8章-1 名ばかりの英雄
「今のところ順調じゃなあ。」
仮面を付けた老人は煙草を吸いながら上機嫌である。机の上に紙を広げ、子供の落書きのように何かを描き始めた。
「ブレーメン、居るんだろう?」
「何だ、えらく機嫌が良さそうだから声を掛けなかったんだが。いらんお節介だったか。」
柱の裏から無性髭を生やした麦わら帽子の男が現れた。古いジーンズのジャケットを着て、その長い髪は後ろで束ねられている。
「赤ニートには例の装備は渡したし、薬も用意した。労働組合が敗走するのも時間の問題かのう。」
老人は鼻歌混じりに紙に術式を書き込んでいく。
「俺には魔法のことがさっぱりだが、本当にうまく行くんだろうな?」
麦わら帽の男も煙草を咥え、ライターで火を点ける。
「勿論このまま行けば面白いことになるじゃろうな。」
「面白い、ねえ。俺にとっても面白いことならいいけどな。」
麦わら帽の男は老人に疑いの目を送る。老人はそれを見て笑う。
「ここまで来て、もしや辞めるとは言うまいな?だが勘違いするな、おまえの代わりはいくらでも居るんじゃぞ。」
「はいはい、そこは分かってるっての。」
「ちゃんと殺さず連れて来るんじゃぞ。」
部屋から去ろうとしている麦わら帽の男に仮面の老人は確認を取る。麦わら帽の男は面倒だったのか、手をひらひらさせて反応した。
「さて、地獄に革命が起きるぞ。どんな結末が待っているのか…。」
老人は一人でケラケラと笑っていた。




