前世の記憶
「なにをしてるんだろう。僕は。」
そう呟き僕はベッドに横になりながら目をつぶった。
僕は現実世界が嫌いだ。だから毎日部屋の中にいる。この部屋だけが僕の世界でアニメやゲームをすることで現実から逃げられる。
現実逃避の何が悪い。
現実を見ろ、お前なら出来る。そんなことを言われても僕は何も思わない。
何度も聞いている。
それに、分かってるんだそんなこと。自分が変わらないといけないことは分かってる。
夢から覚めた時に特にそう思う。僕に世界を見せつけてくる。
SNSもだめだ。僕と同じ年の友達に現実を見せられる。だから、友達も要らない。
そんな風に考えていた。
──その日、目を覚ますまでは。
僕が閉じこもってから1年がたった。たった1年だが、それは僕の心を蝕むには十分な時間だった。
気づいた時には空っぽになっていた。
そして、そのころ願っていたのは小さな頃に戻りたい。新しい人生を歩みたい。そんな願望だった。
そうすれば僕だってやり直せる。小さな頃はあんなに友達と仲良く話せていたのに。楽しんでいたのに。
こころは満たされていたのに──
僕は悔しさと後悔に押しつぶされて涙をながしながら布団の中に小さく縮こまった。
「もう一度やり直したい……。
チャンスが欲しい……」
そう呟いて僕は深い眠りについた。
これが、現世での僕の最後だった。