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#4  拓哉VSさとるくん血みどろチェーンデスマッチ開幕!!

15分間のタイムリミットがある中、拓哉は出来る限りのスピードで”目的地”へと向かっていた。


ギリギリか.....?メリーさんがさとるくんを抑え始めてから10分ほど経った.....下手したらもうそろそろ15分経っていてもおかしくない。


様々な思案を巡らせる拓哉の肩を小さな手が叩く。


「ねぇ、ちょっといい?」


「おう、聞くからそのまま続けてくれ。」


「ありがと、.....今更いうのもなんだけどさ、あんた何でスマホ捨てないの?捨てたらさとるくんの追跡から猶予が出来るのに。」


「それはな、ちょっと考えてることがあるんだよ。まぁ今向かってる場所につけたら出来ることなんだがな。」


「あと3分でつける場所な?そこって?」


「......3分しかねぇのか。」


「ねぇ、ほんと大丈夫なの?あたしが巻き込んどいてどの口が言ってんだ話だけどさ。」


「普通に大丈夫ではないから、気合入れとけよ。」


拓哉はバイクを加速させ始める。


____________________________________________



 タイムリミットに差し掛かった頃、ようやく目的地が視界に写った。

山道にあるとある廃棄場、辺りは崖になっており、その高さは約30m前後。

 

 この場所こそ拓哉が選んだ、決戦場であった。


「なに、ここ?」


無数のコンテナが無造作に捨て置かれ、鉄くずなどが周りに散乱している。


 拓哉が廃棄場中央付近にバイクを停車させ、おもむろに鉄くずを拾い始める。

拾い上げた鉄くずをバイクの周りに円状にまき散らす。


「メリーさん、これ座席に置いてきて。」


「.........こんなのここである必要あったの??」


「とりあえず!、置いてきてくれ。」


 自身のスマホをメリーさんへと渡す。

その間、拓哉は鉄くずの山を漁り続けていた。


「置いてきたわよ........ってもうそろそろ」


拓哉の足元に鮮血が飛び散る。


「おいまじか!」


 急いで振り返った拓哉が見たのは、大量の血を鼻と目から噴き出すメリーさんと、バイクの座席裏に見えた黒い影だった。


 メリーさんの抑制が一気に解かれ、さとるくんの接近を許してしまった。


じゃらぁ、と拓哉が鉄くずの中から掴みだす。


「これだよ、最後のピース。」


 引っ張り出そうと腕に力を入れた瞬間、腹部に強烈な痛みが走る。


「逃がさねぇっっっってぇぇぇえええええ!!!!」


 思いっきり振りかぶった拳は拓哉の腹部を抉り、その威力は、拓哉が20メートルは離れていただろうバイクの位置まで吹き飛ばされる程のものだった。


「腹ァ、抉れちゃったなぁ!!!臓物(モツ)、全部出ちゃうなぁ!!!!」


 狂気的な笑みを浮かべつつ自分の拳に付着した肉を見つめる。

そこでさとるくんは気づく、見つめている拳が地面へ落ちていることに。


 ズタズタに引き裂かれた右腕。

さとるくんが拓哉の肉片だと思っていたものは、自身の腕の原型を留めていない部分のことだった。


 現状を飲み込めずにいるさとるくん。

しかし、動揺しているわけではなく、ただひたすらにその場に立ち尽くしているだけ。


 拓哉は腹部を殴打された時、咄嗟に鉄くずの山からチェーンを引き抜き、吹っ飛ばされる寸前のところでさとるくんの腕へチェーンを絡ませていたのだ。


 だが、拓哉の腹部へのダメージは軽いものではなかった。

抉られはしなかったが、皮膚は削られ少なくない出血も伴っていた。

それに加えて、20メートル以上吹っ飛ばされており、体全身に打撲を負っていた。


「ぐぅう゛!クソ痛てぇな!ボケ!」


 息を切らしながら拓哉はなんとか立ち上がる。


 正直ラッキーだった、引っ張ったチェーンがアイツの腕を引き千切ってくれるなんてな....。

でも、もう限界近いぜくそったれ。


 直立不動だったさとるくんが自身の右腕を持ち上げ、拓哉の方へ振り向く。


「おい、やり過ぎたな俺相手に。完全に。」


 拓哉が反応する隙を与えず、さとるくんは持っていた腕をぶん投げる。


投げられた腕は拓哉の額の左側を掠める。


 (クソっ!目の上を狙いやがった!血で前が......)


バイクの周りに撒いた鉄くずが擦れる音がする。


 (左側、大体5メートルってとこ......


 ミシッ、骨がきしむ嫌な音が拓哉の体から鳴る。

左手の尺骨と橈骨の部分が折れ曲がり、皮膚から突き出していた。


 不幸中の幸いか、左目は額から流れる血によって塞がれ、自身の左手の状態を直視することが無く、それによる戦意喪失を免れたことだろう。


 (痛すぎる、痛すぎる、痛すぎる!見えねぇが絶対折れてんだろこれ!だめだ、集中できねぇ....いやまだ俺の土俵だ、諦めるには早いだろ...!)


 さとるくんの強打によりさらに追い詰められる。


「どけやぁ!」


痛みを噛み殺し、前蹴りを打ち込み距離を取ろうと試みる、が蹴り足を掴まれ、地面に叩きつけられてしまう。


 コンクリートに直接叩きつけられ、一撃で拓哉の意識が混濁する。


(これはぁ.......ダメなやつだ..........。)


「これで、死ねやァ人間!」


ぐちゅっ!


 肉がつぶれる鈍い音が鳴る。

もうほぼ感覚の残っていなかった左腕を犠牲にして、自身の頭部を衝撃から守った。


「これでおあいこってことで、終わりじゃだめか?」


「言い分けねぇだろゴミ屑、もう会話もしたくねぇんだよはよ死ねやァ!」


 イライラを抑えきれないさとるくんが、大振りの左フック。


チャンスはここしかない。

 

 千載一遇。

隙だらけの大振りに懐から取り出したパイプレンチでカウンターを狙う。


 『どっからこんな得物(レンチ)出してきやがったんだァ!?まずっ......』


 全身全霊のフルスイング、さとるくんの大振りの勢いと組み合わさり、パイプレンチは側頭部へとクリーンヒットした。


 完全にさとるくんの側頭部は陥没し、頭蓋骨は砕けたように見えた。


「脳髄垂れ流して死ぬのは、お前だよ。残念だったな、人間なんかに負けて。」


 膝から崩れ落ち、突っ伏したさとるくんに捨て台詞を吐き、メリーさんの所へ向かおうとする拓哉。

しかし、すぐさま異変を感じ取る。


(あくまでこいつらは人の形をしているから、人がやられたら死ぬことは、さとるくん(こいつ)も同じく死ぬもんだと、勝手に思ってた。)


 一抹の不安が脳裏によぎる。


(こいつ、死んだふりしてるんじゃないのか?)


 一歩ずつ、さとるくんの死体へ近づく。


(よく考えてみれば、思いっきり頭ぶん殴ったのに、血の一滴も流れてない.......。)


 呼吸が荒くなる。


恐る恐る死体をのぞき込む。


 さとるくんの陥没した頭蓋の奥が妙に暗い。

まだ周りは昼過ぎ頃、影にしては深すぎる。まるでこいつの頭蓋の中身が空っぽかのようだ。


「.........嘘だろ。」


 さとるくんの頭蓋の中の暗闇の奥から小さな顔がのぞき込んでいた。

それを拓哉が認識した瞬間、さとるくんの体が跳ね上がり、頭蓋から真っ白な顔が飛び出してきた。


「アンパ●マンかよ。」


 拓哉は咄嗟に地面に落ちていたチェーンを拾い上げ、さとるくんの足へ巻き付ける。

さとるくん自体、頭の再生にリソースを裂きすぎたせいか、体の動きがぎこちない。


(結局、これをやる羽目になるなんてな...!)


 チェーンをバイクのハンドル部分に巻き付ける。


「いいドライブにしようぜ。」


「までよ゛ぉお!!!!」


 さとるくんは必死に振りほどこうとするが、うまく体が動かないせいで対応に遅れをとってしまう。


フルスロットルでバイクを発進させる。


 ギャリギャリギャリギャリィ!!

 チェーンに繫がれ、引きずり回されるさとるくん。また、バイクの周囲に撒かれた鉄くずたちに皮膚、肉、骨、すべてをズタズタに引き裂かれていく。


「15分は止まんねぇぞ、俺がビビった時間分お前にも味わってもらうからな....覚悟しろよ。」


 拓哉は、勝利を確信していた。


その慢心が、さとるくんの能力を頭から忘れさせていた。


 (.......なにか忘れてる..........あっ)


気が付いた時にはもう遅かった。


 メリーさんが置いた、拓哉のスマホ。

それがバイクのマフラー部分に挟まったままの状態になっていた。


 さとるくんはそのチャンスを見逃さなかった。


 スマホからさとるくんの手が飛び出し、ホイールに手を巻き込ませた。

バイクは大きく宙に浮き、拓哉はコンテナの壁へ叩きつけられた。


 吐血。人生初体験の事だった。


(あー、血吐いたってことは、ホントにやばいなこれ。下手したら、肋骨が肺に刺さってるな....。)


拓哉は、意外に冷静であった。死に直面し、一種のあきらめの感情が芽生え始めたからだろうか。


 そんなことは関係なくさとるくんは拓哉に止めを刺さんとして向かってくる。

しかし、怪異とはいえ不死身の存在ではない。


 拓哉との戦闘で両腕を犠牲にしている。

そこに勝機を見出した。


「まだ諦めきれてない証拠か...。」


 拓哉のズタボロの右手にはチェーンが固く握りしめられていた。

約3mほどの長さのチェーン、それは拓哉にとっての命綱であった。


 自身の左腕の関節部分にチェーンを縛り、拓哉もさとるくんに向かって迎撃する。


(両腕が無いあいつにとって、今できる攻撃は蹴りか頭突き、タックルの3択だろ!?それなら....!)


 さとるくんの首へチェーンを押し付け、そのまま崖の方面へと走り出す。


「で、でめぇえええええええええ!!!!」


 押し付けたチェーンを一回転させ、完全に首へと巻き付ける。

さとるくんを崖際のフェンスへ叩きつけつつ、チェーンを縛り上げる。


「お前が、人間の姿してようと容赦はしない。ここでお前を終わらせる。」


頭蓋への渾身の一撃で死ななかったこの怪異(さとるくん)に対し拓哉はもう一切の油断は持たない。


 右拳に巻き付けたチェーンをメリケン代わりにして、顔面を殴打する。

フェンスの奥は完全な崖。


 宙ぶらりんになった頭を、千切り落とさんばかりの勢いで殴打、殴打、殴打。

ただひたすらに殴り、締め上げ、また殴り続けた。


 どちゅどちゅどちゅ!

 もはや、さとるくんの顔面は原型を留めておらず、首の皮一枚で胴体と頭を繋いでいる状態だった。

だが、微かにさとるくんの体から反応が感じる。


 なにをそうまで彼の体を動かすのか。

しかし、それも風前の灯火。


 その微かな火は、鉄と血でかき消される。


「一生戻ってくんじゃねぇぞボケ。」


 その一撃は、さとるくんの存在すべてを打ち砕くものとなった。

滅茶苦茶になった頭部はついには、首から千切れ落ち、深い崖底へと沈んでいった。


 それと同時に、胴体がグズグズに崩れ始め、塵となった。


アドレナリンが切れて全身に激痛が戻ってきた。


「せっかく、生き延びたのに、ここで、終わりか......よ。」


 とっくのとうに限界を迎えていた拓哉は糸が切れたかのように崩れ落ちた。

左腕からの出血は巻き付けたチェーンによって辛うじて悪化はしていなかったが、それでも失血死が危ぶまれる状況に違いはなかった。


(あーーーー、電話、出るんじゃなかった。)


これを最後に拓哉の廃棄場での記憶は途切れている。




「ばか、あんたがここで死んだら、意味ないでしょ...!」




________________________________________________________________




 目を覚ますと、知らない天井。


「......!!!拓哉!!」


 そこは病室だった。

左腕は包帯でグルグル巻きにされ、どうやら右足も骨折してるようだ。


「オカン、心配かけてすまん。わざわざこっちまで来て。」


「ほんま、あほ!生きててよかったわ!事故って聞いて、すっ飛んできたんやから...!」


「...........バイク。」


「あんた、.......覚えとらんの?」


「いや、覚えてるよ。嘘や、俺のバイク。」


「そんな怪我しといて.......死なんかっただけましやと思い!ほな、先生呼んでくるわ!」


「夢であってくれよ.....。」


命がけであったとはいえ、愛車を失ったのは相当なショックであった。


「ちゃんと事故ってことでまとまったみたいね。」


少女の声を聴いて驚き、振り向く拓哉。


「......メリーさん、お前が事故ってことにしてくれたんだな。」


「救急車だって呼んであげたのよ!」


「ありがとな。でも、俺にも感謝しろよ、今二人が生きてるのは、俺のおかげでもあるんだからな。」


「........ほんと、巻き込んでごめんね。」


「しょーがないこと、って片付けられるものじゃないのはわかってるが、こうして生きてるから、大体無問題よ。大体な。」


「......バイクの事も...。」


「おう、.......バイク....。」


「あと、人でなくても、殺しをさせちゃったこと........ほんとにごめんなさい。」


「........正直、そこまで気にはやんでない。余りにも人間離れしてたからか、それとも........」


病室の扉が勢いよく開けられる。


「拓哉、あんた誰と喋ってたん?」


「.......あー、いや、独り言。」


「そう、先生きはったで。」


___________________________


「ってことがあってだな..。」


「だからお前そんな包帯でグルグル巻きなのか!!」


「お前もだろうが!」


英樹と拓哉が言い争っている中、賢治が納得いかなさそうな顔をしている。


「おい、賢治、どうしたんだよ。」


「いや、あのメリーさんとの約束って結局なんだったんだよ?意味ありげな伏線残しといて、回収せずは消化不良だろ!」


「あーー、そのことなんだが。」


「私から直接言った方がいいかもね!」


拓哉の肩に人形サイズの小さな少女が座っていた。


「え?」


「は?」


「ん?」


「これな、メリーさん。あんまし気にすんな。」


「気にしてもいいのよ。」


余りの出来事に言葉が出ない拓哉以外の3人であった。


「そ、その、メリーさん、だよな、拓哉と交わした約束って何なの?」


「秘密!」


賢治は思いっきりメリーさんにデコピンを食らわした。


「クソガキ!ぶっ飛ばすぞ!」


「野蛮人!せっかく他の怪異について教えてあげようと思ったのに!!」


「ごめん!!メリーさん!教えてくれ!」


「キモいくらい現金ねこいつ....。まぁいいわ、次はね.....」


メリーさんの話を遮るかのように、零の携帯が鳴りだす。


「...........ごめん!私先帰るわ。」


「なんかあったんかー?」


「ちょっとね、でも大丈夫だから。」


零の表情に一瞬陰りが見えたが、英樹は特に指摘することなく。


「そうか、.....じゃあなんかあったら言えよー!」


「ありがと、また明日。」


そそくさと帰っていく零を見送る英樹。


(あれって.........いや見間違えか。)


振り返ると、目をキラキラと輝かせた賢治が、メリーさんを抱き上げていた。


「ちょっ!下ろしなさいよ!」


「メリーさん!!最高の情報だ!!!これこそ俺が大好きな王道の都市伝説だ!!」


「拓哉、なんであいつこんなにはしゃいでんだ??」


「メリーさんから教えてもらった情報がな、どうやら”トイレの花子さん”の情報みたでな...。」


「.......お、おう。」


「まぁ、それが普通の反応だろうな。」


「おい英樹、拓哉、零.......あれ?零はどこいったんだ?」


「言ってたじゃねぇかよ!先帰るって。」


「まじか、メリーさんの話し聞きすぎて聞こえてなかったわ。.....じゃー、3人で行くか!」


「おい、懲りてねぇのかよ、口裂け女で俺は腹いっぺーだよパスだパス。」


「ちなみに俺も無理だぞ、医者からあと2週間は運動しちゃダメだっていわれてるからな。」


「んだよー、つれねぇな。じゃあちょっくら一人で行ってくるわ!」


 そう言った賢治は、早速どこかへ向かって消えていった。


「あれは危なっかしいな.....、そうだ、メリーさん、アイツのあとついて行ってあげてくれよ。」


「え!?なんで私が!!」


「唆したのは、お前だよな?ほら、行ってきな。」


「もうっ!なんでこうなんのよ!」


_____________________________



..........零、今帰ってこれる?、雫がね、.........学校から帰ってきてないの......................


「お願い、何も起こってないで、無事でいて.....。」


 零は3人から聞いた話を、妹の失踪に当てはめていた。


怪異は人のトラウマに付け込んでくることを零達は思い知ることになる。



続く


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