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第3話 語る男2人! 夢を目指す!

 


「……アカン、疲れた」



 ――どっと疲れてもうた。殴られたり蹴られたりした場所は痛くて痛くて堪らんし、今にも吐いてしまいそうなくらいに気持ち悪くてしゃあない。



 俺は思わずその場にへたりこんでもうた。


「誰か、呼んだれや、医者かなんかさぁ」


 酷い静寂の中で、俺は兄貴を助けたるように言うた。兄貴ももう意識を失ってもうて、その場に倒れ込んでもうとるんや。


 仏の子から、また別の鬼子が生まれたっちゅうことなんかなぁ。


(ったく、訳の分からん話やで……ホンマに)


 妙に気分は良かった。負けそうにもなった事は悔しかったが、俺としては強敵とも言える兄貴に勝てたという事だけで充分やったという事なんやろう。

 それにしても、ホンマに気分がええ。


「く、クランツ……」


 オヤジは兄貴の元にまで寄って行った。血が流れて青アザ塗れの兄貴を見て、オヤジの顔はとんでもなく青ざめとった。

 親の気分としては、大事な大事な長男が気を失っとるって事だけでも、辛くて堪らんのんやろうな。


(俺も、そんな親に恵まれてたら良かったんやがな)


 なんて、今はそんな事どうでもええか。


「……悪いなオヤジ、互いに認めた喧嘩やったんや。ボロボロにさせてもらったわ」


 俺はそう言いながら、ボロボロになってもうた体を無理矢理立ち上がらせる。

 アカンなぁ。立ち上がるだけでも、まるで体がギシギシ言うてるみたいで、まるで動きそうに無い。


「オヤジ、兄貴は凄かったぞ。流石に長男なだけあるわ、認めるよ」

「……ライル」

「作法とやらも少しは守ったるし、すぐに脅すんも止めたる。やっと楽しめたしな」


 扉の前にまで歩いて行って、俺は一旦そこで立ち止まる。


「けど、ガウラス! レヴィン!」


 俺は怒りを声に籠らせながら叫んだ。ちょいと俺に腹を立たせたコイツらには、少し脅しといとるか。


「な、何だよ!?」

「なんなの……?」


 2人は今のだけでもビビったんか、声を震わせとった。ホンマに、大した事の無いクソ共やな。もう既に腹が立ってきた。

 けどそれを押し殺して、俺はゆっくりと振り向き、2人を見る。


「……お前ら2人は、よー覚えとけよ?」



「「――ッ!?!?」」



 2人に指差して、俺は笑いながら2人にそう言った。

 そしたら顔までビビって引き攣らせよって、声も出えへんくなっとるんや。アホみたいでオモロいでぇコレは。


「ヘッ」


 俺は一瞥してから、扉を開けて廊下に出た。

 そっからは自分の部屋に戻ろうとして、1歩を踏み出したんやが。


「……クソ、気持ち悪いのぅ、ホンマに」


 歩くだけで吐きそうになってまう。コラアカンな今日は……


 ゆっくりと1歩を踏んで行きながら、俺は部屋にへと戻って行った。




 ***********************




 ――あれから2日、俺はなるべく静かにしていつもの日常を楽しんでた。



 朝飯昼飯晩飯も、基本的に多少はマナーを守りながら食うたし、オヤジに絡む事も無く俺はただただ静かに暮らしてた。

 相変らずガウラスとレイヴンは俺の事を目の敵にしとるが、気にせず、いやそれどころか逆に睨み返してビビらせとる。


 あのクソ共はまぁ置いておくとして、それ以外の時間は部屋に籠りっきりや。俺以外の兄妹にはどうやら、格闘術や勉学、それに政治、そんでもって凄い事を教えとると聞いた。



 ――“魔法”や。



 なんでも兄妹達にはある一定の技術の魔法とかも教えとるらしく、格闘術と共に護身として教え込んどるんやと。

 なんやアレやな、要は俺だけが今ん所はみごにされとるって訳や。


 ……って、今ソファーに座りながら聞いとる。


「……なんやか嫌やな、改めて聞くと」

「仕方無いですよ、お父さんは一度嫌うととことん嫌いますから」


 一族特有の金髪に黄金色の瞳、そんでもって俺よりちょいと背丈の高い10歳のこの男、コイツは兄妹の四男坊であり、唯一喋る事の出来る兄妹で、俺のただ1人の理解者や。名前は“バートリウス・バルファス”。



 ――そんでもって、俺と同じ、“転生者”ってヤツらしい。



「ケッ! それならまた脅したろかなぁ?」

「ダメですよ鬼健さん……それこそまたギスギスしちゃうしさぁ」

「知らん、またボコすだけや」

「う、まぁ確かに鬼健さんなら出来そうだけど」


 コイツは話を聞く限りでは、俺が生まれる1年前くらいに転生したんやと。

 しかも、“2020年”……俺が死んでから、30年も後から死んで転生してきとるとんでもないヤツなんや。


 まぁ、それも凄いがもっととんでもない事が出来るヤツでもあるんやがな……


「へっ、喧嘩なら誰にも負けんわ」

「そうですね……そう言えば最初の出会いも鬼健さんにド突かれてから始まったんでしたっけ」

「せやったな。頭小突いたな?」

「小突いたレベルじゃ無いですよアレ?」


 なんて、冷や汗を掻きながらバートリウスは答えた。


「弱い事言うなやぁ、正直その気になれば俺を倒す事が出来るやろ? お前」

「“アレ”があっても倒せないですよ鬼健さんは、いや本当に」

「アレなら俺を倒せるやろう、反則じみとるやんけアレ」


 そう、コイツ、転生してからとんでもない才能を手に入れとる。

 俺もまぁとんでもない馬鹿力を持ったまま生まれ変わってきた訳やが、コイツのソレはもう凄いんや。


「って事でよぉ、久々に見せてぇや、“火の玉”」

「えぇ?」

「もう深夜なんやしええやんけよ」

「時間帯の問題じゃあ……」

「見せんかい」


 ちょいと圧を掛けるくらいのレベルで、俺はバートリウスに見せろと“頼んだ”。

 ええな? 俺は頼んだって言うたんやで?


「し、仕方無いなぁ……」


 と言って、バートリウスは右の掌を上の方に向ける。

 そして、目を瞑りながら瞑想みたいなんをしだす。

 俺はその光景をただ静かに見る。久々に見るから、ちょっと緊張してた。


 すると、バートリウスの掌に段々と光のようなモンが集まってくる。それはまるで昔見た線香花火の光みたいなヤツで、かなり綺麗な光や。


「おぉ……」


 それだけでちょいと感嘆の声を漏らしてまうが、これからが凄いんでんがな。


 光はますます集約していき、そんでバチバチと音を立てながら大きくなり、そして……



「――ッ!!!」



 バートリウスが目をカッ! と見開かせた瞬間、バチバチとしていた光は、巨大な炎の玉と化して、アイツの掌に留まっていた。


 ……うん、間違い無く2年前見せてもらった時より確実に火が大きなっとる。ってか炎になっとるもんコレ、ヤバない?


「……フゥ」


 そんでから、バートリウスが炎の玉に息を吹きかけると、綺麗さっぱり完全に消え去ってしもうた。

 これ凄いでホンマに、どないなっとんねん。


「前よりデカなっていないか?」

「なってますねえ、多分」

「他人事みたいに言うてるけどヤバないかアレ? 軽く太陽やぞ」

「多分、日に日に進化してるんですよ俺も」

「いやし過ぎな?」


 流石にこいつの進化速度っちゅうのはヤバいんやわコレが。

 俺が喧嘩で感を取り戻していくまでにどんだけ進化してしまうんやろうか。そんな事を考えてまうと、流石の俺でもヤバいと思うし、やめて欲しいだなんて弱音すら吐きそうになる。


「かぁ、このままやと最強位は俺からお前にすぐ変わってしまいそうやなぁ」

「そんな事無いですって、そもそも最強なんて興味無いし……」

「バカ! 男が最強目指さんとしてどないすんねんな!?」

「そう言われてもなぁ……」


 バートリウスは頭を掻き毟りながら嫌な表情をした。いや、正直こういうタイプこそ大胆不敵に最強ってヤツを目指すべきやと俺は思うとるんやけどなあ。

 何がこうさせてしまうんか。


「男は強ないといけんぞ? 弱くてもええ時はあるっちゃあるが、基本はやっぱ強さ求めるもんやで?」

「ハハハ、まぁ、そうですけど」

「分かってるなら目指さんかいなぁ、そっちの方がカッコも付くやろ?」

「んー、それを求める訳じゃあ無いですよ」

(謙虚やなあ、コイツ)


 かなりの謙虚さに俺は驚いてしもうた。

 普通ここまでの力があるなら、俺やったら調子に乗ってそれこそ暴れ回るんやろうけどな。

 けどコイツはそれをせえへんのや。仮にも普通に生きてきたヤツがやで? とんでもない力を持ちながらそれを誇示しようとせえへん。


 なんやろうか、これも認めた無いけど、また別の意味で男らしいヤツなんやなぁと理解出来る。


 少し、惜しいモンがあるけどな。


(スカウトに失敗した親分衆の気持ちが分かる気がするで……)


 まぁでも、コレもまた、1つの男らしい男ってヤツなんやろうなぁと俺は理解した。


「鬼健さんからすれば、いや、やっぱ極道からすれば力はある方がいいってのもあるんでしょうね」

「まぁな、ヤクザは金と力だけが全てやった。80年代までは力だけでもどうにかなったが、90年代やと力なんてなんの価値も無くなった」

「なるほどなぁ、確かに俺の時代の極道って、なんかもう、本当にただの犯罪集団してたしね」

「それは元々や、けど、ヤクザってのは男らしくて力のある人間やないとアカン」


 俺は、右の拳を握り締める。


「例えな? どんだけ悪意に手染めようが、どんだけクズになろうが、男は力だけは強ないとアカン。せやないと食われてまう、世の中の荒波の中で生き抜くんは、知恵よりも生き抜く為に鍛えた力なんや」

「……」

「虐められてようが、虐めてようが関係無い。問題は、如何に耐え抜くだけの力を付けるかって事や」

「力を付けるか、か」

「おう、お前が前の世界でどうやって生きてきたかは知らん、けど、俺が思うに、や」



「――俺らは負けたんやわ、前の世界で、力が無かったら運命に負けたんや」



 これはあくまで持論や、それが正しいんか分からんし、実際の所どうなんやろうかとは思う。

 けど、この世界に生まれ変わってから突然幸運になるだなんて、変やとは思わんか?


 やから、この世界に来たって事は、前の世界で負けたも同義やないんやろうか?


「俺が思うにな、あの世界で負けて、この世界はチャンスなんや」


 そして俺は、思いっ切りソファーから立ち上がった。


「筋とかやない! 男として、もう1回最強を目指さなあかんのんやか! 負けたらアカン、勝たなアカン、負けたらまた神様かなんかに同情でもされて違う世界に連れてかれる、そんなもんゴメンや! 俺は勝って死にたい、勝って生きていたいんや!」

「……凄いっすね、鬼健さんは」


 寂しげな声を出しながら、バートリウスは俺の事を見る。


「俺はある意味、あなたのような憧れていた。強くて、立ち向かおうとする人に憧れてたけど、虐められてたし、そんな人にはなれなかった」

「ほう」

「けど、今なら分かる。俺には俺の目指す所があるし、鬼健さんには鬼健さんの目指す所がある」

「……」

「だから俺は、最強にはならない。けど、目指すべき所には必ず届いてやる! って、今の話で改めて思いましたよ」

「……そうか」


 なんでか知らんが、清々しい気分になった。


 多分、コイツもまた、目指す所に向かおうとする、本当の意味での一人前の男なんやと理解したからやろう。


 なんとなく、俺もコイツを応援したる! って気分になるし……何より



(――負けてられん!)



 そう感じて、尚更俺は最強の道を目指さなアカンと思うたんや。

「なんやコレオモロいぞ!?」


「続き読ませんかい!!」


と思ったら、是非とも下の☆から応援よろしくお願い致します!


オモロい! なら星5つ、つまらん! なら星1つでも構いません! 正直な感想で全然大丈夫です!


ブックマークもいただけたら本当にモチベーションになるし嬉しいです!


今後も何卒よろしくお願い致します!

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