8章-11 名ばかりの英雄
ようやくローズの家に着いた。まだ昼だからかローズの母の姿は無い。要するにローズと、女の子と二人きりということである。そんな感じに緊張している俺に対し、ローズは全く気に留めていない様子だった。
(本当に男として認識されていないようだな…。)
だからと言って何かする勇気は俺には無い。俺はローズを近くの椅子の上に降ろした。
「ありがとうございました、勇者様。」
「いや、いつもローズには世話になっているからな。このくらい。」
そんな時ローズが俺を赤ニートから庇ってくれた光景が蘇る。怖かっただろうに俺を救うために割って入ってくれたローズ。ブレーメンが乱入して来なかったら死んでいたかもしれないというのに…。
「俺はローズ達を守るために力を手に入れたというのに、本当に何してるんだろうな。」
今日の教会の騒動の時も俺は結局ローズを助けることができていなかった。神父様が居なかったら今頃――。俺が暗い顔をしたからかローズは焦った様子を見せる。
「そうです、赤ニートさんがライオンマスクさんだったなんてびっくりしましたね!」
ローズが頑張って新しい話題を出す。俺はあの尋常ではない殺気を思い出した。睨みつけられただけで死を覚悟してしまうような殺気であった。あれが「英雄」と呼ばれている者のオーラというものということであろう。そしてローズが割って入った時に彼女にも殺気を向けたのである。ああ、やっぱり俺あいつのこと許せそうにないわ。
「すまないローズ、用事を思い出した。」
俺は急ぎ足でローズの家から出た。あいつが今どこに居るか分からないが、一発ぶん殴って、ローズに謝罪させないと俺の気が済まない。
「何処に居やがる、赤ニート!」
赤ニートはいつも通り洞窟の中からチグリス達労働組合が籠っている城を見ていた。そこにはいつも通りキングオークのアトラスが赤ニートの槍を凌いだあの鎧を着て立っていた。そしてそこから出て来るミノタウロス共もその鎧を着用している。
「決戦が近いということかねえ。」
だが赤ニートも諦める訳にはいかない。色んなヤツの支援を受けて、やっと彼の願望が現実味を帯びて来たからだ。
「そうだ、全てはローズのために…。」
赤ニートは右腕の赤黒い布を握りしめた。




