では終わらんらしい。次からは()()()の戦争を所望(しょもう)する』


 白刃の竜之牙(ザナデルドラ)にてヴァイロを差し女神自ら宣戦布告。

 取り合えず対等(神扱い)、神竜を抱く者同士の戦乱を言い渡された。


 ──ヴァイ……。


 リンネがヴァイロの頭に包帯を巻く一部始終。


 遠巻きに見つめるミリアの乙女心がまたしても灰色に沈む。気が利くリンネの代わりがしたい衝動、神竜シグノの(あご)を砕いた強靭(きょうじん)に跳ねた娘が上手く歩けぬ恋路を悔やむ。胸が締め付けられる想い。


 ガランッ!


 師匠ヴァイロを悩みの窯底(かまそこ)から救い上げた紅の少年アズールがさも悔し気、地面に転がる石ころを怒りを込め爪先で蹴散(けち)らす。


『俺様の爆炎(フィアンマ)は暗黒神ヴァイロの直伝』


 師を(ふる)い立たせるべく上げた叫び。だが彼とて理解していたのだ。

 偽物が唱えた爆炎(フィアンマ)、自分が信じ(つらぬ)く本物より威力(いりょく)が勝っていた容認し(がた)い状況を。


 あの蛮勇(ばんゆう)ぶりは、自らに降り掛かる白亜(はくあ)の闇を振り払いたき体現(たいげん)であった。(もっと)も『次は絶対(ぜってぇ)負けねぇ!』誓いも混じる。


「……」


 リンネを地上に降ろしたノヴァン。

 全身を地面に()わせ猫の様にふて寝を決め込む。よもや自分の竜の息(ブレス)が白い竜に一蹴(いっしゅう)されるなど思いも寄らぬ。


 意志を持ち得た竜の召喚(出航)式は、無事成功を果たした。

 然しその力を見せ付ける絶好の機会に於いて地に堕ちた己を自覚したのだ。


 大金(はた)いた出資者達──。

 今でこそ激し過ぎた争いをまざまざと見せられ気圧(けお)されているが、何れ『金返せ』と自分達の無能を(さら)す逆転を言い出す未来が透けて見えた。


「ヴァイ……ちょっと良いか?」


 青い頭を抱えたアギドがさも辛そうな表情で暗黒神ヴァイロの元を静かに訪れる。やはり魔力(マナ)切れ寸前を押した健闘であった余韻(よいん)(はら)んでいた。


 アギドだけに非ず、ミリアやアズールも竜の錬成にて既に限界の目前。

 外傷こそなかったが、死の手前を彷徨(さまよ)っていた。依って逃走する白銀の連中(エディウス達)を見逃す以外、打つ手がなかった。


 ヴァイロだけが負った怪我の手当が粗方(あらかた)終わったの見計らって訪れたアギドの冷静な気遣(きづか)い。

 リンネ、(だま)って(うなず)きその場を後にする。『リンネ、悪いが席を外してくれ』そんな()()()み取った。


 地面に沈む様に座り込むヴァイロの隣へ自身の腰を下ろしたアギド。意外過ぎる第一声を告げるのだ。


「ヴァイ、レヴァーラ……ガン・イルッゾって(女性)を知っているな」


 アギド、『レヴァーラ』まで言葉が出た後、僅かに(よど)んだ。恐らく名前を忘れ掛けた記憶の引き出しを開けたのだろう。さらに知ってて当然な口振り。


「アギド? あ、嗚呼……勿論知っているさ。森の女神(ファウナ)()がれ支えた女性だ。ファウナの()()にも度々出て来る」


 そうなのだ──。

 ファウナの日記すら探求材料にするヴァイロのみならず、アドノス島に(きょ)を構える者なら、名前くらいは知っている存在。なれどこの場、戦闘終了後にアギドの口から聞くとは思わなかった。


 レヴァーラ・ガン・イルッゾ──。

 (およ)そ300年昔、旧イタリアの属領であったシチリアをアドノスと改名させ独立。加えてアドノス島最北端、Forteza(フォルテザ)と云う名を冠した世界最高峰の街並みを(きず)いた人物。


 ファウナ──本名『ファウナ・デル・フォレスタ』はレヴァーラの右腕として森の女神に準じた魔法を大いに振るい、レヴァーラの国造りに貢献(こうけん)した。


 レヴァーラの創ったForteza(フォルテザ)

 当時まだ世界各国の軍事力を総取りしていた連合国軍の総帥『ガディン・ストーナー』の気狂(きぐる)いと云うべき戦乱。世界中の軍事力を文明毎焼き払った。


 されどForteza(フォルテザ)だけは、ファウナと仲間達が如何(どう)にか護り抜いた結果。22世紀前半の文明を総ざらいした街が残ったのだ。


 だが、今この場に於いてそんな歴史の思い返しを図るアギドの思惑(おもわく)がまるで判らぬヴァイロである。


 師の返答に疲労も混じる溜息をゆるりと吐くアギド。

 まさか魔導書処かファウナの日記まで手を出してたとは初耳なのだ。勤勉家と云うよりファウナ()()()に思えた。盲愛(もうあい)と云って差し支えない。


「はぁ……その日記とやらにレヴァーラの力についての記述がなかったか?」


 溜息混じる弟子の質問に思わず身を乗り出すヴァイロの驚き。だが一旦落ち着き払い、座り直して腕を組む。


「レヴァーラの力……美麗(びれい)な踊り子でその体幹(たいかん)を活かした剣を振るう。その美しさに幼きファウナは心を(うば)われた。だが()……能力の(くだり)が何故か()()()()()()()


 次は質問したアギドが蒼い(まゆ)(ひそ)める番が訪れる。気になり過ぎる師の言い含め『抜け落ちていた』とは意味不明にも程がある。


「意図的に消したと(おぼ)しき箇所が数多く存在するんだよ。俺も気にはなっていた、ファウナ様はレヴァーラを心底愛していたのに敢えて消した」


 ヴァイロにも(ようや)くアギドの求める意図が(つか)めてきた。取り合えず懐に入れてたファウナに纏わる記述のひとつを開いて見せた。


「何ぃ?」


 増々眉(しか)めファウナ神が敢えて消した記述を眼鏡を掛けた視線を貼り付ける様に寄せて見る。意図的に消した痕跡(こんせき)が確かに見受けられた。


「俺の家にはファウナ直筆か(ある)いは写しの書記しかない。だが──」


 ガシッ。

 不意にアギドの両肩を掴んだヴァイロの顔が力(にじ)ませる様相に移り変わる。

 冷静なアギドが思わず引いた。


Forteza(フォルテザ)なら(ある)いは見つかるかも知れんな。アギド、お前が気になるレヴァーラの能力とやらが。──で、()()()のだな? ファウナ神の()()を」


 Forteza(フォルテザ)市には筆記ではない情報(DATA)が存在する可能性があることを示唆(しさ)するヴァイロ。さらに気になる発言でアギドの心根を刺す。


「知っていたのか、俺の能力を。あ、余りアテにしないでくれよ。そんな感じがしただけだ。ただ……」


「んん?」


 敬愛(けいあい)する師匠に詰め寄られ顔を背けるアギド、その歳(25歳)に似合わぬ無垢(むく)な赤い瞳を一心不乱(いっしんふらん)に向けられるのが()えられないアギドの()()()()()


「た……ただ、戦之女神(エディウス神)から感じた人の意識が何故か()()()じゃなかった。こ、これだけは確かだ」


 言い(よど)むアギドの告げた言葉に目を見張るヴァイロ、ファウナの従属神である己が未だ知らぬ秘密が在るのか? 不謹慎(ふきんしん)にも胸(おど)らせた。


 『幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 "ᚺᛖᚱᛟᛁᚲ ᛊᚨᚷᚨ" —Saga "Vairo" et "Edius"—』 Chapter 2 End.

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