表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<再編中>幻影と白幻を抱いた神々の英雄譚 —Saga "Vairo" et "Edius"—  作者: 狼駄
第2章 黒い畏怖と麗しき唱の交響(ᛊᛇᛗᛈᚺᛟᚾᛇ)
17/125

第14話 白衣の罠(ᚹᚨᚾᚨ)

 暗黒神ヴァイロ・カノン・アルベェリアが御使(みつか)いの竜。

 ノヴァンの錬成(れんせい)果たした余韻よいん(ひた)る間すら与えぬ白の襲来。


 ヴァイロ側の半年間を見透かしかの如き絶妙な頃合い。戦之女神(エディウス)側の間者(スパイ)が居るのではと疑い抱く心の(いとま)さえ皆無。


 然も白銀の女神(エディウス)があろうことか空襲すべく騎乗している白い竜(シグノ)賢士(けんし)ルオラに(たく)し、漆黒の神(ヴァイロ)へ一騎討ちを所望(しょもう)する大胆不敵(だいたんふてき)


 森の女神(ファウナ神)従属(じゅうぞく)である暗黒神のみ許容された呪文(スペル)重力解放(ヴァレディステラ)をあろうことか無詠唱で扱い、薄暗いカノンの空を跳ねるのだ。


「──全てを()がすその息を我に与えよ!」 


 紅色の蜃気楼(レッド・ミラージュ)だけに在らずな魔法剣士のヴァイロ、カノンの谷間を駆け(めぐ)りながら、次なる術式の詠唱を間もなく終える。


「「──『爆炎フィアンマ』!」」


 ズガーンッ!


 等しき魔導が渓谷に響かせる轟音(ごうおん)

 ヴァイロが左掌から繰り出した火の玉、心に巣食う(くすぶ)りと焦りをそのまま形にした物を鬱憤(うっぷん)晴らすべくエディウスへ投げ込む。


 またしても同調(シンクロ)決めた白銀の少女(エディウス)から辛抱(たま)らず(あふ)れ出す嘲笑(ちょうしょう)

 爆炎(フィアンマ)をまんまと相殺(そうさい)せしめたエディウスの愉悦(ゆえつ)


 同じ呪文を好きに使われ気が変に()()()()ヴァイロ。細く鋭き赤目を見開き、駆け抜ける震撼(しんかん)

 理由不明だが最早(もはや)確信するより他なき現実突き付けられた憂鬱(ゆううつ)に沈む。


 戦之女神(エディウス)森の女神(ファウナ)と同様、無詠唱で魔導を操れる。

 ヴァイロは、幼少期から森の女神(ファウナ)を研究し尽くした云わば生え抜き。認め難き必然に血が(にじ)むほど歯軋(はぎ)()()()


 ──巫山戯(ふざけ)んなッ! ファウナは()()()()、戦を(うた)う女神が別の女神の力を使うなどッ!


 怒りに打ち震えるヴァイロの()()()森の女神(ファウナ)は当然、誰のものでもないのだ。


 そんな己が未だ成し得ぬ無詠唱、よもや敵にかっ(さら)われた劣等(れっとう)感。

 悲憤(ひふん)がマグマの如く()き立つのを抑え切れぬ嫉妬(しっと)


 信心(しんじん)深さ──。

 人が最も(こじ)らせてはならない執着(しゅうちゃく)()なのだ。


 まるで(あざけ)が真顔な程、顔色を微塵(みじん)足りとも変えず竜之牙(ザナデルドラ)を振るうエディウスの先攻。降りしきる雪の様に止まぬ白が黒を塗り潰す。


 神が他の神力を操る()()()()──。

 神同士の異常事態(Survival)、生き残るのは果たして何方(どちら)だ?


 一方、リンネと彼女を乗せた黒い竜(ノヴァン)。遊女の様な出で立ちのルオラを乗せたシグノ(白一色)がカノンの空で折り重なる。

 地上から見上げる者達には、白を(むさぼ)る月食を匂わせた。


「へぇ……成程。素朴(そぼく)だけど可愛いのね貴女。暗黒神(ヴァイロ)? 中々見る目あるじゃない」


 御相手が可愛げある16の乙女、白い衣が隠す冷徹な下心がリンネを魂を()いずる。殺気より妖気が先往くルオラの在り様。


「何だよアンタ、私はヴァイを助けに行くんだ。だから邪魔しないで……」


 リンネの怒り、誇大(こだい)な声に在らずな震える(つぶや)き。

 漆黒(しっこく)なる竜の背中で一際(ひときわ)映えるリンネの白いドレス。


 善悪を純白で染め上げたシグノと賢士(けんし)ルオラを、正義の(まが)い物呼ばわりするリンネの存在意義。


 リンネは眼前のルオラに視線を絡めない。()()()白銀煌めく少女(エディウス)相手に苦戦()いられた自分の男を救う欲求だけで満たされていた。


 黒い竜(ノヴァン)が身勝手に白に向け、炎の息(ブレス)を断続的に吐き続ける威嚇(いかく)

 ヴァイロ達を態度で(さげす)み続けたのが嘘に思える。少なくともリンネだけには従順(じゅうじゅん)な姿勢を(つらぬ)く。


 だが哀しきかな──対するシグノ、同じ息でも鼻息だけのみ。それらを消し去る平然ぶりで応じた。

 ノヴァンは独り信じ難い想いに駆られる、己の吐いた炎を蝋燭(ろうそく)の様に消し去られたのだ。


 カチンッ!


 16の小娘に拒絶(きょぜつ)されたルオラの苛立(いらだ)固執(こしつ)の気分が弾けた音。

 ルオラは戦を(つかさど)る女神より邪魔者(子供)達の相手をするよう神の命(かみのみこと)を受けた。こんな小娘如きに拒絶(きょぜつ)されるなど在ってはならぬ。


「デエオ・ラーマ、戦之女神(エディウス)よ。我の心に潜む(いばら)の刃、我は剣也、神の剣也、裂けよ全てを! ──『心之剣(クオレスパーダ)』!」


 美麗(びれい)──がっ、16の少女に比べれば年増な女性が眉(ひそ)めた迫真(はくしん)の詠唱術。両腕を赤い(怒りの)剣に変えた。


 自らの身体を錬成の対価(たいか)に払った二刀を用い、小生意気な娘を斬り(きざ)まんと迫り征く。


 キンッ!


「み、ミリア?」


 剣の交わる音が渓谷に木霊(こだま)したか。

 そう思われた矢先、ルオラの繰り出す心之剣(クオレスパーダ)と相対したのは、新月の守り手(ベスタクガナ)で此方も己の腕を文字面通りに()()したミリアである。


 凛々(りり)しくも(けわ)しいオレンジ色の視線(不快)をルオラへ飛ばすミリア。

 重力解放(ヴァレディステラ)で浮遊した(のち)新月の守り手(ベスタクガナ)で固めた両脚を用い地面を蹴り飛ばし此処まで辿り着いた。


 6ヶ月前、ヴァイロから貰った(借りパク)黒マント。

 黒ずんだ肩当てや手甲、灰色こそ変わらないが長いスカートは脚が自由に動かせる様、深いスリットが入っていた。


 さらにこれは争う前に後ろで結ったらしきポニーテールを揺らす。

 黒い竜(ノヴァン)の錬成時は、必死の気分で気に留めなかったリンネの目端(めはし)に映り込む。


「リンネ……ヴァイを護りなさい、早く」


 (わず)かに怒気を(はら)んだミリアの言伝(ことづて)()()()()()()、本音なら自分が果たしたい役目を恋敵(ライバル)(ささ)げた彼女の決意。


「き、気を付けて……」

「……」


 リンネに気遣(きづか)いを無言で応じるミリア、乙女の意地。

 ミリアからの()()()を無駄に出来ないリンネ、ノヴァンの首筋を軽く叩き主人の元へ羽ばたけと(うなが)した。


「マー・テロー、暗黒神(ヴァイロ)よ、その至高の力であの者に(さば)きの鉄槌(てっつい)を──『神之蛇之一撃(アスピーデ)』!」


 黒い竜(ノヴァン)と入れ替わった様な時機(タイミング)、大蛇の影が固まりルオラを襲う。

 されどルオラは自らの手を汚さぬ防御を見せる。何と大蛇の影をシグノに噛ませた。骨まで喰らい尽くす様な何とも(むご)たらしい音が周囲に響いた。


「クッ! やってくれる。リンネ、この敵(ルオラ)は俺とミリアが(あず)かる」


 自らも重力解放(ヴァレディステラ)で空に浮き、加えて神之蛇之一撃(アスピーデ)が具現化した影に此処まで運ばせたアギドが言葉少なめ、己が師匠の(行方)(たく)した。


 実の処、ミリアとアギドの二人は刺す様な頭痛を抱えていた。

 ノヴァン錬成時、絶望之淵(ディス・アビッソオ)を攻撃でなく材料に使ったアギドと、未だ扱い慣れてない新月の守り手(ベスタクガナ)を詠唱したミリア。


 この頭痛はその際の対価。魔力(マナ)を使い過ぎた代償。数値化出来るほど便利ではない。

 なれどこの争いを長引かせるのは危険。疲労感でその位の判断なら想像に容易(たやす)い。


 現状を打破(だは)出来るのは暗黒神の神聖術でなく、魔力(マナ)を使わぬリンネの声と音だと知り抜いていたアギドとミリアなのだ。


 ──それに頭に血が昇った()()を救うのは、()()()鹿()が適任なのさ。


 余剰(よじょう)な思いが脳裏に浮かんだアギドの苦笑。師匠の危機に真っ先駆けつけるべき弟子の独り、何故か姿が見えない。


「ルオラッ!」

「──ッ!」


 敵の大将(ヴァイロ)と剣を交えたままの大太刀回り(立ち振る舞い)、エディウスが言葉少なく一番弟子(ルオラ)へ何かを望む。

 さも一騎討ちの(てい)(よそお)いながら戦う以前、何か言いくるめられてたらしきルオラが無言で(うなず)く。


「やらせんッ!」


 青い衣装が映えるアギドが両手のエストックを振り(かざ)し敵の賢士(けんし)の女を牽制(けんせい)する働き。

 何らかの術を扱うと決まった相場、ミリアも一番弟子に続いた。


「キシャァァ!」


 だがルオラは独りに在らず、騎乗してる竜シグノが口を開き炎の息(ブレス)を吐いた。回避以外の選択肢をアギド達に与えぬ威力(いりょく)


 ニタリッ……。賢士(けんし)ルオラの冷笑、詠唱の(とき)()()()


「デエオ・ラーマ、戦之女神(エディウス)の名に於いて、自らの心に潜む不安の痛みに苦しみ藻掻(もが)け! ──『心澱の誘い(クオレ・ルタム)』」


 師エディウスが弟子に課した役目が、未だ悪夢に心(とら)われた優し過ぎる神の魂を羽交い締めに堕とす術が決した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ