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第1話 クソつまらん王家生活! そんでもって喧嘩や!

 


 ――あれから、もう8年経った。



 俺はどうやらホンマに生まれ変わってもうたらしい。


 ……しかも、王家の5男坊ときたわ。


 これまた凄い大家族なんやで……? 俺の姉が2人おって兄貴が4人もおるっちゅうとんでもない家族関係なんや。


 “バルファス王家”って言うてな、この国が出来てから500年間も血筋が続いとる由緒正しき王の一族らしいわ。

 その上国の名前も“バルファス王国”って名前になっとる辺り、ホンマに偉大でバカみたいな家族って事は分かるんやけどなぁ。


 まぁなんにせよ、凄い事塗れの世界なんやなこれが。

 ホンマに凄いんやで? この世界での“おらんくなってもうた”オカンといい、兄妹たちといい、そんでそれを取り巻く状況ってのがもう言葉に出来んくらいのモンなんやわ。


 まぁ何が凄いかってのは今は置いとくわ、それはまた後でにしてやな……



 ――とりあえずは第2の人生の1つ目の節目、まずはつまらん所から始まる訳やねん。




 ***********************




「……つまらんわボケェェェェェェェ!!」

「こ、コラ! フォークとナイフを乱雑に使うな!」

「じゃかあしいわぁ! 7年間くらいも同じ事言うなやみみっちいんじゃボケェ! 人の食い方に一々とやかく言うなや! 肉はガッツクもんやろうが!?」


 貴族の作法やとか、なんやとかつまらん!


 今家族皆で晩飯を食うとるんやが、作法には気を付けろだのなんやのほざきよるんやわこのヒゲオヤジがよ!


 そんでもってや、この世界での俺の名前はどうやら、“ライル・バルファス”とか言う変な名前になってもうた。暴走族でもまだマシな名前しとるわ、いやホンマに。


 まぁとにかく、けったいな話でんがな。


 大体なにかと広すぎんねん! 8年間でまぁ慣れたけど城ん中で食うとなんか色んな距離感を無くすねんいやマジで、冗談やないねん。なんでしかもどこ行ってもメイドやのなんやのだのがおるんや? プライバシーってもんは無いんかコラ?


「お、お前というヤツは……! 王家としての誇りは……」

「無いんやボケ! 大体なんやそれぇ? そんな強要されなアカンのかいオォ?」


 トサカに来た俺は勢い良く立ち上がり、ヒゲオヤジ……“グランファ・バルファス”の横側に立ち塞がった。


「き、貴様! また前のように殴るつもりか!?」

「おうおうヒゲの王様にしちゃあ弱気な態度やのぉ!? そんなに2年前の顔面ゲンコツは効いとるか? お?」

「ヒッ!?」


 俺は右拳をチラつかせてこのクソグランファの顔にツンツンと当ててやった。

 と言うんも、俺は赤ん坊の頃から前世のヤクザしてた時の記憶とか感情もそのまんま写っとる訳で、もうこんなんすぐにイラつく訳やわ。


 ほんで抑えきれんくなって2年前このヒゲ面に思いっきしゲンコツをかましたったんや。するとどうなったと思う?



 ―― 吹き飛んだんや。ヒゲが。



 ヒゲだけが飛んだ訳やないで? 体ごと飛んでいってもうたんや。普通そんなんありえるか? 無いやろ? 人間が、しかも喧嘩慣れしてるとはいえ6歳児の男のパンチで40代半ばの男が吹っ飛んでしもうたんや。


 なんやエライ事になったんやが、その時の事を上手く使ってこう分からしたる訳や。


「どや? 前みたいに吹き飛ばされたいか? どないや」

「い、いや、その、わ、分かった! く、食い方はお前に任せる!!」

「よっしゃその一言や! 分かっとるやんけオヤジィ! でも前もそれ言うて今日やからな? 次は分かってんなぁ?」

「わ、分かった! 分かったから!!」


 そう言って俺は、オヤジの肩を組むようにして腕を乗せた。ほんならまたオモロい顔しよる。青ざめとんねんな顔が。


「よっしゃ、ほんならもうそんな顔すんなやオヤジ、もっと景気良ぉいかんかぁ」

「……そ、そ、そうだな」

「おうお前らもやぞ! 辛気臭い雰囲気にならずに飯食え飯!」


 と言って、俺はその場で無言で食うとる愛しき兄妹たちに声を掛けた。

 全く、コイツらもコイツらで酷いモンなんやで?

 ま、“四男坊のアイツ”はええとして……


「ラウル……! お父様に対してよくもそんな事を……!」


 エラソーな雰囲気をプンプンさせながら立ち上がったのは、赤色の趣味悪い王族特有のジャケットを着た金髪の男。

 ソイツはこのバルファス家の長男様っちゅうヤツで、名前は“クランツ・バルファス”とか言うこれまたキザな男なんやで。


「お前そのノリ何年しとるよ? もうかれこれ5年くらいはしてないか? お前芸人かなんかなんか?」

「訳の分からない事を言うな!! もう見ても立ってもいられなくなっただけだ!」


 これまた演劇調な仕草でカッコつけとるんやわ、いやぁ哀れ哀れやでホンマに。


「あのなぁ兄貴よ、お前そんな食い方にとやかく言われたらいらんやろうが? お前自分の食い方がバカみたいとかアホ臭いとか言われたらどなすんの? 認めんのか?」

「お父様は、お前に対して王族らしい食事の作法について言っているのだ! 食い方の云々では無く、王族として生まれたからには……」

「いやそんな事言われても人には人の食い方あるやんけお前。しかも論点すり替えんなや、お前はそれでええんかと聞いてんねんなコッチはよ」


 王家のアレだの作法だの、俺が思っとったよりも金持ちの家ってのは自由やない。

 まるでヤクザに成り立ての頃、部屋住みの時代みたいでこらホンマにかなわんわ。


 しっかしこの兄貴はさっきから腹立つ事ばかり言いよるなぁ。論点ズラしてみたりカッコつけてみたりなんやコイツはホンマに、これが王家かいな。


「うるさい! お前には王家としての誇りや気高さが無いんだ! バルファス家に生まれたのであれば、誰よりも優雅さを極めねばならない! そうでしょう、お父様!」

「ん、んーむ……」


 オヤジ困っとんぞ。


「とにかく、私としてはライルは見過ごせないんだ! お父様も弱気になってはいけません!」

「うるさいなぁお前……」


 尋常やないぞコイツ、ここまでくるとミナミの演劇団のソレレベルやぞ。16歳にしてこの香ばしさは最早才能かなんかやろ。


 俺はとりあえず飯は残したらアカンなぁと思ったので席の所にまで戻って、立ったまま皿を左手で持って、右手にはフォークを持つ。

 そんでそのまんまフォークをステーキに突き刺して思いっ切り平らげた。


「うん……美味い、いい、たまらん! ごっつぁんや!」

「い、いい加減にしろぉ! どこまで侮辱する気なんだァ!」


 クランツの兄貴は食卓を思いっきり掌で叩き、顔に青筋をビキビキと立てながら俺に詰め寄って来た。

 その表情はマジの怒りに塗れとる。自尊心を傷付けられた、ナルシスト特有のクソみたいなクッサイ怒りをプンプンとさせとる。


 けど、や。


 ……ええやんけ、この睨み合い。


「おう兄貴、いざとなりゃあそれなりに気合い見してくれるやんけ。少し見直したで?」

「調子に乗るなよ愚弟が……!」

「なら調子に乗らさんくらいにピリッとしときゃあ良かったんや」


 ムードは一触即発。兄貴かて手出しかねんくらいに目はマジになっとるし、俺かてそんなんにヤラれるくらいの甘い雰囲気は出しとらん。


 どっちが先に手出すか、こうなると最早我慢の問題や。俺が別に先に手出してええし、このアホナルシストに先手出させるってのも充分にアリや。

 久々にただの一方的な暴力やない、互いにブチ切れた喧嘩になるかもしれんのんや。これはどうするか迷ってまうで。


「ライル、お前には分からせてやる。バルファス家のルールを、そして長兄の怒りをな!」

「ヘッ! 口だけやないやろなぁ?」

「試してみるか?」


 身長差はかなりある。今の俺は大体150後半、対する兄貴は170ちょいくらい、体重に関しては筋トレばっかししてる俺に多少くらい分があるが、そこは16と8歳の差がある。身体的には正直ヤバいやろう。


 やけど、それがどないした?


「……ライル! これは我らが王家を侮辱した怒りであり、そして、俺の怒りだァァ!!」


 振り上げられた拳、兄貴の挙動、よく見りゃあ分かる、ズブの素人って訳では無い。

 どうやら、俺以外の兄妹には色んな事を教えとるって言うのはホンマらしいな。


 俺はすぐさま前向きのまま後ろに飛んで、兄貴と距離を取る事でパンチを躱した。


「チッ!!」

「何をするのだクランツ!?」


 ついに、始まっちまった!


 俺と兄貴の喧嘩、オヤジは驚いて何するんだと吠えだし、ビビって無言だった他の兄妹たちまでもがハッとして俺たちの喧嘩を見とる。

 久々の感覚やでぇ、血が煮えたぎってくるようや、今にも沸騰しかねん!


 俺だけが振るう暴力やなく、互いに優劣付ける為の“戦い”を久々に味わえるんや!


 俺は構えずにただ兄貴の挙動を見続けた。感覚を取り戻す為、そんでこの兄貴の戦い方ってモンを見極める為にや。


(ケッ! まだまだアレやが実力は確かって訳か。パッと見の動きはボクシングのそれやがどこか違うな。この世界特有の戦闘術って感じかァ?)


 兄貴はボクシングのような構えをしとるが、何かが違うって事に俺は気付く。

 コンパクトな構えが特徴的なボクシングなんやが、兄貴の構えは従来のソレと違って腕を広めにして構えとる。


 それに足の動きも、フットワークを取ってへんけどいつでも動けるように片足のつま先を上げとる。アレや、前の世界では流行り出してたキックボクシングみたいなもんか。


(となると、蹴りも使ってくるんか)


 いや、こんなに分析したってしゃない。もうここまで分かったんなら……


(突っ込むだけや!)


 俺は兄貴目掛けて一直線に全力で仕掛けて出た。

 右拳は既に握り締めとる、後はコレを兄貴の対応出来ひんスピードで顔面に当てるだけや!


「ッ!?」

「ヨッシャア!」


 ガードが遅れとる!


「飛んでまえボケェ!!」



 ドンッ! と、拳が何かにぶち当たった音――



「ッ!?」


 いや、ちゃう! それは腕やった。兄貴のガードは遅れてなんかおらんかった。

 それどころか腕のスピードを上げて、無理矢理ガードの形を作り上げとったんや! とんでもない事を軽くやってのけよった……!


(不味い!)

「喰らえッ!」


 ガラ空きになってもうた俺の腹に目掛けて、兄貴の前蹴りが炸裂してしまう。


「ウッ!?」


 前蹴りを喰らった俺は少しだけ吹っ飛び、地に蹲ってもうた。

 久々に感じる痛み、胃の底からやって来る果てしの無い気持ち悪さ、それどれもが、あまりにも辛過ぎるんや……


「グッ、クゥゥ」

「どうした、さっきまでの減らず口はどこへ消えた? ライルよ」


 見下されとる。けど初めてって訳では無い。これまでにも何度かある、屈辱的でどうしようもない現実。

 腹立つのう、腹立つのう、喧嘩は面白いと同時にここまで腹が立つもんなんやなぁ。



 ――体の中で、何かが暴れ出しそうになる。迸る、爆風の如く。



 耐えきれんばかりの俺の怒りは、気持ち悪さに蝕まれていた体を、無理矢理立ち上がらせる。

 久々に来るレバーへの蹴りは、俺を目覚めさせてくれとる。久々に、喧嘩の味を思い出させてくれる。ホンマに、最高やで。


「……兄貴よ、確かに俺はお前の事を舐めとったらしいわ、そこは謝ったるよ」


 そんな事は無い。俺は今でも舐めとる。けど、それを口にしたらもう止められん、自分を抑える事なんて出来ひん。

 これまで相手を一撃かそんくらいで倒してきたハズやのに、小さなったなんて言い訳や、クソッタレ。

 怒りとも喜びともとれん感情は、次第に大きなっていく。


「ほう」

「けどよぉ、ちょいと俺の事を本気にさせたな……」


 髪の毛を全部後ろにやる。かつての頃の気合いの入れ方、俺が少し本気になった際、いつもこうやって根性を引き出す。


 そんでもってから、俺は自分のジャケットとシャツを力の限り破っていく。汗と怒りに火照った体に服はいらん。

 見せつけるべき、それをもってして相手に俺の真の力を見せる為の証明。


『……ッ!?』


 兄貴も、他の兄妹たちも、オヤジも、皆が声を出せへんくなる。

 そらそうや、これが俺の印であり、前世から背負ってる男の“代紋”……



 ――“赤き鬼と、それを彩る桜吹雪”。



 浪速の鬼健っちゅうこの俺が、前世から引き摺り続ける魂じゃ!


「認めたるわクソ兄貴、俺がこれを出して戦わなアカンと思わせるんは流石や言うたるわ。けどな」



「――こっからはボコボコにしたるから、覚悟しとけよ?」


「なんやコレオモロいぞ!?」


「続き読ませんかい!!」


と思ったら、是非とも下の☆から応援よろしくお願い致します!


オモロい! なら星5つ、つまらん! なら星1つでも構いません! 正直な感想で全然大丈夫です!


ブックマークもいただけたら本当にモチベーションになるし嬉しいです!


今後も何卒よろしくお願い致します!

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