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プロローグ編

前身になる小説があるのですが、それをリメイクして書き上げたのがこの作品です。

......それだけです。

ある高校の昼下がり、賑やかな廊下を尻目に人目につかない別館の踊り場に4人の馬鹿共がたむろしていた。


他愛もない会話の中、一人が突拍子もなく話を切り出す。


「なぁ、お前ら、ターボババアって知ってるか?」


そう言い始めたのは、本郷賢治、いつも話の腰を折るバカである。


「......あ?んだよ、いきなり。」


案の定話の腰を折られ、不機嫌そうに返答をするのは、マイペースでドライな男、斎藤拓哉だった。


「しょーもなそうな話だなぁ....。それってさぁ、オチあんの?、オチ。」


白々しい態度で賢治に茶々を入れるのは、基本的にツッコミ役の紅一点、伊吹零である。


「いいじゃねぇかよ!面白そうじゃん、賢治詳しく教えろよ!」


唯一、賢治の話に食いついたのは、能天気男の佐久間英樹だった。


「お!、やっぱし、お前なら食いつくと思ったぜ!英樹!」


「やっぱ興味あんだろ!ババアってよ!」


「ん?、お、おう!」


『食いつくとこ、間違い過ぎだろ………。』


賢治は英樹がターボババアに興味を持った点に若干の疑問が残ったが心の隅に置いておくことにした。


「いいか、よく聞けよ....、ターボババアってよぉ......。」


3人が賢治の言葉に固唾を飲み、緊張感が走る。


「くそみてぇに、足が早ぇえんだよ!!まじで!!」


一瞬その場の空気が凍り付いたのだ、そして、この地獄の空気にした当の本人は呼吸困難になるほどのストレスに襲われていた。


「.は?.......終わり?賢治?」


口を開いた零は賢治に問いかけた。

しかし、賢治は動かない。


「.....おい、ちょっと、こいつ息してる?!」


ポンポンと賢治の頬を叩くが、反応はない。

徐々に焦ってきた3人は大きく肩を揺らしてみたり、思いっきりぶん殴ってみたり、睾丸を蹴り上げたりをしてみたが、賢治からは一切の反応が返ってこない。


「おいやばい!!!、賢治死んでるって!!!」

「いや待て!おいマテ、ちょまて、待てよ!!!」

「落ち着け!お前ら!、おいお乳付け!.....、ん?何言ってんだ?」

「ちょ、とりあえず救急車呼べって!」

「おう!...(やっべぇ......スマホ教室に忘れたぁ....)...よし、英樹頼んだ。」

「なんでだよ!、ったくしゃーねぇーな!!........(っんほぉ....スマホそもそも持ってきてねぇんだ.....).....零頼む。」

「スマホ壊れてんのよ。」


3人は一旦一呼吸を置き、息を整え、賢治を持ち上げた。

棺桶を運ぶが如く肩で賢治の体を支える両サイドの零と拓哉。

そして賢治の股間により前方が一切確認することができないが、両足を支える英樹。


その3人のコンビネーションは、最も美しい姿勢ザ・モスト・ビューティフル・ポジションを生み出し、3人で人一人(ひとひとり)を運ぶ際の最高速度を叩き出していた。


しかし、前方が確認できない英樹は段差に弱く、保健室へと向かう手前の1段のだけの段差に引っかかてしまった。


賢治の股から英樹の頭がすっぽ抜けた影響で、前二人に急激な重さがのしかかり、重心が後ろへと移り、零と拓哉もすっころんでしまった。


その反動から、賢治がロケットの如く保健室に向かって射出された。

しかし賢治は保健室の扉を突き破り、奇跡的にベットへと着地したのだ。


今から少し前、保健室へと向かう最中、賢治はぼんやりと薄暗い場所にいる夢を見ていた。

自分の体には実体が無く、声は出せない、そして、ふわふわと浮いて、頭がはっきりしない状態だった。

そんな中、霧がかった暗闇からいくつかの情景が浮かんでくる。


1つは踏切。


2つ目は、雑木林、その内一つの木には赤いひもが括り付けられている。


3つ目は、見知らぬダム。


そして最後に浮かんできたのは、見覚えのない、祠?のようなものだった。

最後の情景だけが妙にはっきりしており、実体のない腕を振り、足を動かした。


すると、周りの暗闇が祠の情景に変っていき、実体が感じられるようになったのだ。

相変わらず声は出せないままであったが、それには特段気にはしなかった。


それより、賢治は祠の中にあるお札に妙に興味を惹かれたのだ。

意識せずとも、祠へと向かって足を歩みだす。

祠の周りは木で囲まれていた。推測するに、きっと2つ目に浮かんできた情景の雑木林の奥にこの祠があるのだろう。


そして、賢治はおもむろに祠のお札へと手を伸ばす。

その瞬間に、ふわっとした脱力感に全身が襲われる。

お札へと伸ばした手は、脱力した拍子に、お札をはぎ取っていた。


「........おい、目覚ましたぞ!」


賢治は英樹の安堵した声で目を覚ました。


「...おぉ、おはよう....。」


「おはようじゃねぇよ!、二日も意識なかったんだぞ!心配する身にもなってくれよ!」

英樹はきつい言葉を使いつつも、安堵した表情で、賢治の生還を喜んでいた。


「.....ん?ここ、病院か?」


「おぉ!!起きたのか!、あたりまえじゃん!、あんた息してなかったんだから!」

病室へと駆け付けた零が賢治の背中を叩く。


「.....ちょ、俺、話がつまらなくてシケさして、え?、…………その空気に耐えられずに、入院してたのか!?」


賢治は現在の状況がうまく読めずにいたが、自分ならありえない事ではない、そう考え、ゆっくりと深呼吸をして落ち着いた。


「ってか、お前ずっと手握りしめてたけど、なんかあんのか?医者に診てもらってる時も、その右手だけはずっと握りっぱなしだったしよ...。」

と英樹が賢治に話しかける。


「ん?ほんとだ、別になんにもないけどなぁ...、お?」


賢治の右手には、くしゃくしゃに丸まったお札が握られていた。


「ん?賢治、なに持ってんだ?それ?」


「なんだこれ………...知らねぇぞ......いや、ちょっと待てよ……。」

その時、賢治は夢のことを思い出した。


「まさかな.....、嘘だろ。」

夢の中で見た祠、その祠に貼られていたお札。

剝ぎ取ったか、剥ぎ取っていないかの瀬戸際で目が覚めてしまったので心残りではあったのだ。


結局、俺はお札を剥ぎ取ってしまっていたのだろう。じゃあ、あの夢は現実だったのか?いやありえない。

実際に俺は2日間入院し、意識不明であったという

事実があるからだ。


そして、このお札が視界に入る度、賢治は背中に湧き上がり、溢れるどす黒い負の感情を感じ取っていた。


得体の知れない、奇妙で、不安な《何か》。


《今までで一度も知覚したことのない感覚》


「どうした?なんかやべぇもんなんか?お札っていうくれぇだし、呪いとかか!?」


薄ら笑いを浮かべながら、英樹が賢治をおちょくる。

そんな中、零の携帯に拓哉からの連絡が入った。


「!、拓哉!、聞いてよ!賢治が目ぇ覚ましたんだよ!」


『!そりゃよかったぜ....!』


「....ってかなんで電話してきたの?」


『ああ、そのことなんだが、ちょっと聞きたいことがあってよ、俺らの学校の近くに踏み切りなんてあったっけ?』


「はい?踏切?何言ってんの、学校の近くにゃ踏み切りなんてないわよ、坂の上にあんのに電車なんて通らないでしょ。」


『だよな、でもあるんだよ。』


「なにが。」


『いや、踏切。しかもずっとカンカン鳴ってて開かねぇ。』


零が通話している最中に飛び出した踏切という単語に、賢治は引っかかった。

夢の中で見た情景の1つに踏切があったのに気づいたのだ。

なにか夢ののかで見た情景がリンクしているようでならない賢治は立ち上がり、


「今から拓哉とこ行くぞ、なんか、嫌な予感がする。」


「おいおい、まだ意識戻ったばっかだぞ!無茶すんなって!」


「この札がやべぇ気がするんだって!」


「その札と拓哉、何の関係があんだよ!?」


「賢治、英樹、なに言い合ってんのよ!、...うん....うん、わかった、………賢治、ちょっと行ってくるわ。」


「俺も行く。」


おぼつかない足取りで賢治は着替えを取る。


「あんたねぇ……今は寝てなさいよ……危ないって。」


「そうだ、お前は病室で待ってろよ、悪化するかもだろ?」


英樹の気遣いを尻目に、賢治は準備を止めない。


「ったく、仕方ねぇやつだな。」


英樹は足元がおぼつかない賢治に肩を貸してやった。


___________同時刻.踏切前


まったく、奇妙な出来事もあるものだ。

賢治のお見舞いに行こうとしていた途中、見覚えのない踏切に道を阻まれ、仕方がないので、引き返すと、そこはまたまた見覚えのないダムだったのだ。


これは道を迷ったというレベルの話ではないだろう。

携帯の電波も繫がらないといった状況の中、幸い、踏切を見つけた時点で、零へ電話していたのが救いだろう。


大体の位置も伝えていたため、少し待ったら迎えに来てくれるだろう。


そう考えていた拓哉は、ダムを少し進んだところで座り込んでいた。

その時、背中に寒気が走る。

それと同時に、ダムの奥にある雑木林から物凄い足音が近づいてくる。


それに驚いた拓哉は、自ずと踏切の方面へと走り出していた。

ダムの奥には《何か》がいる。

そして足音が近づいてくる。だんだんと。着実に接近してくる。


ビビった拓哉は逃げるように踏切まで引き返したが、踏切は依然、カンカンと音を鳴らして、開く気配はない。


だんだんと精神的に追い詰められていき、動悸が激しくなり、息も荒くなっていく。

拓哉は近づく足音の正体を確認するべく、恐る恐る、振り向いた。


何もいない。


否、《いた》ということだけは確信できた。


そして拓哉は、木々の間を走り抜ける老婆を見る。


「まさか、......ターボババア...?」


数日前に賢治から聞いた話のターボババアを思い出した。

まさかとは思ったが、確かに老婆は早かった、目で追う事は出来ないほどに。


拓哉は賢治がターボババアに遭遇した際の対処法を言っていなかったかを確認するため、先日の会話を思い出す。


『くそみてぇに、足が早ぇえんだよ!!まじで!!』


だめだ、まったく使えない。


あれこれ考えるうちに、いきなり足元を掬われ、拓哉は豪快に転んだ。


「っんだ!くそったれ!!!」


急いで起き上がろうとしたが、既に拓哉の背後に回られていた。

ターボババアは拓哉の首を締め上げ、ケタケタ笑った。


「あひゃひゃひゃひゃ!殺しは何百年ぶりだろうねぇ!!!」


拓哉の首を締め上げるターボババアの手には一切の容赦はなかった。

顔が青白く、血の気が引き、諦めかけていた、その時だった。


踏切の向こう側からカウボーイさながらの投擲で縄が飛んできたのだ。

その縄はターボババアの首にスポッとはまり、一気に締め上げられた。

今度は逆にターボババアの顔が青白く、血の気が引いてい行く。


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ、あ゛ぁ!?、どうなってんだ!?」

拓哉は現在の状況をうまく掴めずにいた。


「おう拓哉!、ターボババアホントにいただろ!?」

縄をターボババアへ括り付けたのは、賢治だった。


「賢治!?、動いていいのか!?」


「いや知らねぇ!、けど来ちまった、今そっち行くわ!」

賢治は持っていた縄を踏切へとくくり付けた。


「え、....おい!」


賢治はハードルを飛び越えるが如くスルスルと踏切を超えた。


「おいおい!賢治!そっち行っちまったのかよ!....……ってかまじでババアいるじゃねぇか。」

後ろから遅れてやってきた零と英樹は賢治が踏切に括り付けた縄を手に取り、更に締め上げた。

締め上げられた縄がターボババアの首を更に絞める。


「.....嘘じゃねぇってこの目で見ちまったからには信じるしかねぇな....、ところで賢治、なんでこっち側きたんだ?」


「それはな、これを貼り直しに行くんだ。」


「なんだ....お札かそれ?」


「おう、この踏切の奥に祠があると思ってよ。」


「祠ぁ?……この奥はダムだったぞ?」


「ダムか....大丈夫、その奥にある気がする。」


「………本当にぃ?」


「おい!拓哉、賢治!、行くなら早くしてくれ!、こいつまだ動きやがる!抑えきれねぇかもしんねぇ!」


英樹から忠告を聞き、2人はダムへと向かって走り出した。



________10分後.ダム最奥地


拓哉と賢治は、ダムの出口付近まで来ていた。

賢治は周りを確認しながら、注意深く歩を進める。


踏切を超えてからは言葉では形容しがたい《何か》に見られている感覚が強くなっていたのだ。

そのたびに、初めて札を握ったときの感覚が思い出される。

きっとあの祠がトリガーである、元に戻すには、この札を再度祠に貼らなければならないと直感が教えている。


そして2人は、雑木林に1本の赤い縄が括り付けられた木を見つけたのだ。


「夢で見た景色まったく一緒だ.....、じゃあここを進めば...。」


「お前が見たっていう祠があるっていうんだな?、じゃあとっとといこうぜ。」


「話の呑み込みが早くて助かっちまうな!」


________同時刻.踏切


「......おいおいおい!!!、だめだこりゃあ!」

「ちょ!零、力抜くなって!!!」

「うるさい!英樹お前もでしょうが!楽しようとしてんじゃないよ!」

「まじアカン!アカンのア!!」

「遺憾のイ!」

 

ズルッ


「あ」

「あ」


零と英樹の手から縄がずり落ち、ターボババアはダムへと向かい走っていった。


「ふぅ........よし、ここは一旦、落ち着こっか。」


「そうだな、やっぱ人間落着きって大事だもんな!」



________数分後.祠前


「おい賢治、あれじゃないか?お前が言ってる祠って。」


「....あれだ、まんまあれだよ。」


二人は背後からターボババアが接近していることも知らず、祠前へと到着していた。


「ここでちゃっちゃとお札貼って、終わらしてくらぁ!」


賢治は祠に向かって走り出した。

その時だった。

異変に気付いたのは拓哉だった、先ほど感じた寒気がする、そして若干の足音も聞こえる。

その足音は確実に近づいてきている。


そして頭をよぎったのはターボババアの首に巻き付いた縄。

それを山勘で掴んで、止めるしかない。

自分が想像しているよりも時間は無いと感じた拓哉の体は自然と動いていた。


そして拓哉の腕に急激に引っ張られる力がかかる。

自然と動いた手は、縄を奇跡的に掴んでいたのだ。

その奇跡を逃すまいと、拓哉は思いっきり腕に力入れ、縄を締め上げる。


とてつもない力で縄を引き千切ろうとするターボババア。

それをさせまいとする拓哉の飛び膝蹴り。


それが悪手。

飛び膝蹴りの際に、丁度ターボババアの肘に拓哉の膝がクリーンヒットし、悶絶。

斎藤拓哉屈辱のTKO負け。

そしてターボババア、人生最高速のダッシュ。


賢治が祠に札を貼り付けた途端、ターボババアが拓哉へお手本を見せつけるが如くの魂の飛び膝蹴りを祠へと食らわせた。


その飛び膝蹴りによって祠は粉々に砕け散った。


ターボババアは祠を守りに来たのではないかと推測していた賢治にとって、まったくの異例(イレギュラー)な行動。


そんな賢治を傍らに、ターボババアは悶絶していた。

飛び膝蹴りを祠に食らわせた際に、膝を強打したのが原因だった。そりゃあ、石の塊に思いっきり膝ぶつけたら、痛いに決まっている。


そんなターボババアに憐みの顔を見せながら、賢治は思いっきりババアの顔面にサッカーボールキックをぶち込んだ。


気を失ったターボババアを担いで、ダムへと向かう最中、膝蹴りを失敗して悶絶している拓哉を見つけ、賢治は失笑した。


「………おい笑うなよお゛!」


「慣れないこと、すんなよな!(笑)」


_______10分後.ダム


賢治と拓哉は、ターボババアをダムの縁の突っかかりの部分に縄を引っかけ、吊るしあげた。


「おーい、ばーさん、起きろー!」


「......っ、!!おいこらぁ!餓鬼ども!!!早く上げろ!!!」


「おー、ちょちょちょ、暴れたら勝手に落っこちちゃいますよー。」


「落としてみろ!!!、あたしをおとしたらねぇ!《他の奴ら》が黙ってないよ!!と言ってももう手遅れだがねぇ!既に門は開かれたからねぇ!!!!......あ」


ドボン


「あ」


勝手にダムへと落ちていったターボババアに対して、何も言えない2人だった。


「ふぅ.....祠も壊れちゃったし、お札も破れちゃったし、....帰るか!」


「何にも解決してないけど、ターボババアと会えたし、まぁーいいだろ。」



_____同時刻.踏切


「おい、英樹。」


「言いたいことはわかってるよ。開いたな。踏切。」



この時の4人はまだ知らない。

踏切が開いてしまった意味。

そして、自分たちの身に起きる出来事に。


《扉》が開けてしまったことの業の深さを。



続く。








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