転生の儀
シエル王国の王宮の一部屋にて、その少年は転生された。
白い大理石のような床には複雑な魔法陣のような者が描かれ、その周りには紫のフードを被った高位魔導師が3名囲んでいる。
そして、その中心には黒い髪に弱々しさを感じる細い体の少年が横たわっていた。
「転生は成功したようじゃな」
ロウシが嬉しそうに言う。
その声に反応するように少年が目を覚ました。
───ん?なんだこの違和感は……背中には冷たくて硬い感触を感じる。それに、明るすぎる……
なにより、声が聞こえた気がする。
眩しさに目をならそうと起き上がり目を擦った。ぼんやりとした視界が次第にハッキリとしてくる。そして、一気に目が覚めた。
「な、なんだ?これ?」
目の前には見知らぬ景色と人がいた。
これは、まだ夢の中なのだろうか?それにしてもリアルすぎる。思考もハッキリしているし床の冷たさも感じる。
「ここはどこですか?あなた方は誰なんですか?」
周りの者に見つめられている現状に緊張しながら聞く。
「ここは、シエル王国の王宮ですな。私はロウシと申しますな。
こちらのお二方はガルド王とシエル王でありますな」
ロウシと名乗った老人と2名の男女がいる。しかし、見慣れない見た目をしている。
女性は緑の髪に耳が尖っているように見えるし、男性は赤髪でガタイが良くて厳つい。
「それで、召喚されし者よ名はなんですかな?」
「僕は……春樹。本田春樹といいます。」
少年は春樹と名乗った。
「ハルキか。それでは、ハルキ王ということになるな」
そうロウシは嬉しそうにニコニコしながら言ってくる。
「え?王?なんのことですか?」
思いもよらぬ単語に驚きながら聞き返す。
「ハルキと言ったな?お前は、これから王になるのだ。」
それまで黙っていた赤髪の男が口を開いた。
「お前を召喚したのは戦争によって荒廃した地の王をしてもらうためだ。」
鋭い目でハルキを見据えながらガルド王は離した。
「そんな、王なんて訳がわかりません。まだ状況も理解できてないのに……」
ガルド王の言葉によってハルキの困惑はさらに深まる。
「たしかに、それもしょうがないわね。ここで話すのも何ですから違う部屋で話すとしましょうか。」
透き通るような声でシエル王が提案した。
その提案にガルド王とロウシは賛成をし、ハルキに手招きをしてシエル王の後へと続いて行った。
僕は困惑しながら立ち上がり、3人の後を追ってその部屋を後にした。