第4話 令嬢やて……!?
「……お前も色んな事考えてるんやな、ホンマ」
「いや、ただ最低限の事を考えてるだけですよ」
「そうかぁ? 1番しっかりしてんのはお前やと思うで?」
「買い被りすぎですよ」
謙虚なヤツ過ぎんねんなぁ。どうもコイツは寧ろ欲が無さ過ぎる気がしてきた。ちょっとぐらいイケイケでやったかてええ気がするんやけどなぁ。
俺はもう一度ソファーに腰掛けて、ゆったりとした姿勢をとる。
「それもそうと、なんかオモロイ噂とか無いんか? ここ最近はよ」
「オモロイ噂、ですかぁ」
そしたらバートリウスは、顎に手を当ててんーむと考え込み始めた。
「無かったらええんやで?」
「いや……なんかあったような気がするんですよ」
そんでからなんかもうエラい考え込んどる。
「いや、もうええて……」
「あ! ありましたありました!」
「あるんかよ」
これまたなんとも怪しげな感じやで……ホンマにあるんかいな。
そう思いながらも、俺は話を聞く事にした。
「“悪役令嬢”って、知ってます?」
「……知らんなぁ」
初めて聞くその言葉に、俺は頭を傾げた。悪役っちゅう事は、まぁ悪いヤツって事は分かるが、令嬢って付くとなんやかよう分からんのんやわ。
とにかく、話を聞き続ける。
「悪役令嬢ってのは、要は、悪いお姫様ですね」
「悪い姫様のぉ、んで、それがどないしてん?」
「実は、バルファス王国と隣の“ラウロス王国”が同盟を組むんだとかそんな話になったらしいんですよ」
「ほぉ?」
おっ、ちょっと面白そうな話になってきた。
俺もますます、話に興味が湧いてきた。
「他の国といがみ合ってた訳でも無いけど、今後の国としての在り方とかを色々と改めて、その為にまずラウロス王国と協力するって、お父さんが言ってたんですよ」
「平和への架け橋ってヤツか?」
「そういう事ですね!」
「でも待てや、悪役令嬢って言葉の本当の意味はなんやねん。どう悪いねんな?」
問題はソコや。その言葉の本当の意味が疑問なんや。
「悪役令嬢、どう悪いと言われたらそりゃ色んな種類がありますよ」
そう言いながら、バートリウスはウンウンと頷きながら話を続ける。
「オーソドックスなのはまぁ恋敵なタイプなヤツですかねぇ」
「恋敵? 色恋沙汰って訳か?」
なるほど、確かにそら面倒くさそうな話やわ。
耳クソをほじくりながら、俺は心の中でそう思った。
「その通りです。じゃ例えば、ある国の王子を求めてある優しい姫が恋をする……そしてもう1人別の国のある姫も王子が好きになる」
「ふむ」
「そのもう1人のある姫は、色んな手を使って優しい姫を脅かし、王子を我がモノにしようとする訳ですよ」
「なるほど、泥沼やな」
正直な感想や。そんな下手なトレンディドラマみたいな状況の何が面白いっちゅうんや。
国同士の同盟とかの話までは良かったが、どうやらこの令嬢の話で俺の興は削がれてもうたらしい。
つまらん話やなぁと感じたんや。けど、王子を狙っとるって事は、クランツの兄貴を狙っとる、って訳なんかな?
「じゃあ何か? その令嬢はまさかクランツの兄貴でも狙っとんのか?」
「と、俺も思ってたんですよ」
違う違うといったような感じで、バートリウスは首を何度か横に振る。
なんか腹立つな
「ちゃうんか?」
「ええ、まぁ、悪役令嬢ってのにのも種類は色々とありますし、もしかしたら国を盗ろうとしてる珍しいタイプの可能性もあるんですよね」
「……なんでそないに詳しいんや? そのラウロス王国との同盟の話といい、国の重要な事情とかなんやろ一応」
「いやぁ、どんな話してるのかなぁって好奇心でお父さんの会話とか盗み聞きしてたんですよ」
「……」
コイツだけはやっぱ相手にした無い。俺はそう思うしかなかった。いやマジで、コイツだけは色々とアカンわ。
「……んで、どんな会話してたんや」
改めて、俺は腕を組み直してからバートリウスに理由を聞く。
「どうもその、同盟を組むとかと言っときながらもクランツ兄さんに愚痴ってたんですよ」
「愚痴かぁ、まぁ王様ともなると色々とあるよなぁ」
俺もなんとなく分かる。
幹部衆が俺や俺みたいなヤツの扱いに手を焼いて頭抱えながら愚痴ってたりすんのも見た事あるしなぁ。
そう考えるとまた可哀想やなぁと少し哀れな感情を抱いてまう。
「親父も苦労してるんやなぁ」
「多方5割は鬼健さんが原因では?」
「ああなるほど確かに……ってんな訳あるかい!」
「ナイスツッコミダボッ!!?」
俺はすぐさま立ち上がってバートリウスの頭を思いっ切りブッ叩いたった。
全く、俺にノリツッコミさせよってからに。
「やめーやお前、体が勝手に動くやろうが」
「す、すいません……」
関西人の癖っちゅうんを理解されとんのがまた腹立つ。クソッタレめ、ますます油断出来ひんやっちゃで。
「まぁとにかくアレやな、かなりオモロい話ではあるってのは事実やな」
「え、まさか、絡みに行くとかそういう?」
「当たり前やがな、そんなアホみたいな令嬢、この目で見な損っちゅうもんやで?」
「ま、マジか」
バートリウスはもうなんだか呆れたような、そんな面をしながら俺を見とった。なんやコイツ、急に嫌な顔しよるやんけ腹立つなぁ。
俺はコイツの表情が気に食わんかったから、もう1発頭を手で叩いたった。
「痛っ! 酷いですよ!?」
「じゃかまし! それならそんな嫌な顔すんな!」
「うぅ……人使い荒いっすよ」
泣きそうな顔でそんな事言いよってからに、ホンマに変な奴やでコイツは。
とにかく、俺は一旦バートリウスの事は置いといて、さっきまでの話を心の中で簡単に纏めることにした。
(令嬢が来て、他の国と同盟を組むっちゅう話……なんやかこういう類の話は、基本ロクでもないような事ばかりが起きるよなぁ)
俺がヤクザやった時もそうやった。
ヤクザも同盟やなんや言うて、実は同盟を組もうとしてる組織を潰しに来てたり、実は同盟とは名ばかりで傘下に付けようとしたりとか、こういう話は基本ええ印象が無い。
今回のこの話も、案外そういう類の話なんやろうか?
「おいバートリウス、その令嬢っつうのが面白いってのは分かったんやが、ラウロス王国についての話は知っとるんか?」
「んー、王国そのものについて、ですか?」
また顎に手を当てて何故? と言いたげな表情でバートリウスは俺にそう聞いてくる。
「せや。同盟話っちゅうんわの、ヤクザの時からせやが、どうも胡散臭いのがよう絡んでくるからな、オヤジもそれに掴まされたんちゃうかと思うてな」
「心配してるんですか? もしかして」
「そういう訳やない、ただ、ちょっとそういう話には敏感なだけや。てかとっとと教えんかいな」
「ああ、はい。そうですねぇ」
少し考え込んでから、バートリウスは口を開き始めた。
「ラウロス王国そのもの評判もやっぱり悪いですよ。昔っからこの大陸でも1、2を争うくらいにはね」
「そこまでかいな?」
流石の嫌われように、ちょいと俺も驚いた。
そんなに嫌われるなんて、昔から何してきたんやろうか?
「コレについては、お父さんやお兄さん方とかに聞いた話なんですけどね?」
「ふむ」
「ラウロス王国って、かなりの独裁国なんでさしよ。話を聞く限りだと、税も酷いし市民の扱いもかなりの酷さなんだとか」
「ほーう」
なるほど、中々にゲスい話やな。そら令嬢もクソになる訳やわ。
納得してもうた俺は、1人でウンウンとうなづいてた。
「――きな臭いのぉ、やが、それがいいな」
楽しみがまた増えたな……
「なんやコレオモロいぞ!?」
「続き読ませんかい!!」
と思ったら、是非とも下の☆から応援よろしくお願い致します!
オモロい! なら星5つ、つまらん! なら星1つでも構いません! 正直な感想で全然大丈夫です!
ブックマークもいただけたら本当にモチベーションになるし嬉しいです!
今後も何卒よろしくお願い致します!