8章-5 名ばかりの英雄
「おい、ブレーメン、昼のあれわざとだろ?」
赤ニートがブレーメンの方を睨みながら言う。昼のあれというのは、わざと大声で赤ニートをライオンマスクと呼んだことだ。
「さあ、何のことか分からねえな。」
ブレーメンは大袈裟にとぼけたような仕草をして見せる。色々隠れて活動するのに正体を隠していた方が便利だとスネークに言われていたのだが、こいつのせいで秘密もへったくれも無い状況になってしまった。
「おい、ライオンマスク、また闘技大会に参加してくれよ!」
「ライオンマスク、いい武器が入ったぜ!見て行ってくれよ!」
「ライオンマスクよ!サイン頂戴!」
おかげでこうやって歩いているだけで色々な人々に声を掛けられるようになったのである。噂が広がるのは非常に早いものだ。ちょっと前まで「ニート」と罵っていたのに都合のいい連中だよ、本当に。
「でも悪い気はしてないんじゃねーの?生前はこんなに歓迎されたこともなかっただろうからな。」
ブレーメンは周りの人間に声を掛けられ、返事に困っている赤ニートを見て笑う。
「あとあいつらも俺らの仲間だからな、例の件の。」
「は?今なんて言った?」
赤ニートは不機嫌そうにブレーメンに聞き返す。ブレーメンは呑気に煙草に火を点けている。
「だからあいつらと懸賞首を捕まえるんだよ。あの坊主は騙されやすい世界の出身と聞いていたからな、噂通りだ。」
「あんな連中が役に立つとは思わないがな。」
赤ニートはあまり賛成していないようだった。
「おまえは妙にあの坊主を嫌っているな。それかあのお嬢ちゃんのことを気にしてるのかな?」
「おまえには関係ないだろう。」
「まあ、どっちにしろ改めておまえを紹介しなきゃいけないな。おまえにも為さなきゃならんことがあるんだろう?」
ブレーメンの問いに赤ニートは無言で答える。ブレーメンは歯を出して笑った。
「それじゃ、この地獄に革命を起こそうじゃないの。」




