表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/13

六話 戦うべきものと救うべきもの

 もうすぐ、へらへらとした表情を浮かべあの男がやってくる。

 「鉄拳に散る薔薇」の攻略対象の一人、ジューダス・ニードル。

 気の弱い教師のふりをした冷徹な暗殺者。


 しかしその本質は攻略対象とは名ばかりの主人公の強化アイテムに過ぎない。

 間もなく生徒会室を訪れるこの男の処遇を我は独り考えていた。


 先程こちらを庇おうとして翼にダメージを負ったルシファーは家に戻らせた。

 ジューダスは主人公の敵対勢力として存在し、どう足掻いても死の運命しか待ち受けない。

 その立場に共感を覚えないといえば嘘になる。


 だがゴリアテッサとジューダスには決定的に違う所がある。

 それはただひとつ、強さ。それだけだ。


 悪役令嬢であるゴリアテッサは強者を求めるが故に正ヒロインであるアンジェリーナと戦い討ち死にする。

 しかしジューダスはその弱さゆえに妹を人質に取られ彼女と戦うのだ。


 アンジェリーナの暗殺失敗イベントが発生したということは、彼のヒロインに対する好感度がかなり高まっているということだ。

 そしてこのまま放置すれば近い内にジューダスはアンジェリーナに正体を晒し襲い掛かるだろう。


 返り討ちにされ、愛しい女の手で殺される為に。

 そして彼は自らがアンジェリーナを愛していたことに死の間際やっと気づくのだ。


「なんとも、無粋なことよ……」


 愛ゆえに弱くなり、情ゆえに殺せずに死ぬ。

 そんなものは戦いへの冒涜である。

 拳にのせるべきは闘志ただそれのみだ。己が死しても相手を殺す。


 その覚悟も持たないジューダスにアンジェリーナと対峙する資格などない。

 ジューダスに対しても腹が立つが、戦う意思のない者に戦いを強いることが一番許せない。


 そしてその死闘を埃すら振りかからない場所でにやにやと眺めている下衆どもの存在が何よりも気に食わない。

 ならば、高みを気取る下衆どもを引きずり叩き落してやるのみ。

 我は息をすう、と吸った。


「直ちに表へ鉄戦車を回せィ!!」


 その轟声は校舎中に響き渡り何枚かの窓ガラスを破壊した。

 これで我が校門に着く頃には準備は全て出来ている。


「……ふん、サタン以外の猫が来たか」


 弱々しい気配を感じガラリと生徒会室の扉を開ける。

 そして廊下で耳を抑えてへたり込んでいたジューダスを見かけ猫の子のように摘み上げた。


「な、なにをするんですかゴリアテッサくん!!」


 偽りの教師が抗議の声を上げる。それを我は無言で見つめた。

 此奴は敵を見誤っている。

 戦うというのなら己が倒したい者と戦うべきなのだ。


「妹を救いたければついてこい、偽教師よ」


 一言だけを吐いてジューダスを地面へと叩きつける。

 それきり一度も振り返らなかったが確ジューダスは我の後を追ってきた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 教師の救済楽しみです [一言] 主人公が教師救うために奔走する所を見ました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ