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勇者19歳  作者: 河野流
8章 名ばかりの英雄
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8章-14 名ばかりの英雄

「はい、じゃあ私がどちらか死にそうになったら止めるからね。」

銀髪の少女が俺と神父様の間に立つ。要は審判員である。『戦場に審判なんて居ないけど、あんたのためと思いなさい。』少女はそう言っていた。赤ニートには惨敗したが、俺も負ける気がしなかった。迫力はあっても神父様はまんまるでいい人丸出しな表情であったからだ。神父様には悪いが、さっさと倒して赤ニートにリベンジといきたいところだ。俺は短剣を、神父様は背丈ほどの大剣を構え少女の開始の合図を待つ。

「はい、それじゃ始め。」

少女の合図の直後、俺は神父様との距離を一気に詰めようとしたが、神父様の目が光り、何かが俺の頬を掠って後ろの木をなぎ倒した。俺は無残に倒れた木を呆然と見ていた。

「どうしたの?もう喧嘩は始まってるじゃない。」

少女はその様子を見て首を傾げている。明らかに直撃したらヤバそうな物が飛んで来た気がしたが、この少女は「喧嘩」と言った。

「今掠ったんだけど…。」

「大丈夫、大丈夫、死にっこないから。」

少女は笑いながら言った。異世界人の基準で言われても困る。あれは一般人にとっては明らかに即死レベルの破壊力の光線であった。

「ほら、余所見ばかりしてると危ないわよ。」

俺は神父様の方を振り返った。神父様は口を大きく開けて何やらエネルギーか何かを溜めている様だった。そして俺の方向に向かって熱線を放つ。俺は何とか回避したが、掠った地面や木は燃え上がっていた。俺は簡単に神父様に勝てると思っていた。しかし、それは訂正しなくてはいけないようだ。

「目や口からビームを放つとか、反則だろ!?」

「これが信仰の力ですよ。」

崇めるだけでそんな力をくれる神様が居るのなら俺も拝み倒したいが刻印の力であろう。エネルギーを溜めている時に神父様の額に十字架みたいな模様が光っていた。こんなのやってられるかと思ったが、神父様曰く、赤ニートはこれ以上の力を持っているらしい。神父様に勝てなければ赤ニートにも勝てないということだろう。

(これは一気に距離を詰めなきゃヤバいな。)

俺は背中の刻印に力を注ぎ、神父様の後ろに回り込んだ。これは貰ったと思った。神父様はニッと笑った。俺が後ろに回り込むところまで読まれていたらしい、神父様は手に持った大剣をフルスイングした。咄嗟に短剣で受け止めたが、衝撃波で右肩から左脇腹まで斬られてしまった。幸い浅いようで出血するくらいで済んだが、俺はそのまま木に叩きつけられる。内臓の何処かをやってしまったのか俺は吐血してしまう。

「何を休んでいるのですか。」

神父様はすかさず目からビームを放つ。それは俺の右肩を貫いた。

「はい、そこまでね。」

そろそろヤバいと思ったのか少女が割って入る。神父様は「ふう」と汗を拭った。

「立てますか?」

神父様はこちらに手を差し出す。さっきまで敵対していたというのに俺に手を差し出したのだ。

「ちょっと無理…。」

また体に負荷をかけ過ぎたのか全身から血が滲んできた。

「そうですか、それなら暫くここで休んで行くと良い。刻印の力でその程度ならすぐに良くなるでしょう。あとーー。」

神父様は真顔になった。

「何を思い悩んでいるのか分かりませんが、もっと自分の命を大事になさい。無謀と勇気は違うのですから。」

神父様は「いい勝負でした」と教会の方に戻って行った。本当にあの神父様は聖人のような人だな、そう思っていたら少女はニマニマしながらこっちを見ていた。

「獅子に続いて弟にも惨敗なんてね。プッ。」

腹が立ったが、体が動かないし、動けたとしても神父様の目の前でこの少女に何かするというのは不可能だろう。

「まあ仕方ないわよ。あんたが剣を振り始めて何日か分からないけど、あの子達は生まれてからずっと剣を振り続けているんだもの。当然だけど技量、経験の差はどうやっても埋まらないの。でも、そんな条件でもあの子の喧嘩を買った度胸は認めてあげる。」

少女は機嫌良さそうに鼻歌混じりに神父様の後を追っていく。性格はあれだが、その声は澄んでいて、聞き惚れてしまっていた。そんな歌声を聞いていたからか何だか眠くなって来た。視界が少しずつ暗くなっていく。俺はそのまま木の下で寝てしまった。


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