9章-1 地獄の大地
少女が町に着くころには日が昇り始めていた。歩いている人も居ないし、走っている車も少なかった。少女はその茶髪を揺らしながら欠伸をする。
「眠い。」
今回の出張は急ぎのようで眠ることすら許可されていない。酷い職場だと思った、本当に。幸いこの世界には「こんびに」という24時間営業の便利な店があるそうな。そこで眠気覚ましの珈琲を買おう。流石にそのくらいなら許されるだろう。
少し歩くと青い看板が立った直方体の形をした建物が見えていた。道に沿っている面はガラス張りで、中で灯りが付いているのも確認できた。こんな時間でも営業しているということだろうし、これが例の「こんびに」かな?少女が扉に近づくと勝手に扉が開いた。少女は少し驚きながらも何食わぬ顔で店内に入る。飲み物コーナーにある缶コーヒーを手に取り、カウンターに持って行く。店員は何か不思議な機械を缶コーヒーに付いていた奇妙な模様に当てると「ピ」という電子音が鳴った。
「120円です。」
成程、この機械は会計を楽にするものであるらしい。少女はポケットから小銭を取り出すとカウンターの上に載せる。
「レシートはご利用ですか?」
機械から何やら紙が出て来た。れしぃと?領収書か何かか?少女はその「れしぃと」とやらを受け取りポケットに突っ込む。
「あ、すみませーん、この辺に酒場とかありませんかぁ?」
少女は思い出したように男性の店員に聞いた。やはり情報収集の基本は酒場であろう。
「そこの通りをもう少し真っすぐ行ったところにありますよ。ガラの悪い人が多いので気を付けて下さい。」
店員は指で方向を示してくれた。
「分かりましたぁ、ありがとうございますぅ。」
少女は店員に笑顔でお辞儀をすると外に出た。店員はその姿を暫く見ていた。ボブヘアーの似合う可愛らしい美少女であったのだから仕方ない。少女は外に出ると溜息を吐く。
「面倒だな、一々こんな話し方するのは。」
怪しまれないように上に仕込まれた話し方である。何だか少し違う気もするが、その上官は是非とこの喋り方を推してきた。
「酒場に行くか。」
少女は缶コーヒーを開けて飲みながら歩き出す。口の中に甘ったるい感じが広がる。最近微糖でも甘く感じて来た。次はブラックにしよう、少女はそう思った。




